数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
「今日はこれまでの長きにわたり私が間違っていたことを懺悔したいと思います」
「おーい、お前ここどこだと思ってんだー? 教会じゃないぞー?」
「ちなみにレッスルについてではなくアカイイトについてです」
「・・・だったらアカイイトで戯言にすればいいだろう・・・」
「当初そのつもりで書きだしたのですが、アカイイトでやるとキャラにとっては『自分たちのこと』になるため、話が逸れにそれまくっていったので全部消して・・・」
「あ、うん・・・まぁわかったわ。 勝手にしてくれ・・・」
「これまでにそれなりにアカイイトの小話を書いてきたわけなのですが、決定的に解釈が間違っているキャラがわかりまして」
「え・・・社長、それはその・・・いまさら・・・ですか?」
「そう、今更なんです。 昨日久しぶりにアカイイトやっていたら『あーっ!?』ってなったんです」
「このご時世にPS2ばかりやってる社長もどうかと思うけどね・・・」
「まぁまぁ、真鍋さん。 そこはそれと申しましょうか・・・。 それで社長、続きをどうぞ」
「具体的に言うと、奈良陽子というキャラの解釈が完全に間違ってました。 そう、完全にです」
「・・・顔すら出ないキャラの解釈が間違ってたらどうだってのよ」
「そう、その解釈がすでに間違い。 彼女は基本的にエンディングに現れる存在であり、羽藤桂という存在を現す依り代でもあるのだよ」
「日本語でよろしくー」
「まぁ日本語ですが、とてもわかりにくいと思われるのでもう少し具体的にお願いできませんか、社長?」
「羽藤桂が普通の女子校生だと表現するために必要不可欠の存在であり、桂の日常の象徴でもあるわけだ」
「え、それがわかってなかったわけ? マジで? いまさら?」
「いや、確かにそうは思ってた。 ただそこで終わってた」
「社長、いちいち思わせぶりな表現するのはやめてくんね? 話が冗長すぎるんだけど」
「すいません・・・そういう能力しか持ち合わせてないんです・・・。 えーと、なんていうのかな、桂の日常を現す存在、と思っていたのだけど、実は同時に『普通の女子校生』の象徴でもあったと。 現実の女子校生という意味では必ずしもないだろうけど、一般的な解釈における女子校生を描いた、かな?」
「長いわりにさっぱりわかんねー・・・」
「社長はもう少し話をまとめる能力が必要ですよね・・・」
「あんたら本当腹立つ人たちだね・・・」
「いいからさっさと話進めろよ、さっぱり意味わかんねーよ」
「具体的に言うと、奈良陽子は羽藤桂に愛情は持ってない。 親愛であり、親友という解釈こそなりたてど、恋愛感情は一切持ち合わせていない、ですね。 そして何より重要なのは、異性愛について積極性を持っているということです」
「なんかふつーのことだね。 そしてやっぱり今更って感じがするね?」
「そう、ふつーなんだよ。 今更については・・・まぁ私の読解が足りてなかったね。 本当どうして今までこれに気づいてなかったのか・・・」
「確かにうちの小話では、奈良陽子は愛情を持っているように見えますが、それはそれほど問題なことなのでしょうか?」
「問題だよ! ここのアカイイト小話全ての根幹を揺るがすほど大きな事実だったよっ!!」
「えー? そう?」
「この奈良陽子の解釈が変わったことで、他のキャラの解釈も盛大に変わったんだよっ!! 特に物凄い影響を受けたのがサクヤさん!!」
「はあ」
「各キャラのエンディングの時点で、烏月さんと葛ちゃんは「親友以上」になった。 サクヤさんは「同性愛」になったのだよ。 ユメイさんは・・・正直ここはまだ自信がないのだけど「家族」になった、だと思われる。 わかるかな、えーとつまり、サクヤさんルートだと桂も同性愛者になった、ということだ」
「・・・なんで?」
「元々異性愛者という意識であった羽藤桂がサクヤと生涯を寄り添うことを決めたからだよっ!!!」
「烏月と葛は違うんですか? 社長」
「烏月さんと葛ちゃんだよっ! 彼女らはまだ十分な関係性を築いていないので、今後どうなるかはわからない、というだけ。 ただすでに親友というラインより上に至っているのは確か。 ただ逆にユメイさんについては、今後においても同性愛のような関係性に至る可能性はとても低いんじゃないかなーって思ってる・・・」
「それはどうしてでしょうか?」
「ユメイさん自身はどうかはわからないけれど、桂の解釈が完全に『姉』もしくは『従姉』に確定するから。 よくこの界隈では姉萌えだの妹萌えだのがあるのだけど、実際に姉、もしくは妹持ってる人は9割ありえないってのが一般的。 いないから恋愛対象にしてるだけかと」
「んでもさー。 ユメイってゲーム中でも物凄く桂に執着してね?」
「ユメイさんだよっ! だからとっても仲のいい家族なんだよ! それはふつーにいるよっ!! それにユメイさん側においてはわからないと思ってる。 あくまで桂の側では恋愛にはならないと思うと言ってるんだよ!」
「えーと、つまりはそれらが奈良陽子の解釈でそうなると?」
「陽子ちゃんだよっ! そういうことです」
「どうでもいいけどいちいちさんだのちゃんだの入れるのやめてくんない?」
「どうでもよくないからやめないっ!」
「うざ・・・」
「書きながら思ったけど、烏月さんも正直同性愛の関係にはならなそうかなーって思ってる・・・」
「え、そう?」
「こちらに関しては、ユメイさんの逆というか・・・烏月さんが同性愛を認めることは無いんじゃないかって気もするんだよねー・・・。 桂のことはかけがえのない大事な存在と認めてるとは思うんだけど、同性愛を烏月さんが受け入れられるかと言うと微妙だなーって思うのです」
「赤い維斗をなんだと思ってるんだ、お前は」
「だからかけがえのない大事な存在とは思っているんだよ。 ただ一般常識という意味で烏月さんの頭がそれを乗り越えられるかは微妙じゃないかなって。 また彼女自身、基本は異性愛者だと思うのですよ」
「なんでよ」
「兄を慕っていたから。 ブラコンとか大げさな話ではなく、慕う異性がいたなら異性愛が一般的なんだからそこに向かうのが自然でしょう。 ただ烏月さんに恋心を感じさせるような異性がそうそういるものかという難題があるわけだけど・・・」
「その先言うとここがアカイイトファンの何割かの敵になるよ」
「そうだねぇ。 私はアリだと思ってるけどねー。 まぁここらは掘り下げすぎかな。 とりあえず烏月さんとの愛は難しそうだなーって」
「そういうものでしょうか・・・?」
「まーいろいろ人により解釈は違うだろうけど、私は陽子ちゃんの解釈が変わったことで他のキャラも解釈が変わり、今後アカイイトで書く場合に大きく影響したねってことですよ」
「書くねぇ・・・いつの話やら・・・」
「うっさいな、お前! いやでも久しぶりにやったらちょーおもしろいね、アカイイトって。 なんかもー産毛が逆立つような?」
「アカイイトが元で創作始めたやつが今更何を言ってるんだ・・・」
「烏月さんルートで泡沫聴いた時とか震えが走ったよ、マジで」
「風邪薬飲んで寝られたらいかがですか?」
「病気じゃないよっ! 感動のあまりだよっ!!」
「まぁ懺悔はとりあえずわかったからさ」
「なんか微妙な反応だな」
「手遅れてるんだからとっとと書けよな、お前。 てーか何アカイイトやってんの?」
「か、書くけどそれはそれだろっ、いーじゃんかよっ!」
「そうですね・・・まぁ別に誰が期待してるってわけでもないですし・・・」
「そういうこと言うのもやめてよーっ!!」
(終)
12月 新日本女子プロレス開催のEXタッグリーグが始まった
いざカードを見て正直顔を歪めたものだ。 新女はWCWWの潰しに来ている、と理解した。 初日のカードは新女期待の有望株ジューシーペアだったからである
マイティ・ボンバーに揉まれているだけあってタッグの完成度も高い。 メロディたちがどこまで踏ん張れるか・・・
そしていざ初日。 開始から早々にヘビー級のパワーとタッグのキレに押されていく。 マッキーは得意の力押し、押されながら返していくと素早くラッキーに切り替わり、多彩な攻撃で翻弄されていく。 対してメロディ・ノエルは即席コンビだ。 力はもちろん持ってはいるが、拙い連携でじり貧になっていく。 しかしさすがはメロディは頭脳派レスラーであった。 その圧倒的不利な状況の中、勝つ方法を最大限考えていた。 ターゲットをマッキーに絞り関節を中心に攻撃を組み立てロープ際で攻防を続ける。 ラッキーは技は多彩ではあるが得意は関節。 彼女の多彩さで攻めたてられても最後の締めは関節技にこだわってくるだろう、そこをロープブレイクしやすいようにとの位置取りである
そうなって来ると怖いのはマッキーのパワーだ。 力任せの粗さこそあるものの、要所での投げ技は実に怖い。 しかしこれを受けながらも最後の一手をかわしすかさず関節で絞めていく。 あわやというシーンは何度もあったが、結果としてはメロディがタップを奪い勝利した
二日目。 菊池・近藤組。 タッグとしては初日のジューシーペアよりは完成度は低い。 また菊池はジュニアであり、階級差も少なくは済む。 しかし現時点においては菊池はジュニア最強の呼び声すらある存在。 ハードルは高かった
試合開始早々にそれが顕著となる。 メロディ・ノエルはジュニアのスピードを活かして戦いたいが、菊池のスピードが二人を上回る。 食い下がろうとすると近藤がヘビーのパワーで繰り出すパンチやキックで確実に二人を消耗させていく。 しかしメロディはしたたかだった。 ペースとしては菊池組が奪っているものの、持っていかせない。 要所で菊池に関節をしかけ段々と飛ばせなくし、自分を囮にノエルの体力を温存させていた
ジューシーペア戦のように関節で、と思わせておいて最後はノエルにタッチし、体力を温存させておいたノエルが一気に全力で押していく。 最後はノエルが菊池からノーザンライトスープレックスでフォールを奪った
三日目。 遂に来たマイティ・ボンバー組との対戦。 メロディたちに任せた時に口には出せなかったが、正直勝ち目の無い戦いだ。 急造タッグ、それもジュニアの二人で崩せるほど甘い牙城ではない。 しかしそれにしても新女もやってくれる、リーグ初日からこちらにここまでぶつけてくるとは実際思わなかった
メロディ・ノエルの二人も結末のわかっていた対戦ではある。 それでも、それでも彼女らは突破口を必死に模索した。 初戦のジューシーペアとの戦いをベースに付け込める隙を必死に探してるのは、見ててよくわかった。 しかしマイティ・ボンバーはやはり現時点において格上である、そして新女のエースでもある。 そんな隙を見せるわけがなかった
ともすればアピールもあったのだろうか、試合が始まるなり大技で一気にペースを奪うとそのまま押してきた。 ロープ・場外と逃げ、やれることを必死に探すメロディたちであったが、ペースは完全に奪われ付け入る隙をもらえない。 食い下がるように繰り出す技はボンバーが受け止め、華麗なタッチワークから合体技、そしてマイティのムーンサルトプレスで勝敗は決した
鮮やかな、そして艶やかなマイティ組の勝利。 リングの上のメロディたち、そして録画で見た私と選手たちは奥歯を噛むしかなかった。 ・・・くやしい。 結果は予想通りであったとは言え、やはりくやしかった
だが、それと同じくらいマイティたちの強さも感嘆した。 選手たちにもその思いは少なからずあったようだった
「・・・つえーな、あいつら」
ぼそっとケルベロスが言う
「私は行かなくてよかったようです。 私ではメロディさんたちほどがんばれなかった、団体の恥になっていたでしょう・・・」
楠木も見たものに圧倒されたかのように言う
「んー、まぁ強いねぇ。 んでも私ならまた戦い方は違ったな。 勝てたかはわからんけどさ。 さとみんはどう思う?」
真鍋が憎まれ口を叩きながら小縞に振る
「うーん・・・きびしいね・・・。 ただそれよりも・・・」
「うん? それよりも?」
「メロディさんが本当凄い・・・。 新女の二人は強いけど、それを出させてるってメロディさんたち凄いですよ! 二人ともジュニアなのに!」
そう小縞が目をきらきらさせて語気も強く言う
「・・・確かに。 正に言った通りだ。 みっともないものは見せないって言ってたからな。 もっともそのせいでマイティを引き立たせてもしまっていたけどな、はは」
「う・・・でも凄いです!」
「ああ。 みんなも勉強できたことだろう。 何よりうちの興行でもこういう試合を見せていってくれると嬉しい」
私がそう言うと、現2冠王者であるアドミラルがすかさず返してきた
「そうじゃないと、うちがあっちに負けたみたいだろ。 やって、やるよ・・・」
メロディたちの敗北は残念ではあったが、WCWWとしては新しいエネルギーを得た。 越えるべき目標がはっきりし、クリアすべき課題が見えた瞬間だったかもしれない
四日目。 新女との激闘三連戦を越えた翌日は激闘龍のトップ二人であった。 フレイアと越後のタッグだ。 今のうちとの力の距離感を測るのにも興味深い対戦であった
お互い急造タッグでの対戦ではあったが、やはりフレイアたちの方がシングル意識が強いようで連携が悪い。 序盤からメロディたちがペースを掴む。 構図としては2対1になっているため、メロディたちは危なげがなかった
もちろんフレイアたちもそれぞれで盛り返そうとはしてくるが、うまくいなしつつ最後はノエルのアルゼンチンバックブリーカーに越後がギブアップでメロディたちの勝利であった
五日目。 フリーの草薙と永沢のタッグ。 不思議なタッグチームだと思ったが、EXのための急造タッグであったと後に聞いた
前日同様の急造タッグでやはり個人の意識が強いため、前日のカードを見ているような試合だった。 いや、むしろフリー同士なためにフレイアたちより連携は悪かった。 危なげもなくメロディがメロディスタンプで決めた
六日目、新女最後の刺客・・・と言いたいところだが、力の差は歴然と言った感じの村上姉妹との対戦。 新女のリングにおいてもこの姉妹はひっかきまわす立ち位置にある選手で、リング上よりリング外の方が目立つレスラーである。 また双方ジュニアでここまでにあった階級差のハンデもない。 マイティ組と正反対にこちらが負ける要素がなかった
だからこそ、であろうか。 メロディたちは大技を多く使い、魅せる試合に徹していた。 そして村上姉妹に何をさせるでもなく、最後はノエルがノエルズツリーでギブアップに仕留めた
最終日。 WARSの要、龍子と石川のタッグ。 三日目以来の山場である。 またWARS無差別王者のタイトルをうちが保有してることもあり、結果は重要な試合であった。 しかし・・・それは龍子たちにもそのまま当てはまっていた。 そのためか特に龍子は気負いしすぎていて、ゴングが鳴るよりもはやく飛び出してきた
しかし試合において気負いのしすぎというのはまるでよくない。 落ち着いてたメロディは余裕でいなし、早々にペースを掴んでいく。 圧倒的優勢に試合を進めていく中で、タッグチームとしても名をはせただけに石川が諌めたのか龍子が冷静さを取り戻していく。 本来は直情気味である龍子ではあるが、団体トップ選手であることもあり立ち直ってくるとやはり怖い。 段々と奪ったペースを奪い返され始める。 そうなってくると階級の差が響いてくる。 龍子も石川もパワーファイターなこともあって、一気に押し切るかと思われたところからどんどん僅差に追い込まれ始めた
カウント2.5、カウント2.9のコールが響く激戦に会場は盛り上がるが、見てるこっちは心休まらない。 両者ともにもはやスタミナの限界が見えた頃、ノエルのジャイアントスイングで石川がマットに倒れ臥せる。 すかさずフォールに入り、龍子のフォローももはや力無く届かず、ぎりぎりのところでメロディたちが勝利した
こうして初参戦であるWCWWのEXタッグリーグは終わった。 優勝は全勝のマイティ・ボンバー組。 メロディたちは準優勝であった
マイティ・ボンバー戦こそくやしい思いをしたものの、結果で考えれば新興団体としてこれ以上無い成果であったと言えよう。 確かに主役こそ新女に奪われたものの見せるべきものを見せての結果である。 特に新女の次を担うジューシーペアを越えたことは大きい。 業界的にも新女とWARSの存在を脅かす力が出てきたことを意識させることができたであろう
我々は3年目にして、遂に新たなステージに到達したのだ
(終)
「しばらく前にさ、人様の熱い情熱というものを見て、私の中の眠ってたマグマがふつふつとわきあがってきたわけですよ」
「相変わらずエレンディアは唐突よね。 できれば私にもわかるように話してくれないかしら?」
「で、物凄くジルオール話書きたい! って思ったものの話としては形にならないわけだ」
「都合悪いところはいつも無視よね」
「出会った時からエレンディアはそうなのー。 今更なのー」
「・・・ずいぶんな言いようね、ルルアンタ・・・」
「都合いいところは聞こえてるのー・・・」
「だいたい今サバイバーじゃないの? あと確かジルオールなら書きかけ放置の・・・」
「で、カルラとの甘い話とか書きたいなーって思ったのだけど、そこで問題になってくるのが設定なのよっ!」
「・・・エレンディア今日はずいぶんね。 私だけ無視なのかしら?」
「私が! ザギヴを無視するわけないじゃない! ちゃんと愛してるわよ!!」
「全然話が噛みあってないのー」
「こうおぼろげな展開のイメージがあるのだけど、そこで物凄く分岐点になるのが、カルラの過去なのよね」
「自分の言いたいことだけ言っていくわけなのね・・・」
「カルラの過去はゲーム内で本人から聞くわけなのだけど、はたして18禁的な内容なのかそうでないのか、が私的に重要でそこ次第で展開が変わるイメージなのだけど、ここ年齢制限ないのよね」
「え・・・? エレンディア、その・・・カルラとそういう話、なの・・・?」
「ザギヴちゃん顔赤いのー」
「違うから! そうじゃないの! でもそうかも!」
「・・・ごめんなさい、あなたが何を言ってるかわからないわ」
「んー、なんていうのかな。 そういう話を考えてるわけではないの。 ただ実際に書いたらどこまで行くのか書いてみないとわからないかなーって。 イメージではまだそこまでできてないから最初の段階のイメージがあって、そこが設定次第で変わるかなーと」
「抽象的すぎてさっぱりわからないわ。 もう少し具体的に言ってくれない?」
「カルラが過去に暴行を受けていたとするならば、人に触れられることを嫌がる、と私は思うのね。 自分が触れるのはともかくとして。 これがそうでなくてただ虐殺のただ中にいたとするならば、表面はともかく内面は激しい憎悪の塊、という感じで話のアプローチが大幅に変わるわけ」
「まだよくわからないのー」
「んーと、前者なら話の焦点は『触れる』になるんだけど、後者なら『心を癒す』になるというのかなー」
「なるほどね・・・まぁおおよそはわかったわ。 ならいっそのこと・・・」
「両方書くは却下で」
「・・・どうしてよ」
「前にも言ったけど私は設定重視なので、どちらかが設定上の事実なら片方は虚実なわけよ。 虚実を元には書かないの!」
「・・・えっと、その2次創作って別に事実じゃないのよ?」
「わ、わかってるわよ、それはっ。 なんていうのかな・・・この場合両方書いたら片方のカルラは、私の中で偽者のカルラになっちゃうから書けないってことなのよっ!」
「エレンディアはいつもそういう無駄なところにばかりこだわるのー」
「無駄じゃないのよ、ルルアンタ。 それが私の楽しみ方なの」
「それでアイデア出たのに書けない、では本末転倒なんじゃないかしら?」
「そうだとしても!」
「ねーエレンディア、今思ったけどあの話全部カルラちゃんの嘘だったらどうするの?」
「はあ!!??」
「なるほど。 カルラならそれもありえるわね」
「ありえないわよ! だって確かサントラのミニドラマでそこって描かれてるんでしょっ!?」
「聞いてないの・・・?」
「・・・」
「唐突に話は変わるのだけど」
「いつものこととは言え、ここで話変わるのっておかしいんじゃない?」
「書いてたら急にアイデアがわいてきたの。 創作活動してる人ならわかってもらえると思うのだけど、アイデアって本当に突然に出てくるのよ。 そういうものなのよっ」
「なら書けばいいんじゃないのー? エレンディア」
「ちゃんと話にできる自信がないから、今言っちゃうわね」
「なんでよっ!?」
「見た誰かが書いてくれたらいいなーって・・・」
「エレンディアは本当いいかげんなのー・・・」
「いや、だって小ネタよ、基本的に。 おもしろそうだなーって思ったけど、そこからイメージが広がらないの・・・」
「まぁ・・・好きにすればいいんじゃないの・・・」
「キャラは私とルルアンタと誰か。 最低3人。 そこからは話の広がり次第? どっちが姉、って話。 『お姉さんなんだからがんばらないとね』とかフリを入れられて『そうね』『うんっ』・・・『え?』『え?』『え?』みたいな」
「・・・」
「・・・」
「え、何? ダメ?」
「ダメではないけど・・・これはどうなるの・・・?」
「エレンディアがお姉ちゃんって言ってるのー」
「それはほら、それぞれ独立した話だから・・・」
「ねえエレンディア、さっきまでのカルラの話の時に自分でなんて言ったか覚えてる・・・?」
「え?」
「どっちかのルルアンタは偽者になっちゃうのー」
「や、いや、それはあれよっ、ほら、えっと・・・だ、だから誰か書いてくれないかなってっ! 偽者になっちゃうから!」
「・・・なんとか逃げたわね」
「エレンディアはもっともらしい言葉をすぐ並べるけど、勢い任せで言ってるからすぐ破たんするのー」
「ルルアンタ・・・」
「エレンディアが怖いのーっ」
「やめなさいよ、エレンディア」
「私もね、ルルアンタのことは好きだからいつも我慢してるけど、私の我慢も限度ってものがあるのよ?」
「・・・でも嘘は言ってないの」
「そうよね。 いつも本当のことしか言ってないのよね、ルルアンタは」
「・・・」
「まぁそういうわけで設定がどっちかわからないので両方書けません。 あと私としては書いておもしろそうなのは前者なんだけど、前者の設定であって欲しくない、という気持ちもあったり」
「強引に話を変えてきたわね」
「もしかしたらこれのように戯言でいきなり書き出すかもしれないです」
「エレンディアは唐突に戯言で小話のようなもの書いたりするけど、誰もついていけないと思うの」
「ただ前者で書いた場合、焦点が『触れる』なため、ともすると18禁になってここでは発表できなくなる可能性も・・・」
「このまま無視のようね、私たち」
「お姉ちゃんって自分で言うわりに大人げないの」
「それではまたお会いしましょうー。 ではではー」
「どうせ書く書く詐欺だし、誰もこんなところ見てないのー」
「ルルアンターっっ!!」
(終)
小縞がタイトルホルダー、それも2冠になったことは団体内だけでなく業界内にも大きく影響があった。 マスコミの取材も増え、観客の注目度も上がり興行はかなりの増収だ。 1,2年目の投資が早くも成果を見せ始めている
さて、それで収まりがつかないのはこれまでの団体トップ。 ということで本来はWARSをメロディ、BDを真鍋に挑戦させようと思っていたのだが、メロディに押し切られ両タイトル戦をメロディで行くことに。 まだカードをみんなに言ってなかったから、まぁよかった
そして翌月の10月、東海・近畿興行。 リベンジクライマックスシリーズ
シリーズタイトルのおかげでマスコミも客も大方予想できていたようだ。 またその分全体的に客入りもよく、その中でアドミラルがデビュー。 つい先日デビューした楠木とのシングル
シリーズとしてはメインは小縞対メロディのタイトル戦なのだが、マスコミも観客も予想外の熱い試合に注目することになる。 これがデビュー戦とは思えないアドミラルのファイト、そしてそれを真っ向から受けた楠木の二人
どちらもパワータイプであり試合開始早々からペースを掴もうと大技を繰り広げる。 一進一退の攻防の中、アドミラルの正統派のプレーの実力とそうかと思うと見せるラフファイト、そしてそれを受けつつも立ち上がり向かっていく楠木の姿は圧巻であった。 どちらもまだデビューしたてにすぎないと言うのに・・・という声が聞こえるようであった
またこの二人の試合が注目を浴びたことは団体としては大きかった。 実際のところメロディ中心で来ていて、今それを越えたのが小縞。 ジュニアの団体、と思われている節があったからだ。 そこをヘビー級の二人が十分な試合を見せることで、ヘビー級への注目も集まる
そしてメイン、名古屋レインボープラザのWARS、大阪城アリーナのBD、両タイトルを防衛し小縞はその力をアピールしたのであった
試合後帰ろうとしていたメロディに声をかける
「どうだ?」
「どうって・・・何がですか?」
「納得できなかったからの挑戦だったろう、納得できたか?」
少し嫌そうな顔を浮かべた後自嘲ぎみに笑う
「結果が全てです。 私は負けました、そういうことです」
「なんだよ、まるで全て終わったような言い方だな」
「・・・先を考えるとあながち違わなくもないです」
まるで引退でもするかのような物言いに、私はどう言えばいいかと悩んだ。 しかし
「それでもまだ私には私のやり方があります。 ご心配いりませんよ」
そう言い残してメロディは立ち去って行った
私自身これでWCWWは小縞トップで流れが進んでいくかと思っていたが、話はそう甘くなかった
11月、中国・九州興行のことだった。 前シリーズでせっかく注目を集めていたので、楠木かアドミラルを挑戦者にと考えた。 楠木の方が先輩だからとは思ったが、小縞が相手として考えるとアドミラルの方が絵としていいのでアドミラルにする
すると、広島若葉アリーナにて、想定外にアドミラルが勝利し第4代BD王者、さらに福岡ポートメッセでも勝利して第8代WARS王者の2冠となったのだ
確かに小縞はジュニアでアドミラルはヘビーと階級差はあったが・・・まだ越えられるものとは思っていなかった。 観客たちよりも私の方が驚いた出来事であった
またこのシリーズ中に、恩田公園アリーナにてWARSタッグ王座を小縞・メロディ組が奪う。 しかしこれは奪うための即席タッグなので、当人たちも少々複雑な様子だ。 うちにはまだタッグチームと呼べる存在がいない、ということを強く感じた瞬間であった
シリーズ終了の帰りのバスの中、ふだんに比べやけに真鍋が大人しいことに気付いた
「ずいぶんおとなしいな、どうかしたか?」
「あ? あーゆー試合してくるとはね、先輩と思って引いてたけど潰してやる・・・」
かなりしょっぱい試合となったノエル戦のことか
「まぁ・・・あいつは天然だからなぁ・・・」
そう言うと胸倉を掴んで顔を寄せてきた。 少し前にもメロディにやられた気がする
「そんなんでなんでも許されると思うなよ・・・」
「俺に言われても・・・」
後に引きそうな遺恨を抱えてしまったようだ。 どうしたものか・・・
そして12月。 そう12月と言えば新女主催のEXタッグシリーズの時期でもある。 このところ業界内の注目を集めているだけに早々に新女からオファーは来た。 だが私は正直迷った
WCWWとしてはこの目まぐるしいタイトル争いによる団体内抗争の流れを止められない、止めるわけにはいかない。 しかしEXの結果を求めるのならこちらのトップクラスを送らないと結果が出ない・・・。 やがて、選手たちにも新女からオファーが来てることが知れ、直接話し合うことになった
「皆も知っての通り、毎年恒例となっている新女主催のEXタッグリーグ、そのオファーがうちにも来ている。 結果が出せればそれなりの収入にもなるし、動員にも影響するだろう。 もちろん君ら選手としてもアピールチャンスとも言える。 しかし・・・」
「まずはうちの興行が優先、ですよね?」
「そういうことだ。 なので2冠王者であるアドミラルはまず除外となる」
「私はハナから興味ないから構わないよ」
「ほう? かなりアピールできる場ではあるぞ?」
するとバカにしたような顔を浮かべて返してきた
「2冠王者つったって、私はまだ『うちのリング』でアピールしていかなきゃいけない新人だろうよ?」
「・・・そうだな、すまなかった。 バカなことを言った」
私はコーチをしていたりするせいか、ついつい彼女らを甘く見てる節がある。 リングにも立ち、すでにプロの彼女らに対して申し訳ない
「また今回そのアドミラルに挑戦者の予定である楠木も除外だ」
「お・・・私が行けるんですか? ならEXどころじゃないですね」
想像してなかったようで、気が抜けたような表情を浮かべる。 どうやら行くつもりだったみたいだな。 しかし楠木もいいファイトは見せてくれているが、やはりまだうちのリングで活躍してもらわないといけない選手だ
「・・・と、なるとー・・・私とメロディさんですか?」
「そこなんだ・・・正直小縞とメロディに抜けられるとこちらの興行的に痛い。 タイトルこそアドミラルが奪ったとは言え、君らが現状うちの看板だ。 ファンは君らに会いに来ている」
「では今回も不参加にしてはいかがでしょう、社長」
霧子くんの意見に私は首を振る
「世間での注目を集め始めている今、不参加となると『逃げた』と新女は言うだろう。 それが狙いだ。 実は逃げ道が無い状態なんだ」
「んーじゃあ私が行ってこようか?」
「真鍋さん、あなたもアドミラルさんたちと一緒ですよ。 社長、私がノエルさんと行ってきます」
「む、メロディ・・・しかし、その・・・」
「言いたいことはわかりますが、私たちの力も信じてもらえませんか? いいわよね、ノエルさん」
「ん・・・二人で・・・ファイトー・・・」
メロディとノエルの2人は十分力は持っている。 しかしタッグとしての成熟度、自力、そしてポテンシャルでは新女のトップ、マイティ・ボンバーの壁は崩せないであろう
「ジュニアの私たちならダメでも逃げ道は残りますわ。 みっともない試合はしてこないつもりです、任せてください」
「・・・選択肢は正直ほとんどない。 だからメロディ、ノエルに任せる。 がんばってきてくれ」
「まぁ、がんばってきますよ」
「・・・おー・・・」
「よしっ、とりあえずEXは決まりだ。 あとはさっき言ったように今月シリーズはアドミラルの2冠に楠木が挑戦だ! 各自気合を入れてがんばっていって欲しい、これは来年への布石となるシリーズだ!」
「「はいっ!」」
(終)
小縞・真鍋のデビューによりジュニア戦線が楽しくなってきたWCWW。 そこへまたもニュースが飛び込んできた
『激闘龍、至宝守れず。 第2代BD王者は草薙みこと!』
やはり選手の離脱の影響は大きかったようで、激闘龍のトップと言えば『戦うスーパーモデル』などとも言われる銀狼・フレイア鏡だが、フリーの草薙相手に防衛ができず至宝流出となった
かつては関わってた身として多少感傷的にもなったが、そこはそれ、ビジネスとして見ればこちらには千載一遇のチャンス。 即座に参戦のオファーを出しておいた
そして8月、東北~北海道シリーズ、キター!アリーナ満員札止め。 メロディが機は熟しましたわ、と言うので少々無理しておさえた会場だったが、札止めでほっと胸をなでおろした
WARS無差別級王者戦。 チャンピオン、ロゼ・ヒューイット。 挑戦者、メロディ小鳩
序盤組むと見せかけて組まず、組まないと見せかけて組むヒットアンドアウェイでメロディが翻弄する。 しかし中盤になるとさすがにロゼもGWAとWARSの2冠王者、メロディの動きを読み、捕まえパワーで追い上げる。 やはり厳しいかと見ていたが、メロディはすかさずサブミッションに構成を変える、これが狙いだ
そして、
「メロディスタンプだーっ! これで決まるかー!? おお? メロディ、フォールに行かないっ。 これは・・・ひざ十字だーっ」
「ロゼピンチですね、ロープまでは遠いし、ここまでの疲労の色が濃いです」
「ロゼ耐えながらロープに必死に寄るっ。 どうだっ!? 届くかっ。 あ、あーっとっ、タップですっ、タップしましたっ! ロゼギブアップー!! 新王者誕生ですっ!!」
札止めの観客の怒号のような歓声の中、メロディにWARSベルトが巻かれる。 第6代WARS無差別級王者の誕生である
シリーズ終わって、事務所に戻ってきたところで選手を集める
「まずはWARS王者おめでとう、メロディ。 WCWWの社長として本当に感謝してる」
「ありがとうございます、社長。 まぁ辛勝ではありましたけどね」
「そんなことないですよぅ、凄い勉強になりました、メロディさんっ」
小縞が興奮したように言う。 確かにあの戦い方は見事だった、メロディらしい頭脳戦ではある
「正直ライバルである小縞さんに手の内を見せたのは残念ですが・・・まぁ眼の前の勝負の方が大事でしたから仕方ないですね」
「はっは、メロディさんらしいな。 これでうちの力ってのもアピールできたじゃねーか、社長」
「それだ」
「あん?」
「なんですの?」
選手たちが私にわからないとばかりに不思議そうな眼を向ける
「我々がWARSベルトを奪った。 話題性として申し分ない。 そしてすでに知っているであろうが、激闘龍もベルト流出していて、タイトルホルダーの草薙には来月シリーズに参戦も快諾してもらっている」
「おおー、激闘龍のベルトも奪っちゃうってか。 やるねぇ、社長」
にやにや笑いながら真鍋が言う
「いや、それだけではない」
「はぁ?」
「悠理、アドミラルもそろそろデビューの準備ができているよな?」
「は、はいっ!」
「ああ、いけると思うよ」
「うちの選手層のアピールも込めて、しばらく毎月タイトルマッチを行う! 来月WARSとBDには小縞が挑戦者になる! それ以降は各人のアピール如何だ」
「!」
「は、はいっ! がんばりますっ!」
すっと手が挙がる
「どうしたメロディ」
「それ小縞さんがBD王者になれなかったらどうするんですの?」
「おもしろいことを言うな、メロ・・・」
「なります!!」
私の話に割って入るように小縞が叫ぶ
「絶対に私が勝ちますっ!」
メロディ、そして私が一瞬呆然とし、そして笑いあう
「な?」
「わかりましたわ」
「え、あ、あれ? あ、その・・・ごめんなさい」
「そこで引くなよー、さとみん。 勝って当然だろー」
「あ、う、うんっ。 勝ちます!」
真鍋のフォローに小縞が頭をぶんぶん振ってうなずく
「だいたいメロディ。 お前こそ平気か?」
少々いじわるな質問をしてみる
「・・・確かにそうですわね」
笑顔で返すメロディだったが、その目は笑っていなかった・・・
9月初頭、なんとも表現しづらい新人が入った。 市ヶ谷麗華。 八島のようなふてぶてしさとも違う。 圧倒的な存在感・・・が、少々個性が強すぎた困りもの。 先に入った早瀬とは見事に対照的な人間性と言えよう。 ヒール向きかとも思ったがファイトスタイル的には正統派寄り。 少々力任せなきらいこそあれ、王道ではある。 おもしろいやつだ
そして地元関東周りのシリーズ、WCWWが動き出すのを感じるシリーズとなった。 悠理のデビューなど見どころは多いがやはりタイトルマッチがメインである
市ヶ谷記念ホール、札止め。 メロディ対小縞は先月言った時は正直冗談だったのだが、小縞が勝ち第7代WARS王者となる
さらに日本武闘館、札止め。 草薙対小縞。 序盤からぐいぐいと力で押していく小縞に飲まれぎみな草薙という流れであったが、やはり草薙とてフリーで活躍し、タイトルも獲った身でありいろいろ押し返しを図る。 特に場外で必殺・草薙流兜割りを出したのには驚いた
しかしもっと驚いたのは小縞であった。 かなり効いたと思われたが、その目は力がこもっていた。 すでに2回も彼女の代名詞とも言えるスプラッシュマウンテンを出し返されているのだが、不安気な様子は欠片もうかがえない
「さとみんーっ、相手はもうふらふらだよーっ! 一気にいけーっ!」
セコンドについていた真鍋の声に煽られるように会場からは小縞コールが鳴る。 流れを奪おうと不用意に近づいた草薙を捕まえダイアモンドカッターが決まる。 歓声とともに3カウントが入り第3代BD王者が誕生した
直後、試合の終わっていたメロディが私の肩を掴んで裏へと引っ張り出す
「うお、ととと、どうしたメロディっ」
「毎月タイトルマッチですわよね、社長?」
「あ? ああ・・・」
「来月、私に行かせてくださいますよね?」
「え? それは・・・」
と言いかけたところで胸倉を掴まれメロディが顔を寄せる
「私に、行かせてください、ね?」
「わ、わかった・・・」
小縞が自分を越えた。 それを感じ取り、そしてそれを認めたくないのであろう。 WCWWをジュニアとは言えトップとして引っ張ってきた誇りだ。 特にまだ20才、まだまだ現役として到底認めたくないのであろうな・・・
しかし、団体としてもファンに対して、そしてマスコミに対してWCWWが変わろうとしているのを感じさせる大きな転機であった
(終)
3年目5月、小縞が海外遠征から戻り遂にデビュー。 私の期待の雛たちが遂に飛び立とうとしている。 まず最初は小縞だった
セミファイナルでいきなりロゼのGWAヘビーにぶつけることにして、カードを連絡した。 すると、
「ええええええっ!? わ、私がですかっ!? なんで!? メロディさんとかいるじゃないですかっ」
「私はすでに負けましたわよ、ケルベロスさんも。 もちろんそのままにしておくつもりはないですけれど、まだその時じゃないですわ」
「そうだな。 それにこれは団体の経営面的な問題も大きい。 秘蔵の新人のデビュー戦は話題性がなければいけないってことだ」
「む、無理ですよーっ! 無理無理無理無理っ!!」
「社長ー。 小縞ちゃんにプレッシャーかけすぎー。 私だってそんなこと言われたら無理だよー」
「え、別にプレッシャーかけたつもりはないが・・・」
「秘蔵の新人、とか言ってんじゃんよ。 てーか私はどうなんよ」
「もちろんお前もだが?」
ふはーっと大きなため息をついて真鍋が頭を振る
「本当勘弁してください・・・」
「ええー?」
実際これは少々無茶だったらしく、当日小縞はリングインの時点で地に足がついてなかった。 観客の声援もどこ吹く風で、表情の凍りついた様を見ていれば結果は考えるまでもなかった
ロゼが一方的に支配し、なんらいいところなく敗北
「あー・・・まぁ、なんか済まなかった・・・」
「あぁ社長、謝る必要はねぇよ。 あたしらはプロだ。 チャンスを活かせない小縞が悪いのさ。 ただまぁ仕方ねぇとも思うから説教はやめとくよ」
「はい・・・ケルベロスさんすいません・・・」
「謝るこたぁねぇよ。 デビュー戦ってのは練習とは違う。 ついでにタイトルマッチはふだんのリングとも違う。 それが経験できたんだ、今後に活きるだろ」
「は・・・はいっ!」
これで自信を失ってヘコんでしまったらどうしようかと思ったが、ケルベロスのおかげで目に光が戻った。 正直助かった・・・小縞にかけた投資は正直それなりだ、ここで潰れてしまったらしゃれにならないところだった
「でー、社長。 私は? さとみんとは同期の私がまだデビューできないってのはどうなん?」
「当然お前も来月がデビューだ。 準備はできてるか?」
横から顔だけこちらに向けて、絡んできた真鍋に返す
「んー・・・まぁぼちぼちかねぇ・・・。 さとみんみたいにいきなりタイトルマッチとかは勘弁してほしいけどー」
「ああ、わかってる。 ノンタイトルでケルベロスとシングルだ」
「えええええーっ!? なんでケルベロスさんさー! さとみんとかせめてメロディさんだろー! このボケ社長ーっ!!」
本当に想定外だったようで、考え無しに叫ぶ
「あぁ? あたしじゃ不満ってか、真鍋」
当然聞こえたケルベロスが反応する
「ケルベロスさんヘビーじゃんさー! 私ジュニアだっつーのっ!」
「あんだ、お前。 あたし以外なら勝てるってか? くやしいがメロディさんはジュニアなのにあたしに勝つぞ?」
「ぬ・・・ぐ・・・それは知ってますけどぉ」
「プロレスってのは勝つだけが全てじゃないさ。 お前はそれを知ってると思うんだが?」
二人の会話に割って口を出すと、真鍋がきっと私を睨んで言った
「だぁらそれだよっ! ケルベロスさんとじゃ私がおいしくないだろ! 社長こそプロレスわかってんのかよっ」
それを聞いて私とケルベロスが鼻で笑う
「ばぁか」
「そんなことはわかってる。 デビューの新人にわざわざおいしいカードは組んでやらんよ。 ハードルを上げてどれだけやれるか見るのさ」
真鍋はバカではない、頭の回転がいい、だから口がまわる。 私たちの意図が理解はできたようではある、が感情的に納得できないようで、しばらく口を聞いてくれなくなった
翌月、真鍋デビュー。 結果は想定通りケルベロス勝利。 しかしさすがに今やれるものは出していった。 感嘆すべきは敗戦直後だ。 トップロープに素早く昇ると毒霧を空に吹き
「勝った気になってんじゃねーぞっ!」
と捨て台詞をして退場した。 その演出力に会場からは真鍋コール、勝ったケルベロスはしてやられたってところだ
・・・ただ、惜しむらくは真鍋は自分の立ち位置はわかっているようだが、今のうちの団体に彼女を活かすポジションが無い・・・。 どうしたものか・・・
またこの月は新人が増えた。 早瀬という素直そうな少女だ。 以前に入った八島と比べると対照的すぎておもしろい。 八島と言えば、そのふてぶてしさからケルベロスと一悶着あるかと心配していたが杞憂に過ぎなかった。 私自身まだまだ彼女らを見た目で判断してしまっていると反省した次第だ
悠理のデビューも近々・・・またWCWWという名が業界をざわめかす存在になろうとしている・・・。 私はそうほくそ笑むのであった
(終)
「ふぅ・・・なかなかいい調子じゃないか、私も。 やればできる、できるんだっ」
「んー、まぁ、そこはいいけどさ、社長」
「んんー? なんだね、真鍋くん。 がんばって更新してる私に何か言いたいことでも?」
「てめー、ちょっと更新した程度で調子に乗ってんじゃねーぞ?」
「お前こそ社長に対しての言葉遣いってのを考えた方がいいぞ?」
「まぁそんなことはどうでもいいんよ。 それよりだね・・・」
「どうでもよくないよっ!」
「社長。 無駄なとこ拾って時間を無駄にしないでください」
「更新しようがしまいがここの人たちはひどい人ばかりだ・・・」
「で、さ、社長さ。 これ読み物じゃなくなってね?」
「・・・」
「なぁんて言うのかなー・・・ただのプレイ日記?」
「・・・まぁ、プレイ日記なのは事実だな」
「いいの、これ? ここ的に?」
「今まで散々書いたものにリプレイになってないとかダメ出ししておいて・・・」
「や、そうなんだけどさー。 うーん」
「まぁいいんじゃないんですか?」
「ですよね、霧子さんっ!」
「やー、霧子さんの言いたいこともわかってはいるつもりだよ、私は」
「更新して書き馴れての方が大事かと思いますので」
「うんうん」
「うんー、ま、そーなんだけどさー」
「なんだよ、何が言いたいんだよ」
「書けるようになったら、嫌になるもの書いてね?」
「・・・」
「・・・」
「こういうのをここに書きたかった? 別のとこでやってたんじゃなかったっけ? こゆのは」
「いろいろ事情ってものもあんだろーっ!」
「まー、そうだろうけどさー・・・」
「いいのっ、とりあえずはこの線でがんばるだけがんばる! たぶん年内か年明けまでしか続けられない気もするし!」
「短いな、おい」
「お前の言う通りだからだよ・・・」
「ちなみにですね。 メモ取りながら書いたりしてるのですが、どうやら抜けがあったらしく、なおかつすでに書いてしまっていて、修正するととんでもなくめんどうなので次の話か次の次あたりで1年が闇に消えます」
「とんでもなくめちゃくちゃな話だな・・・」
「すでに書くペースが遅れぎみなのでそんな暇はないんだよ・・・」
「ご自分のペースでゆっくりに戻せばよいじゃないですか?」
「あーダメダメ、霧子さん。 それやったら即座に止まる」
「なんであなたが言うんですかね?」
「間違ってるなら謝ってやんよ」
「・・・」
「まー見てる人もいないとは思うけど、とりあえずはやれるとこまでやれよな、お前」
「いちいち棘だらけの言い方するな、お前は・・・」
「棘をさんざん刺しても堪えないバカ相手だからしゃーないんさ」
「出番削るか・・・実際立ち位置失いかけてるし・・・」
「社長、がんばってねぇ。 私ぃ応援してるからぁ♪」
「何そのあからさまに白々しい応援」
「はいはい。 じゃあまぁがんばってくださいね、社長」
「・・・鋭意努力します・・・」
(終)
WARSの至宝ごと参戦で、盛り上がるWCWWとそのファンではあったが、やはり仮にも龍子を破っただけのことはある今のうちに倒せる選手はいなかった
現在の団体トップはジュニア戦士のメロディ。 ビューティもロゼやクレアも難関だった
しかしそれは選手たちの話。 フロントとしては、資本投資はリスクではあったものの、大幅な動員アップでしてやったりといったところであった
「はぁ・・・。 やはりヘビーの人は大きいわねー・・・」
「あたしにもっと力があればあたしが行くんだけどねぇ・・・」
「もういっそやっちゃった方が早いかしら・・・」
「おーい、メロディ何を言ってるー」
目に怪しげな光を灯したメロディが怖くなって声をかける
「あら社長。 いたんですか?」
「えーっと、いちおー私もコーチなので・・・。 何をやっちゃうのか知らんけど、下手なことするとただWARSにベルト返還で、ビューティを呼んだ資金が無駄になるのだが・・・」
「あらそうね。 社長もなかなか抜け目ないんですね」
「あんたら何の話してんだい?」
「まぁまぁ。 しかしそんなきついか。 そろそろ戦えないこともないかと思ってたんだが」
そう言うと二人とも難しい顔をして下を向く
「ビューティさんもロゼさんもかなりのパワーファイターで、ジュニアの私だといなしきれないものがあるわ」
「あたしは同じパワーファイターではあるが、あちらさんの方が力が上で正直潰されちまうね」
メロディが珍しく苛立ちを顔に浮かべ、ケルベロスは『勝てない』と表情で訴えていた
「そうか・・・できればビューティが参戦してるうちにWARSのベルトを奪ってもらいたかったが厳しいか・・・まぁしょうがないな」
そう言うとメロディが刺すような目で私を見、薄笑いを浮かべながら言った
「あら・・・しょうがないことはないわ? 潰しあいしてもらいましょうよ」
「は?」
「あん?」
意味がわからず私とケルベロスが間の抜けた感じで返す
「今まだうちでは奪えないのなら、どちらかに両方持ってもらった方が楽だわ。 WARSにロゼさんをぶつければいいのよ」
「ああ・・・」
「お、おお。 なるほど・・・」
歯が立たない苛立ちとこちらの思惑を合わせた感じだろうか。 しかし確かにうちの思惑としてはその方がありがたい
「そうだな・・・しかしビューティが防衛したらどうする?」
「その時はその時でしょう。 でもあの人にそこまでやれるかしら?」
「・・・自分だって勝てないくせに・・・」
「ケルベロスさん、何? 聞こえなかったんだけど」
「い、いや、なんでもねぇよ」
かくしてビューティは守り切れず、ロゼ・ヒューイットが第5代WARS無差別級王者となったのであった
これが4月の話。 事態が動くのはここから約半年後のことである
(終)
年末に新女からEXタッグリーグへの誘いが来た。 WCWWの名前に興味を引いたらしい。 しかしこちらはまだ立ち上げまもなく新女の引き立て役になる気はない。 丁重に断っておく
ドサ周りの興行が続く中、私はさらに経営負担を重ねる。 まだデビューもしていない小縞を海外遠征に送ることにしたのだ
「えーっと、いいんでしょうか?」
「何言ってるんだ、小縞。 むしろ今しか行かれないよ。 力がついてきたらリングで活躍してもらわないといけないんだし」
「あー、なるほどー・・・まぁ海外のレストランは参考になるかもですよね」
「・・・君の実家のお店のことよりレスリングを身に着けてきてね・・・」
そしてEXが終わり、プロレス大賞の発表
うちからはメロディが新人賞に選ばれた。 正直賞とは縁がないだろうと思っていたため、ありがたい収入であった。 大賞はWARSの龍子、私としても納得の受賞である
「龍子か・・・やはりな」
「そうですか? マイティさんかと私は思っていましたが・・・」
「マイティは華もあり新女の要ではあるのだが、いざ直接対決なら龍子の方が今はまだ上だろうかと思う。 実際どうかはさておきとして、マイティはボンバーとのタッグの印象が強い選手だから、ピンで見るなら龍子になるのは当然かと思うわけだ」
「なるほど・・・しかしタッグはタッグで大事とは思います。 うちにはまだ・・・」
「そうだな、課題は多すぎだ。 ははは、まぁゆっくりがんばっていこう」
ノウハウは持っていても今の我らは新興の小さな団体にすぎない。 だからこそ数年先を見据える。 こちらに力が付いた頃には新女とWARSは主力が引退であろう・・・そう思うと一抹の寂しさはあるのであるが・・・。 新人をさらに増やし未来を楽しみに鍛えていく。
そんな中のことだった
「社長っ、すげーことになったねぇ」
「なんだいきなり真鍋」
「あり? まだトースポ見てないの?」
そう言って丸めたスポーツ新聞をバトンのように渡してくる
「うちはまだ話題に昇るほどのネタがないからなぁ・・・にしても、なんかこれオヤジくさいな、お前」
「よけーなお世話。 ほれ早く見て」
「なんだよ、そう急かすなよ・・・」
すると突然ジムの扉が勢いよく開かれる。
「おぉいっ、社長、ここかっ。 見たかよっ、新聞っ」
「おいおい、ケルベロス勘弁してくれよ・・・心臓が止まるかと思ったよ」
「ああ? それどころじゃねーだろ、おい」
「だよねぇ。 ほらーさっさと見なってー」
「なんなんだ・・・えーっと・・・」
『WARS至宝流出! 時代の終焉か!?』
WARSを長らく支えてきたエース、サンダー龍子。 しかし先のシリーズにおいて、シングルをフリーのビューティに、タッグをGWAタッグに相次いで奪われた。 至宝を取り戻すべくのリベンジであった今シリーズ、エースは奪い返すことができなかった。 WARSの絶対的エースであり去年のプロレス大賞者に、ついに陰りが見えてきたと言えよう
「なんと、まぁ・・・あの龍子がねぇ・・・」
「いやいやー、私の時代が見えてきたねぇ」
「ばぁか、デビューもまだの新人がナマ言ってんじゃないよ。 あたしがちょっと揉んでやるからリングに上がりな」
「あーっと、そうだ、ロードワークの時間だー。 それじゃケルベロスせんぱーい、またー」
逃げるようにジムを出て行く真鍋。 まぁ見慣れた光景だ。 別に練習はサボってるわけでもなしほうっておく
「ったく、あいつは口だけは調子いいな」
「まぁまぁ、あいつはそこが良さでもあるさ」
「まぁ・・・わかっちゃいるさ・・・。 にしても、これはおもしろいことになったものだねぇ」
「ああ、確かに。 お前たちより私の方が実におもしろい」
「あん?」
「すぐにわかる」
3月、関東周りのWCWWの興行に、フリーの市ヶ谷とGWAが参戦することになったのであった・・・
(終)
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