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3年目秋~冬



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 小縞がタイトルホルダー、それも2冠になったことは団体内だけでなく業界内にも大きく影響があった。 マスコミの取材も増え、観客の注目度も上がり興行はかなりの増収だ。 1,2年目の投資が早くも成果を見せ始めている

 さて、それで収まりがつかないのはこれまでの団体トップ。 ということで本来はWARSをメロディ、BDを真鍋に挑戦させようと思っていたのだが、メロディに押し切られ両タイトル戦をメロディで行くことに。 まだカードをみんなに言ってなかったから、まぁよかった



 そして翌月の10月、東海・近畿興行。 リベンジクライマックスシリーズ
 シリーズタイトルのおかげでマスコミも客も大方予想できていたようだ。 またその分全体的に客入りもよく、その中でアドミラルがデビュー。 つい先日デビューした楠木とのシングル
 シリーズとしてはメインは小縞対メロディのタイトル戦なのだが、マスコミも観客も予想外の熱い試合に注目することになる。 これがデビュー戦とは思えないアドミラルのファイト、そしてそれを真っ向から受けた楠木の二人

 どちらもパワータイプであり試合開始早々からペースを掴もうと大技を繰り広げる。 一進一退の攻防の中、アドミラルの正統派のプレーの実力とそうかと思うと見せるラフファイト、そしてそれを受けつつも立ち上がり向かっていく楠木の姿は圧巻であった。 どちらもまだデビューしたてにすぎないと言うのに・・・という声が聞こえるようであった

 またこの二人の試合が注目を浴びたことは団体としては大きかった。 実際のところメロディ中心で来ていて、今それを越えたのが小縞。 ジュニアの団体、と思われている節があったからだ。 そこをヘビー級の二人が十分な試合を見せることで、ヘビー級への注目も集まる

 そしてメイン、名古屋レインボープラザのWARS、大阪城アリーナのBD、両タイトルを防衛し小縞はその力をアピールしたのであった


 試合後帰ろうとしていたメロディに声をかける
「どうだ?」
「どうって・・・何がですか?」
「納得できなかったからの挑戦だったろう、納得できたか?」
 少し嫌そうな顔を浮かべた後自嘲ぎみに笑う
「結果が全てです。 私は負けました、そういうことです」
「なんだよ、まるで全て終わったような言い方だな」
「・・・先を考えるとあながち違わなくもないです」
 まるで引退でもするかのような物言いに、私はどう言えばいいかと悩んだ。 しかし
「それでもまだ私には私のやり方があります。 ご心配いりませんよ」
 そう言い残してメロディは立ち去って行った


 私自身これでWCWWは小縞トップで流れが進んでいくかと思っていたが、話はそう甘くなかった

 11月、中国・九州興行のことだった。 前シリーズでせっかく注目を集めていたので、楠木かアドミラルを挑戦者にと考えた。 楠木の方が先輩だからとは思ったが、小縞が相手として考えるとアドミラルの方が絵としていいのでアドミラルにする

 すると、広島若葉アリーナにて、想定外にアドミラルが勝利し第4代BD王者、さらに福岡ポートメッセでも勝利して第8代WARS王者の2冠となったのだ
 確かに小縞はジュニアでアドミラルはヘビーと階級差はあったが・・・まだ越えられるものとは思っていなかった。 観客たちよりも私の方が驚いた出来事であった

 またこのシリーズ中に、恩田公園アリーナにてWARSタッグ王座を小縞・メロディ組が奪う。 しかしこれは奪うための即席タッグなので、当人たちも少々複雑な様子だ。 うちにはまだタッグチームと呼べる存在がいない、ということを強く感じた瞬間であった

 シリーズ終了の帰りのバスの中、ふだんに比べやけに真鍋が大人しいことに気付いた
「ずいぶんおとなしいな、どうかしたか?」
「あ? あーゆー試合してくるとはね、先輩と思って引いてたけど潰してやる・・・」
 かなりしょっぱい試合となったノエル戦のことか
「まぁ・・・あいつは天然だからなぁ・・・」
 そう言うと胸倉を掴んで顔を寄せてきた。 少し前にもメロディにやられた気がする
「そんなんでなんでも許されると思うなよ・・・」
「俺に言われても・・・」
 後に引きそうな遺恨を抱えてしまったようだ。 どうしたものか・・・


 そして12月。 そう12月と言えば新女主催のEXタッグシリーズの時期でもある。 このところ業界内の注目を集めているだけに早々に新女からオファーは来た。 だが私は正直迷った
 WCWWとしてはこの目まぐるしいタイトル争いによる団体内抗争の流れを止められない、止めるわけにはいかない。 しかしEXの結果を求めるのならこちらのトップクラスを送らないと結果が出ない・・・。 やがて、選手たちにも新女からオファーが来てることが知れ、直接話し合うことになった

「皆も知っての通り、毎年恒例となっている新女主催のEXタッグリーグ、そのオファーがうちにも来ている。 結果が出せればそれなりの収入にもなるし、動員にも影響するだろう。 もちろん君ら選手としてもアピールチャンスとも言える。 しかし・・・」
「まずはうちの興行が優先、ですよね?」
「そういうことだ。 なので2冠王者であるアドミラルはまず除外となる」
「私はハナから興味ないから構わないよ」
「ほう? かなりアピールできる場ではあるぞ?」
 するとバカにしたような顔を浮かべて返してきた
「2冠王者つったって、私はまだ『うちのリング』でアピールしていかなきゃいけない新人だろうよ?」
「・・・そうだな、すまなかった。 バカなことを言った」
 私はコーチをしていたりするせいか、ついつい彼女らを甘く見てる節がある。 リングにも立ち、すでにプロの彼女らに対して申し訳ない
「また今回そのアドミラルに挑戦者の予定である楠木も除外だ」
「お・・・私が行けるんですか? ならEXどころじゃないですね」
 想像してなかったようで、気が抜けたような表情を浮かべる。 どうやら行くつもりだったみたいだな。 しかし楠木もいいファイトは見せてくれているが、やはりまだうちのリングで活躍してもらわないといけない選手だ
「・・・と、なるとー・・・私とメロディさんですか?」
「そこなんだ・・・正直小縞とメロディに抜けられるとこちらの興行的に痛い。 タイトルこそアドミラルが奪ったとは言え、君らが現状うちの看板だ。 ファンは君らに会いに来ている」
「では今回も不参加にしてはいかがでしょう、社長」
 霧子くんの意見に私は首を振る
「世間での注目を集め始めている今、不参加となると『逃げた』と新女は言うだろう。 それが狙いだ。 実は逃げ道が無い状態なんだ」
「んーじゃあ私が行ってこようか?」
「真鍋さん、あなたもアドミラルさんたちと一緒ですよ。 社長、私がノエルさんと行ってきます」
「む、メロディ・・・しかし、その・・・」
「言いたいことはわかりますが、私たちの力も信じてもらえませんか? いいわよね、ノエルさん」
「ん・・・二人で・・・ファイトー・・・」
 メロディとノエルの2人は十分力は持っている。 しかしタッグとしての成熟度、自力、そしてポテンシャルでは新女のトップ、マイティ・ボンバーの壁は崩せないであろう
「ジュニアの私たちならダメでも逃げ道は残りますわ。 みっともない試合はしてこないつもりです、任せてください」
「・・・選択肢は正直ほとんどない。 だからメロディ、ノエルに任せる。 がんばってきてくれ」
「まぁ、がんばってきますよ」
「・・・おー・・・」
「よしっ、とりあえずEXは決まりだ。 あとはさっき言ったように今月シリーズはアドミラルの2冠に楠木が挑戦だ! 各自気合を入れてがんばっていって欲しい、これは来年への布石となるシリーズだ!」
「「はいっ!」」




(終)
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