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3年目夏~秋



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 小縞・真鍋のデビューによりジュニア戦線が楽しくなってきたWCWW。 そこへまたもニュースが飛び込んできた

『激闘龍、至宝守れず。 第2代BD王者は草薙みこと!』

 やはり選手の離脱の影響は大きかったようで、激闘龍のトップと言えば『戦うスーパーモデル』などとも言われる銀狼・フレイア鏡だが、フリーの草薙相手に防衛ができず至宝流出となった
 かつては関わってた身として多少感傷的にもなったが、そこはそれ、ビジネスとして見ればこちらには千載一遇のチャンス。 即座に参戦のオファーを出しておいた

 そして8月、東北~北海道シリーズ、キター!アリーナ満員札止め。 メロディが機は熟しましたわ、と言うので少々無理しておさえた会場だったが、札止めでほっと胸をなでおろした

 WARS無差別級王者戦。 チャンピオン、ロゼ・ヒューイット。 挑戦者、メロディ小鳩
 序盤組むと見せかけて組まず、組まないと見せかけて組むヒットアンドアウェイでメロディが翻弄する。 しかし中盤になるとさすがにロゼもGWAとWARSの2冠王者、メロディの動きを読み、捕まえパワーで追い上げる。 やはり厳しいかと見ていたが、メロディはすかさずサブミッションに構成を変える、これが狙いだ
 そして、
「メロディスタンプだーっ! これで決まるかー!? おお? メロディ、フォールに行かないっ。 これは・・・ひざ十字だーっ」
「ロゼピンチですね、ロープまでは遠いし、ここまでの疲労の色が濃いです」
「ロゼ耐えながらロープに必死に寄るっ。 どうだっ!? 届くかっ。 あ、あーっとっ、タップですっ、タップしましたっ! ロゼギブアップー!! 新王者誕生ですっ!!」

 札止めの観客の怒号のような歓声の中、メロディにWARSベルトが巻かれる。 第6代WARS無差別級王者の誕生である


 シリーズ終わって、事務所に戻ってきたところで選手を集める
「まずはWARS王者おめでとう、メロディ。 WCWWの社長として本当に感謝してる」
「ありがとうございます、社長。 まぁ辛勝ではありましたけどね」
「そんなことないですよぅ、凄い勉強になりました、メロディさんっ」
 小縞が興奮したように言う。 確かにあの戦い方は見事だった、メロディらしい頭脳戦ではある
「正直ライバルである小縞さんに手の内を見せたのは残念ですが・・・まぁ眼の前の勝負の方が大事でしたから仕方ないですね」
「はっは、メロディさんらしいな。 これでうちの力ってのもアピールできたじゃねーか、社長」
「それだ」
「あん?」
「なんですの?」
 選手たちが私にわからないとばかりに不思議そうな眼を向ける
「我々がWARSベルトを奪った。 話題性として申し分ない。 そしてすでに知っているであろうが、激闘龍もベルト流出していて、タイトルホルダーの草薙には来月シリーズに参戦も快諾してもらっている」
「おおー、激闘龍のベルトも奪っちゃうってか。 やるねぇ、社長」
 にやにや笑いながら真鍋が言う
「いや、それだけではない」
「はぁ?」
「悠理、アドミラルもそろそろデビューの準備ができているよな?」
「は、はいっ!」
「ああ、いけると思うよ」
「うちの選手層のアピールも込めて、しばらく毎月タイトルマッチを行う! 来月WARSとBDには小縞が挑戦者になる! それ以降は各人のアピール如何だ」
「!」
「は、はいっ! がんばりますっ!」
 すっと手が挙がる
「どうしたメロディ」
「それ小縞さんがBD王者になれなかったらどうするんですの?」
「おもしろいことを言うな、メロ・・・」
「なります!!」
 私の話に割って入るように小縞が叫ぶ
「絶対に私が勝ちますっ!」
 メロディ、そして私が一瞬呆然とし、そして笑いあう
「な?」
「わかりましたわ」
「え、あ、あれ? あ、その・・・ごめんなさい」
「そこで引くなよー、さとみん。 勝って当然だろー」
「あ、う、うんっ。 勝ちます!」
 真鍋のフォローに小縞が頭をぶんぶん振ってうなずく
「だいたいメロディ。 お前こそ平気か?」
 少々いじわるな質問をしてみる
「・・・確かにそうですわね」
 笑顔で返すメロディだったが、その目は笑っていなかった・・・


 9月初頭、なんとも表現しづらい新人が入った。 市ヶ谷麗華。 八島のようなふてぶてしさとも違う。 圧倒的な存在感・・・が、少々個性が強すぎた困りもの。 先に入った早瀬とは見事に対照的な人間性と言えよう。 ヒール向きかとも思ったがファイトスタイル的には正統派寄り。 少々力任せなきらいこそあれ、王道ではある。 おもしろいやつだ

 そして地元関東周りのシリーズ、WCWWが動き出すのを感じるシリーズとなった。 悠理のデビューなど見どころは多いがやはりタイトルマッチがメインである
 市ヶ谷記念ホール、札止め。 メロディ対小縞は先月言った時は正直冗談だったのだが、小縞が勝ち第7代WARS王者となる
 さらに日本武闘館、札止め。 草薙対小縞。 序盤からぐいぐいと力で押していく小縞に飲まれぎみな草薙という流れであったが、やはり草薙とてフリーで活躍し、タイトルも獲った身でありいろいろ押し返しを図る。 特に場外で必殺・草薙流兜割りを出したのには驚いた
 しかしもっと驚いたのは小縞であった。 かなり効いたと思われたが、その目は力がこもっていた。 すでに2回も彼女の代名詞とも言えるスプラッシュマウンテンを出し返されているのだが、不安気な様子は欠片もうかがえない
「さとみんーっ、相手はもうふらふらだよーっ! 一気にいけーっ!」
 セコンドについていた真鍋の声に煽られるように会場からは小縞コールが鳴る。 流れを奪おうと不用意に近づいた草薙を捕まえダイアモンドカッターが決まる。 歓声とともに3カウントが入り第3代BD王者が誕生した

 直後、試合の終わっていたメロディが私の肩を掴んで裏へと引っ張り出す
「うお、ととと、どうしたメロディっ」
「毎月タイトルマッチですわよね、社長?」
「あ? ああ・・・」
「来月、私に行かせてくださいますよね?」
「え? それは・・・」
 と言いかけたところで胸倉を掴まれメロディが顔を寄せる
「私に、行かせてください、ね?」
「わ、わかった・・・」

 小縞が自分を越えた。 それを感じ取り、そしてそれを認めたくないのであろう。 WCWWをジュニアとは言えトップとして引っ張ってきた誇りだ。 特にまだ20才、まだまだ現役として到底認めたくないのであろうな・・・

 しかし、団体としてもファンに対して、そしてマスコミに対してWCWWが変わろうとしているのを感じさせる大きな転機であった



(終)
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