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3年目12月



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 12月 新日本女子プロレス開催のEXタッグリーグが始まった

 いざカードを見て正直顔を歪めたものだ。 新女はWCWWの潰しに来ている、と理解した。 初日のカードは新女期待の有望株ジューシーペアだったからである
 マイティ・ボンバーに揉まれているだけあってタッグの完成度も高い。 メロディたちがどこまで踏ん張れるか・・・

 そしていざ初日。 開始から早々にヘビー級のパワーとタッグのキレに押されていく。 マッキーは得意の力押し、押されながら返していくと素早くラッキーに切り替わり、多彩な攻撃で翻弄されていく。 対してメロディ・ノエルは即席コンビだ。 力はもちろん持ってはいるが、拙い連携でじり貧になっていく。 しかしさすがはメロディは頭脳派レスラーであった。 その圧倒的不利な状況の中、勝つ方法を最大限考えていた。 ターゲットをマッキーに絞り関節を中心に攻撃を組み立てロープ際で攻防を続ける。 ラッキーは技は多彩ではあるが得意は関節。 彼女の多彩さで攻めたてられても最後の締めは関節技にこだわってくるだろう、そこをロープブレイクしやすいようにとの位置取りである
 そうなって来ると怖いのはマッキーのパワーだ。 力任せの粗さこそあるものの、要所での投げ技は実に怖い。 しかしこれを受けながらも最後の一手をかわしすかさず関節で絞めていく。 あわやというシーンは何度もあったが、結果としてはメロディがタップを奪い勝利した

 二日目。 菊池・近藤組。 タッグとしては初日のジューシーペアよりは完成度は低い。 また菊池はジュニアであり、階級差も少なくは済む。 しかし現時点においては菊池はジュニア最強の呼び声すらある存在。 ハードルは高かった
 試合開始早々にそれが顕著となる。 メロディ・ノエルはジュニアのスピードを活かして戦いたいが、菊池のスピードが二人を上回る。 食い下がろうとすると近藤がヘビーのパワーで繰り出すパンチやキックで確実に二人を消耗させていく。  しかしメロディはしたたかだった。 ペースとしては菊池組が奪っているものの、持っていかせない。 要所で菊池に関節をしかけ段々と飛ばせなくし、自分を囮にノエルの体力を温存させていた
 ジューシーペア戦のように関節で、と思わせておいて最後はノエルにタッチし、体力を温存させておいたノエルが一気に全力で押していく。 最後はノエルが菊池からノーザンライトスープレックスでフォールを奪った

 三日目。 遂に来たマイティ・ボンバー組との対戦。 メロディたちに任せた時に口には出せなかったが、正直勝ち目の無い戦いだ。 急造タッグ、それもジュニアの二人で崩せるほど甘い牙城ではない。 しかしそれにしても新女もやってくれる、リーグ初日からこちらにここまでぶつけてくるとは実際思わなかった
 メロディ・ノエルの二人も結末のわかっていた対戦ではある。 それでも、それでも彼女らは突破口を必死に模索した。 初戦のジューシーペアとの戦いをベースに付け込める隙を必死に探してるのは、見ててよくわかった。 しかしマイティ・ボンバーはやはり現時点において格上である、そして新女のエースでもある。 そんな隙を見せるわけがなかった
 ともすればアピールもあったのだろうか、試合が始まるなり大技で一気にペースを奪うとそのまま押してきた。 ロープ・場外と逃げ、やれることを必死に探すメロディたちであったが、ペースは完全に奪われ付け入る隙をもらえない。 食い下がるように繰り出す技はボンバーが受け止め、華麗なタッチワークから合体技、そしてマイティのムーンサルトプレスで勝敗は決した

 鮮やかな、そして艶やかなマイティ組の勝利。 リングの上のメロディたち、そして録画で見た私と選手たちは奥歯を噛むしかなかった。 ・・・くやしい。 結果は予想通りであったとは言え、やはりくやしかった
 だが、それと同じくらいマイティたちの強さも感嘆した。 選手たちにもその思いは少なからずあったようだった

「・・・つえーな、あいつら」
 ぼそっとケルベロスが言う
「私は行かなくてよかったようです。 私ではメロディさんたちほどがんばれなかった、団体の恥になっていたでしょう・・・」
 楠木も見たものに圧倒されたかのように言う
「んー、まぁ強いねぇ。 んでも私ならまた戦い方は違ったな。 勝てたかはわからんけどさ。 さとみんはどう思う?」
 真鍋が憎まれ口を叩きながら小縞に振る
「うーん・・・きびしいね・・・。 ただそれよりも・・・」
「うん? それよりも?」
「メロディさんが本当凄い・・・。 新女の二人は強いけど、それを出させてるってメロディさんたち凄いですよ! 二人ともジュニアなのに!」
 そう小縞が目をきらきらさせて語気も強く言う
「・・・確かに。 正に言った通りだ。 みっともないものは見せないって言ってたからな。 もっともそのせいでマイティを引き立たせてもしまっていたけどな、はは」
「う・・・でも凄いです!」
「ああ。 みんなも勉強できたことだろう。 何よりうちの興行でもこういう試合を見せていってくれると嬉しい」
 私がそう言うと、現2冠王者であるアドミラルがすかさず返してきた
「そうじゃないと、うちがあっちに負けたみたいだろ。 やって、やるよ・・・」

 メロディたちの敗北は残念ではあったが、WCWWとしては新しいエネルギーを得た。 越えるべき目標がはっきりし、クリアすべき課題が見えた瞬間だったかもしれない

 四日目。 新女との激闘三連戦を越えた翌日は激闘龍のトップ二人であった。 フレイアと越後のタッグだ。 今のうちとの力の距離感を測るのにも興味深い対戦であった
 お互い急造タッグでの対戦ではあったが、やはりフレイアたちの方がシングル意識が強いようで連携が悪い。 序盤からメロディたちがペースを掴む。 構図としては2対1になっているため、メロディたちは危なげがなかった
 もちろんフレイアたちもそれぞれで盛り返そうとはしてくるが、うまくいなしつつ最後はノエルのアルゼンチンバックブリーカーに越後がギブアップでメロディたちの勝利であった

 五日目。 フリーの草薙と永沢のタッグ。 不思議なタッグチームだと思ったが、EXのための急造タッグであったと後に聞いた
 前日同様の急造タッグでやはり個人の意識が強いため、前日のカードを見ているような試合だった。 いや、むしろフリー同士なためにフレイアたちより連携は悪かった。 危なげもなくメロディがメロディスタンプで決めた

 六日目、新女最後の刺客・・・と言いたいところだが、力の差は歴然と言った感じの村上姉妹との対戦。 新女のリングにおいてもこの姉妹はひっかきまわす立ち位置にある選手で、リング上よりリング外の方が目立つレスラーである。 また双方ジュニアでここまでにあった階級差のハンデもない。 マイティ組と正反対にこちらが負ける要素がなかった
 だからこそ、であろうか。 メロディたちは大技を多く使い、魅せる試合に徹していた。 そして村上姉妹に何をさせるでもなく、最後はノエルがノエルズツリーでギブアップに仕留めた

 最終日。 WARSの要、龍子と石川のタッグ。 三日目以来の山場である。 またWARS無差別王者のタイトルをうちが保有してることもあり、結果は重要な試合であった。 しかし・・・それは龍子たちにもそのまま当てはまっていた。 そのためか特に龍子は気負いしすぎていて、ゴングが鳴るよりもはやく飛び出してきた
 しかし試合において気負いのしすぎというのはまるでよくない。 落ち着いてたメロディは余裕でいなし、早々にペースを掴んでいく。 圧倒的優勢に試合を進めていく中で、タッグチームとしても名をはせただけに石川が諌めたのか龍子が冷静さを取り戻していく。 本来は直情気味である龍子ではあるが、団体トップ選手であることもあり立ち直ってくるとやはり怖い。 段々と奪ったペースを奪い返され始める。 そうなってくると階級の差が響いてくる。 龍子も石川もパワーファイターなこともあって、一気に押し切るかと思われたところからどんどん僅差に追い込まれ始めた
 カウント2.5、カウント2.9のコールが響く激戦に会場は盛り上がるが、見てるこっちは心休まらない。 両者ともにもはやスタミナの限界が見えた頃、ノエルのジャイアントスイングで石川がマットに倒れ臥せる。 すかさずフォールに入り、龍子のフォローももはや力無く届かず、ぎりぎりのところでメロディたちが勝利した


 こうして初参戦であるWCWWのEXタッグリーグは終わった。 優勝は全勝のマイティ・ボンバー組。 メロディたちは準優勝であった

 マイティ・ボンバー戦こそくやしい思いをしたものの、結果で考えれば新興団体としてこれ以上無い成果であったと言えよう。 確かに主役こそ新女に奪われたものの見せるべきものを見せての結果である。 特に新女の次を担うジューシーペアを越えたことは大きい。 業界的にも新女とWARSの存在を脅かす力が出てきたことを意識させることができたであろう


 我々は3年目にして、遂に新たなステージに到達したのだ



(終)
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