数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
(本当たいへんだね、な話)
休止中にもかかわらず足を運んでくださる方が多く感謝しております。 現状たいへん忙しく次の更新はいつになるかわかりませんが、少しずつやっていこうと思います。 これからもよろしくお願いします。
…って、通りすがりの方ばかりなのかな?
休止中にもかかわらず足を運んでくださる方が多く感謝しております。 現状たいへん忙しく次の更新はいつになるかわかりませんが、少しずつやっていこうと思います。 これからもよろしくお願いします。
…って、通りすがりの方ばかりなのかな?
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「ああ、烏月かい。 今桂は買い物に出てるよ」
「…それは構わないのですが、なぜあなたがここにいるのですか?」
「あたしは桂の保護者だからねえ、若い女の一人暮らしには反対なのさね。 だからちょくちょく来るようにしてるのさ」
「保護者、ではなく保護者代わりでしょう」
「たいした違いじゃないよ。 そもそも桂は親類縁者がいないから、真弓が亡くなった時だってあたしが全部手配したんだからね」
「桂さんのご母堂…。 千羽、真弓、さまですね」
「あー、そういやあんたも親戚か。 ま、いいけどさ」
「私はお会いしたことはないのですが…。 桂さんに似た方だったのでしょうか?」
「いやあ? 桂のは笑子さんや父親似だよ。 羽藤の血なんだね。 真弓はあんたも知っての通り、鬼切り役なんてやってたクチだからさ。 まあ、一筋縄じゃいかない女だったよ」
「…」
「でも…だからかねえ…。 桂は母親べったりで、頼りすぎていた。 そのせいで亡くなった時はただ呆然として、そして泣き続けた」
「…」
「だけどさ、実際にはそれじゃダメなんだ。 ちゃんと葬儀を挙げなきゃいけないし、いろいろ手続きもある」
「ああ、なるほど…」
「葬儀屋に手配して、通夜までの手続き並びに告別式までの計画、各方面への連絡などなどなど…。 桂はまだ年齢が年齢だけにわからなくて当然だけど、それでも誰かがやらなくちゃいけない」
「私もそういうことは詳しくはないですね。 振る舞いの仕方であればわかりますが」
「ま、そんなもんだろうさ。 だけどさ、結局はあたしは他人扱いだからね、泣いてる桂には悪かったけど、結構動かしたよ」
「全て葬儀屋の方に頼んだのではないのですか?」
「そうすると、かなり金がかかるんだよ。 ま、参列者はあまり多くないのがわかってたから、そこら辺は助かったけどね。 基本的に公共のものを使うようにすれば、大幅に安く済むよ」
「公共の? 斎場ですか?」
「そうだよ。 斎場だけじゃない、墓だってそうさ。 まあ、競争率がべらぼうに高いけどね」
「…そう、なんですか」
「それにさ、葬儀が終わってもまだやることはたくさんある。 およそ全ての名義変更であり、保険関係の手続きだったり、相続の手続きだったりでいろんな所、主に役所かね。 を駆け回るのさ」
「はあ」
「ほとんどあたし、とあたしの知り合いの弁護士が手を貸したけど、桂にはがんばってもらったよ」
「桂さんががんばった、ですか?」
「そうさ。 あたしやあたしの知り合いの弁護士は所詮他人さね。 いちいち本人じゃないとダメな手続きが多くてね。 泣いてる暇すらあげられなかったよ」
「桂さん…」
「だけどね、ある意味それがかえってよかったのさ。 ひたすらたいへんで悲しみが薄れていくんだよ。 もちろん後になって悲しみはまた襲ってくるけど、とりあえず立ち直るきっかけにはなるもんさね」
「そうですね。 経観塚で会った時、桂さんは時折悲しそうにはしていましたが、落ち込んでいる様子は伺えなかったですし」
「ま、あの子は自分で抱え込んで見せない、ってのもあるけどね。 そういう所は真弓にそっくりだよ」
「たいへんだったのですね、桂さん…」
「あー…、いや、まだ終わっちゃいないけどね。 時間かかるんだよ、こういう手続きは。 それに税金の問題とかもあるしねえ…。 だいたい一年くらいは引っ張るよ」
「そうなのですか?」
「そうだよ。 本当たいへんなんだよ」
「…なるほど」
「ま、そういうわけだから、さっさと帰りな烏月」
「…今日は私は桂さんに招かれて来ているのですが」
「社交辞令、ってやつさ。 そこら辺汲み取れないのかねえ?」
「それに先ほどサクヤさん自身が言っていたように、桂さんのような女の子が一人でいるのは危険ですので、私が付いていましょう」
「…」
「サクヤさんは安心して、桂さんのために『影から』手を貸してあげてください」
「あんたねえ…」
「サクヤさんといると桂さんが葬儀のことを思い出して悲しむかもしれません。 どうぞお帰りくださって構いませんよ? 留守を含め、私が桂さんに付いていますから」
「…烏月、葛みたいなこと言うようになったねえ」
「…おかげ様で随分鍛えられました」
(終)
註・オチなし。 今はこれが精一杯。
「…それは構わないのですが、なぜあなたがここにいるのですか?」
「あたしは桂の保護者だからねえ、若い女の一人暮らしには反対なのさね。 だからちょくちょく来るようにしてるのさ」
「保護者、ではなく保護者代わりでしょう」
「たいした違いじゃないよ。 そもそも桂は親類縁者がいないから、真弓が亡くなった時だってあたしが全部手配したんだからね」
「桂さんのご母堂…。 千羽、真弓、さまですね」
「あー、そういやあんたも親戚か。 ま、いいけどさ」
「私はお会いしたことはないのですが…。 桂さんに似た方だったのでしょうか?」
「いやあ? 桂のは笑子さんや父親似だよ。 羽藤の血なんだね。 真弓はあんたも知っての通り、鬼切り役なんてやってたクチだからさ。 まあ、一筋縄じゃいかない女だったよ」
「…」
「でも…だからかねえ…。 桂は母親べったりで、頼りすぎていた。 そのせいで亡くなった時はただ呆然として、そして泣き続けた」
「…」
「だけどさ、実際にはそれじゃダメなんだ。 ちゃんと葬儀を挙げなきゃいけないし、いろいろ手続きもある」
「ああ、なるほど…」
「葬儀屋に手配して、通夜までの手続き並びに告別式までの計画、各方面への連絡などなどなど…。 桂はまだ年齢が年齢だけにわからなくて当然だけど、それでも誰かがやらなくちゃいけない」
「私もそういうことは詳しくはないですね。 振る舞いの仕方であればわかりますが」
「ま、そんなもんだろうさ。 だけどさ、結局はあたしは他人扱いだからね、泣いてる桂には悪かったけど、結構動かしたよ」
「全て葬儀屋の方に頼んだのではないのですか?」
「そうすると、かなり金がかかるんだよ。 ま、参列者はあまり多くないのがわかってたから、そこら辺は助かったけどね。 基本的に公共のものを使うようにすれば、大幅に安く済むよ」
「公共の? 斎場ですか?」
「そうだよ。 斎場だけじゃない、墓だってそうさ。 まあ、競争率がべらぼうに高いけどね」
「…そう、なんですか」
「それにさ、葬儀が終わってもまだやることはたくさんある。 およそ全ての名義変更であり、保険関係の手続きだったり、相続の手続きだったりでいろんな所、主に役所かね。 を駆け回るのさ」
「はあ」
「ほとんどあたし、とあたしの知り合いの弁護士が手を貸したけど、桂にはがんばってもらったよ」
「桂さんががんばった、ですか?」
「そうさ。 あたしやあたしの知り合いの弁護士は所詮他人さね。 いちいち本人じゃないとダメな手続きが多くてね。 泣いてる暇すらあげられなかったよ」
「桂さん…」
「だけどね、ある意味それがかえってよかったのさ。 ひたすらたいへんで悲しみが薄れていくんだよ。 もちろん後になって悲しみはまた襲ってくるけど、とりあえず立ち直るきっかけにはなるもんさね」
「そうですね。 経観塚で会った時、桂さんは時折悲しそうにはしていましたが、落ち込んでいる様子は伺えなかったですし」
「ま、あの子は自分で抱え込んで見せない、ってのもあるけどね。 そういう所は真弓にそっくりだよ」
「たいへんだったのですね、桂さん…」
「あー…、いや、まだ終わっちゃいないけどね。 時間かかるんだよ、こういう手続きは。 それに税金の問題とかもあるしねえ…。 だいたい一年くらいは引っ張るよ」
「そうなのですか?」
「そうだよ。 本当たいへんなんだよ」
「…なるほど」
「ま、そういうわけだから、さっさと帰りな烏月」
「…今日は私は桂さんに招かれて来ているのですが」
「社交辞令、ってやつさ。 そこら辺汲み取れないのかねえ?」
「それに先ほどサクヤさん自身が言っていたように、桂さんのような女の子が一人でいるのは危険ですので、私が付いていましょう」
「…」
「サクヤさんは安心して、桂さんのために『影から』手を貸してあげてください」
「あんたねえ…」
「サクヤさんといると桂さんが葬儀のことを思い出して悲しむかもしれません。 どうぞお帰りくださって構いませんよ? 留守を含め、私が桂さんに付いていますから」
「…烏月、葛みたいなこと言うようになったねえ」
「…おかげ様で随分鍛えられました」
(終)
註・オチなし。 今はこれが精一杯。
月の光と夜の色とに青紫に染められたリボンが、ひらひらと温い風に踊っている。
「お願い、葛ちゃん止まって!」
あれはわたしがつけた危険信号。 危ないから停まれのサイン。
だけどわたしの願いもむなしく、結局は二人とも枯れ井戸の中へと落ちてしまった。
「上まで目算五メートルってところでしょーか。 おねーさんの肩にわたしが立っても、全然高さが足りないですよ」
眩しそうに遥か彼方に浮かぶ月を睨みながら葛ちゃんが言う。
「じゃあ出ようか」
「出ようかって、そんな簡単に…」
「うふふ、これなーんだ?」
わたしは壁沿いに垂れ下がっていた蔦葛を手にとり、それが井戸の縁の向こうへと結びついているのをアピールして…、
ふつっ
引っ張った瞬間抵抗が無くなり、蔦が引っ張られるまま落ちてくる。
「…」
「…蔦ですね」
何度も引っ張って試したのに…。 リボンといいこの蔦といい、備えあっても憂いありとは情けなくって泣きたくなる。
「お腹が減ってるところ、あんなにがんばったのに…」
「おねーさんまだお腹空いてるんですか?」
「違うよっ。 こんな時のために昨日のお昼に対処してあったのに…ってことでっ」
葛ちゃんは少し小首を傾げると、思い出したかのように頷く。
「なるほど。 おねーさんは昨日のお昼頃森で迷っていた時にこの井戸を見つけ、落ちないようにリボンを、落ちた時のためにこの蔦を垂らしておいた、と」
「うん…」
「それで結果は見ての通りなわけですね」
なんとなくいまだわたしが掴んでいた蔦を見て、葛ちゃんは肩を落とす。 そんな葛ちゃんの様子を見てわたしは少し冷静さを取り戻す。
いけない、ここはお姉さんとして葛ちゃんを安心させてあげないと。
「だ、大丈夫。 まだこれがあるよっ」
そう言ってわたしは切り札を葛ちゃんの目の前に差し出す。
「札…のように見えますが、それで何を?」
「これを四隅に貼っておけば、鬼は寄ってこれないんだよ」
「…ここ井戸ですよ?」
「あ…角ないね……」
井戸によっては四角ものもあるのかもしれないけれど、残念ながらわたし達が今いる井戸はよくある円形のもの。
「いえいえ、待ってください。 えっと、これはどこからどれだけお聞きすればいいのでしょうか?」
こめかみを押さえながら葛ちゃんが訴える。
「何を?」
「なぜいきなり鬼対策なんかしてるんですか?」
「とりあえず四角になるように貼ればいいのかな…」
正方形になっているかはわからないが、四面にお札を貼る。
「おねーさん聞いてます?」
「だってほら今朝葛ちゃん言ってたじゃない、丹塗矢がどうのって。 こんな時に昨日の夜みたいなことがあっても困るし…」
今は尾花ちゃんはいないし、来てくれてもこの狭い中で昨夜のような立ち回りをされてもたいへんだ。
「…なるほど、一応錯乱しているわけではないようですね」
ため息をつきながら葛ちゃんはずいぶんとひどいことを言う。
「ではこの札はどこで手に入れたのですか?」
「え? 烏月さんに貰ったんだよ?」
「いつですかっ!」
なぜだか葛ちゃんは興奮して叫ぶ。
「落ち着いてよ、葛ちゃん。 えっと…夜中に目が覚めて、廊下に出たら烏月さんがいて…」
「それはルートが違いますーっ!」
閑話休題
「さっき葛ちゃんが来る前に貰ったんだよ?」
「あっさり意見を変えてきましたね」
よくわからないけど葛ちゃんは不満そうだ。 狭い所にいるせいなのか、機嫌が悪い。
「鬼を切ることを生業としているって言ってたから、昨夜のことを相談したらこれをくれたの」
「…勝手にシーンを捏造しないでください」
「どうするの? ミカゲ。 あの子結界なんか張ったわよ」
「私達の存在に気づいたのでしょうか」
井戸の傍に立つ小さな二つの影。
「これでは手が出せないわ。 なんとかしなさいな」
「では自ら結界の外に出てきてもらいましょう」
「どうやって?」
そう片方が聞くと、聞かれた影は薄く笑った。
「だいたいおねーさん、『鬼』ってなんですか。 丹塗矢の話は神様の話ですよ? 鬼なんて一言も言ってないですよ?」
機嫌の悪い葛ちゃんはやたらと絡む。 こういう子供らしさを見てるとなんだか嬉しい。
「それはね、葛ちゃん。 烏月さんにお札を貰った時に聞いた話なんだけど、幽霊とかこの世のものではないものを総じて『鬼』って…」
「だからそれはルートが違いますっ!」
その時上の方から声がかかった。
「桂さん、大丈夫かい? 今助ける」
烏月さんの声に続いて蔦が垂らされる。 でもわたしの用意しておいた蔦より細いようにも見える。 とは言え、烏月さんが下ろしてくれたのだから大丈夫だろう。
「烏月さん、ありがとうっ」
「ちょっと待ってください、おねーさん」
蔦を掴んだわたしの手を葛ちゃんが掴む。
「うん。 まずは葛ちゃん昇って。 わたしは後でいいよ」
「順番の話じゃありませんっ! おかしくないですか? どうして千羽さんはおねーさんの名前を呼ぶんですか? この場合わたしの名前を呼ぶんではないですか?」
「さすがわたしの好きになった人…」
「…おねーさん、やはり錯乱してますか?」
「そんなことは置いておいて、とにかくまずは出ようよ。 ね?」
こんな所で押し問答していてもしょうがない。 狭い所から出れれば葛ちゃんも落ち着くかもしれないし。
葛ちゃんはまだ言い足りなそうだったが、わたしの言う通り蔦を掴み壁に足をかける。
ふつっ
とさっと葛ちゃんが倒れ、その上に蔦が落ちてくる。
「…」
「…」
「姉さま、切れました」
「見ればわかるわよっ。 あ、あの子供が重かったのよっ」
「ですが姉さま。 あの子供は贄の血の娘よりは軽いと思いますが」
淡々と不満そうに喋る影に、もう一つの影は少しうろたえながら叫ぶ。
「もっと太いのを垂らせばよいのでしょうっ? だいたい鬼の私に重さなんてわかるわけないのよっ!」
仕方なしに手近にあった太い蔦に手を伸ばすと、その手を引っかかれる。
「つっ!」
そこには白い子狐が立っていて、影を威嚇していた。 それを見た二つの影に緊張が走る。
「ミカゲっ」
呼ばれた影が素早く寄り添ってくる。 二つの影と子狐は距離を保ち、その間に緊張が高まっていく。
「…切れちゃったね」
烏月さんらしくない、とは思うものの、さっき持った時点で切れるような気もした。
「大丈夫、葛ちゃん?」
倒れたまま起き上がらない葛ちゃんに声をかける。 どこか打ったのだろうか?
すると、ゆっくりと葛ちゃんが起き上がり、ぼんやりとした様子で喋りだした。
「おねーさんはコドクを知ってますか?」
「葛ちゃんっ、それはここを出てからだよっ」
「どうして都合よく素に戻るんですかっ!」
「このっ!」
影の声とともに暗闇に赤い光が線となって駆ける。 しかし子狐は地面を蹴って赤い光を散らす。
「くすくすくす」
その様子を見ていたもう一つの影が嬉しそうに笑う。
「姉さま、どうやら封じは解かれていません」
「あら、そうなの。 それなら何も心配ないわね。 役行者の封じさえ解かれなければ」
「呪の根源たる言霊を封じられていては…」
「主さまの向こうを張る、あの恐ろしい鬼神とはいえ、ただの狐も同然ではなくて?」
「はい」
自分達の優勢を確信したのか、二つの影が落ち着きを取り戻す。 子狐は臨戦態勢のまま二つの影を睨む。
「ならばそろそろ終わりにしましょうかしら」
「はい、姉さま」
二つの影が子狐の方を向いて構える。 その次の瞬間、赤い無数の光が辺りを駆け回る。 しかし、
「させないわっ」
声と共に無数の青い蝶が赤い光を散らす。
「なっ!?」
「昨日の夜助けてもらったお返しです」
どこからか現れた青い着物姿の少女が子狐の傍らに立ち、子狐に向かって語りかける。 そして二つの影に向き直り、宣言するかのように高らかと言い放つ。
「桂ちゃんには指一本触れさせないわっ」
「わたし、葛ちゃんには強くなって欲しいよ」
目をそらしたらきっと通じない。 だからわたしはじっと葛ちゃんの瞳を見つめる。
だけど、脆すぎるわたしの涙腺は視界を眩ませる。 溢れる涙が零れたのが先かどうなのか。
「……わかりました」
「え?」
「とりあえずわたしは、ひとりのところに戻ります。 わたしひとりしかいない若杉を継いで、強くなります」
なぜかさっぱりしたような明るい表情で葛ちゃんははっきりと宣言する。
「それはもう、メチャクチャ強くなりますよ?」
♪ほしのひかーりーはー
「ちょっと待ちなさいなっ、あなた達っ!」
「何かな?」
「もうEDテーマも流れてますよ?」
二人で歌い始めたら、見たことの無い着物姿の女の子が息を切らしながら突然現れ叫ぶ。
「まだ井戸からも出てないし、かなりはしょっているし、そもそもそのEDだったら歌は流れないでしょうっ!」
「ちょっと落ち着いてよ、ノゾミちゃん」
「まだ名乗ってもいないわよっ!」
するとそこに井戸の上から声がかかる。
「姉さまっ、私ひとりではさすがにっ…」
「もうちょっとがんばりなさいなっ。 私は情けない子は嫌いよっ」
どうやらこの子はお姉ちゃんらしい。 でも妹さんが助けを求めてるんだから助けてあげた方がいいと思うのです。
「ノゾミちゃん、行ってあげたら?」
「だからあなたはなんで私の名前を知っているのっ!」
「えっと…今おねーさんは錯乱しているようですので…」
葛ちゃんがフォローになってないフォローを入れる。
「姉さまっ!」
「わかったわよっ、今行くわっ!」
そう言って女の子はふっといなくなる。
「つ、つ、葛ちゃんっ。 き、消えたよっ、ゆ、幽霊っ!?」
「すいませんけどおねーさん、これ以上付き合いきれません」
嫌なものを見るような目で葛ちゃんはわたしを見ながら深いため息をつく。 どうやら本格的に機嫌が悪いらしい。
「くっ。 これはどうしたらいいかしら、ミカゲ」
「ここは一旦引くしかないかと」
青い着物姿の少女が現れたことで優位だったはずの立場が崩れた。 少しずつ押されてきている。
「あなた達覚えていなさいっ」
くやしそうな顔を浮かべながら二つの影は闇へと消える。
「…行ったようね」
辺りの様子を伺い、青い着物姿の少女が一息つく。 そして井戸の方を向く。
「どうしましょう。 わたしの力ではあそこから出してあげることはできないし…それに結界も張ってあるし…」
そう呟き子狐を見る。
「あなたも無理ですね…」
子狐はすまなそうに耳を垂れる。
「そうだわ」
井戸の上から再び蔦が垂らされてきた。 結構太い。 これなら大丈夫だろうか。
「ありがとうっ、烏月さんっ」
「…この期に及んで桂おねーさんはあれを千羽さんだと思っているんですね」
「え? 違うの?」
「いえ、なんかもうどーでもいいです」
ご機嫌斜めの葛ちゃんは絡むを通り越して流すになったらしい。 なんだか葛ちゃんとの距離が開いたようで少し悲しい。
でも今はそれどころではない。 ここを出ることの方が大切だ。
「とにかく出ようか」
「…わかりました」
太い蔦を掴み葛ちゃんが壁に足をかける。
ふつっ
とさっと葛ちゃんが倒れ、その上に太い蔦が落ちてくる。
「…」
「…」
「あらあら、駄目だったようね。 仕方ないわ。 サクヤさんを呼んできますから、それまでお願いします」
子狐に一言言うと、青い着物姿の少女の姿が消える。 その言葉に応えるように子狐は小さく頷いた。
「大丈夫、葛ちゃん?」
倒れたまま起き上がらない葛ちゃんに声をかける。 どこか打ったのだろうか?
すると、ゆっくりと蔦にまみれた葛ちゃんが起き上がり、心底うんざりした様子で喋りだした。
「おねーさんはコドクを知ってますか?」
「……ひとりで取り残されること?」
「どうして続けるんですかーっ!」
「なんで怒るのーっ?」
夜の闇の中、息も切らさず全力でサクヤは走る。 ただ一点を目指して。
やがて少し開けた場所へたどり着く。 月明かりと闇に照らされて青紫色に染まったリボンがひらひらと舞っている。
そしてその側には生い茂った草に隠されるように井戸があった。
「桂っ!?」
サクヤは井戸へと駆け寄り覗き込みながら叫ぶ。
けれど、目に入ってきたのは寄り添って横たわる二人の少女の姿であった。
「あたしは…また、間に合わなかったって言うのかいっ…」
がっくりと肩を落とし、俯くサクヤの目に光るものが浮かぶ。
「…サクヤさん、二人とも寝ているだけよ?」
傍らに立つ青い着物姿の少女は呆れたように呟いた。
井戸の底では少女達の安らかな寝息が響いていた。 桂は葛を抱き、葛は桂にしがみついて。
「むにゃ……葛ちゃん、見ーつけたっ…」
「…それは………もっと…後です…」
それはとても幸せそうな寝顔であった。
(終)
註・主観・客観入り乱れ。 読みにくくてすみません。
「お願い、葛ちゃん止まって!」
あれはわたしがつけた危険信号。 危ないから停まれのサイン。
だけどわたしの願いもむなしく、結局は二人とも枯れ井戸の中へと落ちてしまった。
「上まで目算五メートルってところでしょーか。 おねーさんの肩にわたしが立っても、全然高さが足りないですよ」
眩しそうに遥か彼方に浮かぶ月を睨みながら葛ちゃんが言う。
「じゃあ出ようか」
「出ようかって、そんな簡単に…」
「うふふ、これなーんだ?」
わたしは壁沿いに垂れ下がっていた蔦葛を手にとり、それが井戸の縁の向こうへと結びついているのをアピールして…、
ふつっ
引っ張った瞬間抵抗が無くなり、蔦が引っ張られるまま落ちてくる。
「…」
「…蔦ですね」
何度も引っ張って試したのに…。 リボンといいこの蔦といい、備えあっても憂いありとは情けなくって泣きたくなる。
「お腹が減ってるところ、あんなにがんばったのに…」
「おねーさんまだお腹空いてるんですか?」
「違うよっ。 こんな時のために昨日のお昼に対処してあったのに…ってことでっ」
葛ちゃんは少し小首を傾げると、思い出したかのように頷く。
「なるほど。 おねーさんは昨日のお昼頃森で迷っていた時にこの井戸を見つけ、落ちないようにリボンを、落ちた時のためにこの蔦を垂らしておいた、と」
「うん…」
「それで結果は見ての通りなわけですね」
なんとなくいまだわたしが掴んでいた蔦を見て、葛ちゃんは肩を落とす。 そんな葛ちゃんの様子を見てわたしは少し冷静さを取り戻す。
いけない、ここはお姉さんとして葛ちゃんを安心させてあげないと。
「だ、大丈夫。 まだこれがあるよっ」
そう言ってわたしは切り札を葛ちゃんの目の前に差し出す。
「札…のように見えますが、それで何を?」
「これを四隅に貼っておけば、鬼は寄ってこれないんだよ」
「…ここ井戸ですよ?」
「あ…角ないね……」
井戸によっては四角ものもあるのかもしれないけれど、残念ながらわたし達が今いる井戸はよくある円形のもの。
「いえいえ、待ってください。 えっと、これはどこからどれだけお聞きすればいいのでしょうか?」
こめかみを押さえながら葛ちゃんが訴える。
「何を?」
「なぜいきなり鬼対策なんかしてるんですか?」
「とりあえず四角になるように貼ればいいのかな…」
正方形になっているかはわからないが、四面にお札を貼る。
「おねーさん聞いてます?」
「だってほら今朝葛ちゃん言ってたじゃない、丹塗矢がどうのって。 こんな時に昨日の夜みたいなことがあっても困るし…」
今は尾花ちゃんはいないし、来てくれてもこの狭い中で昨夜のような立ち回りをされてもたいへんだ。
「…なるほど、一応錯乱しているわけではないようですね」
ため息をつきながら葛ちゃんはずいぶんとひどいことを言う。
「ではこの札はどこで手に入れたのですか?」
「え? 烏月さんに貰ったんだよ?」
「いつですかっ!」
なぜだか葛ちゃんは興奮して叫ぶ。
「落ち着いてよ、葛ちゃん。 えっと…夜中に目が覚めて、廊下に出たら烏月さんがいて…」
「それはルートが違いますーっ!」
閑話休題
「さっき葛ちゃんが来る前に貰ったんだよ?」
「あっさり意見を変えてきましたね」
よくわからないけど葛ちゃんは不満そうだ。 狭い所にいるせいなのか、機嫌が悪い。
「鬼を切ることを生業としているって言ってたから、昨夜のことを相談したらこれをくれたの」
「…勝手にシーンを捏造しないでください」
「どうするの? ミカゲ。 あの子結界なんか張ったわよ」
「私達の存在に気づいたのでしょうか」
井戸の傍に立つ小さな二つの影。
「これでは手が出せないわ。 なんとかしなさいな」
「では自ら結界の外に出てきてもらいましょう」
「どうやって?」
そう片方が聞くと、聞かれた影は薄く笑った。
「だいたいおねーさん、『鬼』ってなんですか。 丹塗矢の話は神様の話ですよ? 鬼なんて一言も言ってないですよ?」
機嫌の悪い葛ちゃんはやたらと絡む。 こういう子供らしさを見てるとなんだか嬉しい。
「それはね、葛ちゃん。 烏月さんにお札を貰った時に聞いた話なんだけど、幽霊とかこの世のものではないものを総じて『鬼』って…」
「だからそれはルートが違いますっ!」
その時上の方から声がかかった。
「桂さん、大丈夫かい? 今助ける」
烏月さんの声に続いて蔦が垂らされる。 でもわたしの用意しておいた蔦より細いようにも見える。 とは言え、烏月さんが下ろしてくれたのだから大丈夫だろう。
「烏月さん、ありがとうっ」
「ちょっと待ってください、おねーさん」
蔦を掴んだわたしの手を葛ちゃんが掴む。
「うん。 まずは葛ちゃん昇って。 わたしは後でいいよ」
「順番の話じゃありませんっ! おかしくないですか? どうして千羽さんはおねーさんの名前を呼ぶんですか? この場合わたしの名前を呼ぶんではないですか?」
「さすがわたしの好きになった人…」
「…おねーさん、やはり錯乱してますか?」
「そんなことは置いておいて、とにかくまずは出ようよ。 ね?」
こんな所で押し問答していてもしょうがない。 狭い所から出れれば葛ちゃんも落ち着くかもしれないし。
葛ちゃんはまだ言い足りなそうだったが、わたしの言う通り蔦を掴み壁に足をかける。
ふつっ
とさっと葛ちゃんが倒れ、その上に蔦が落ちてくる。
「…」
「…」
「姉さま、切れました」
「見ればわかるわよっ。 あ、あの子供が重かったのよっ」
「ですが姉さま。 あの子供は贄の血の娘よりは軽いと思いますが」
淡々と不満そうに喋る影に、もう一つの影は少しうろたえながら叫ぶ。
「もっと太いのを垂らせばよいのでしょうっ? だいたい鬼の私に重さなんてわかるわけないのよっ!」
仕方なしに手近にあった太い蔦に手を伸ばすと、その手を引っかかれる。
「つっ!」
そこには白い子狐が立っていて、影を威嚇していた。 それを見た二つの影に緊張が走る。
「ミカゲっ」
呼ばれた影が素早く寄り添ってくる。 二つの影と子狐は距離を保ち、その間に緊張が高まっていく。
「…切れちゃったね」
烏月さんらしくない、とは思うものの、さっき持った時点で切れるような気もした。
「大丈夫、葛ちゃん?」
倒れたまま起き上がらない葛ちゃんに声をかける。 どこか打ったのだろうか?
すると、ゆっくりと葛ちゃんが起き上がり、ぼんやりとした様子で喋りだした。
「おねーさんはコドクを知ってますか?」
「葛ちゃんっ、それはここを出てからだよっ」
「どうして都合よく素に戻るんですかっ!」
「このっ!」
影の声とともに暗闇に赤い光が線となって駆ける。 しかし子狐は地面を蹴って赤い光を散らす。
「くすくすくす」
その様子を見ていたもう一つの影が嬉しそうに笑う。
「姉さま、どうやら封じは解かれていません」
「あら、そうなの。 それなら何も心配ないわね。 役行者の封じさえ解かれなければ」
「呪の根源たる言霊を封じられていては…」
「主さまの向こうを張る、あの恐ろしい鬼神とはいえ、ただの狐も同然ではなくて?」
「はい」
自分達の優勢を確信したのか、二つの影が落ち着きを取り戻す。 子狐は臨戦態勢のまま二つの影を睨む。
「ならばそろそろ終わりにしましょうかしら」
「はい、姉さま」
二つの影が子狐の方を向いて構える。 その次の瞬間、赤い無数の光が辺りを駆け回る。 しかし、
「させないわっ」
声と共に無数の青い蝶が赤い光を散らす。
「なっ!?」
「昨日の夜助けてもらったお返しです」
どこからか現れた青い着物姿の少女が子狐の傍らに立ち、子狐に向かって語りかける。 そして二つの影に向き直り、宣言するかのように高らかと言い放つ。
「桂ちゃんには指一本触れさせないわっ」
「わたし、葛ちゃんには強くなって欲しいよ」
目をそらしたらきっと通じない。 だからわたしはじっと葛ちゃんの瞳を見つめる。
だけど、脆すぎるわたしの涙腺は視界を眩ませる。 溢れる涙が零れたのが先かどうなのか。
「……わかりました」
「え?」
「とりあえずわたしは、ひとりのところに戻ります。 わたしひとりしかいない若杉を継いで、強くなります」
なぜかさっぱりしたような明るい表情で葛ちゃんははっきりと宣言する。
「それはもう、メチャクチャ強くなりますよ?」
♪ほしのひかーりーはー
「ちょっと待ちなさいなっ、あなた達っ!」
「何かな?」
「もうEDテーマも流れてますよ?」
二人で歌い始めたら、見たことの無い着物姿の女の子が息を切らしながら突然現れ叫ぶ。
「まだ井戸からも出てないし、かなりはしょっているし、そもそもそのEDだったら歌は流れないでしょうっ!」
「ちょっと落ち着いてよ、ノゾミちゃん」
「まだ名乗ってもいないわよっ!」
するとそこに井戸の上から声がかかる。
「姉さまっ、私ひとりではさすがにっ…」
「もうちょっとがんばりなさいなっ。 私は情けない子は嫌いよっ」
どうやらこの子はお姉ちゃんらしい。 でも妹さんが助けを求めてるんだから助けてあげた方がいいと思うのです。
「ノゾミちゃん、行ってあげたら?」
「だからあなたはなんで私の名前を知っているのっ!」
「えっと…今おねーさんは錯乱しているようですので…」
葛ちゃんがフォローになってないフォローを入れる。
「姉さまっ!」
「わかったわよっ、今行くわっ!」
そう言って女の子はふっといなくなる。
「つ、つ、葛ちゃんっ。 き、消えたよっ、ゆ、幽霊っ!?」
「すいませんけどおねーさん、これ以上付き合いきれません」
嫌なものを見るような目で葛ちゃんはわたしを見ながら深いため息をつく。 どうやら本格的に機嫌が悪いらしい。
「くっ。 これはどうしたらいいかしら、ミカゲ」
「ここは一旦引くしかないかと」
青い着物姿の少女が現れたことで優位だったはずの立場が崩れた。 少しずつ押されてきている。
「あなた達覚えていなさいっ」
くやしそうな顔を浮かべながら二つの影は闇へと消える。
「…行ったようね」
辺りの様子を伺い、青い着物姿の少女が一息つく。 そして井戸の方を向く。
「どうしましょう。 わたしの力ではあそこから出してあげることはできないし…それに結界も張ってあるし…」
そう呟き子狐を見る。
「あなたも無理ですね…」
子狐はすまなそうに耳を垂れる。
「そうだわ」
井戸の上から再び蔦が垂らされてきた。 結構太い。 これなら大丈夫だろうか。
「ありがとうっ、烏月さんっ」
「…この期に及んで桂おねーさんはあれを千羽さんだと思っているんですね」
「え? 違うの?」
「いえ、なんかもうどーでもいいです」
ご機嫌斜めの葛ちゃんは絡むを通り越して流すになったらしい。 なんだか葛ちゃんとの距離が開いたようで少し悲しい。
でも今はそれどころではない。 ここを出ることの方が大切だ。
「とにかく出ようか」
「…わかりました」
太い蔦を掴み葛ちゃんが壁に足をかける。
ふつっ
とさっと葛ちゃんが倒れ、その上に太い蔦が落ちてくる。
「…」
「…」
「あらあら、駄目だったようね。 仕方ないわ。 サクヤさんを呼んできますから、それまでお願いします」
子狐に一言言うと、青い着物姿の少女の姿が消える。 その言葉に応えるように子狐は小さく頷いた。
「大丈夫、葛ちゃん?」
倒れたまま起き上がらない葛ちゃんに声をかける。 どこか打ったのだろうか?
すると、ゆっくりと蔦にまみれた葛ちゃんが起き上がり、心底うんざりした様子で喋りだした。
「おねーさんはコドクを知ってますか?」
「……ひとりで取り残されること?」
「どうして続けるんですかーっ!」
「なんで怒るのーっ?」
夜の闇の中、息も切らさず全力でサクヤは走る。 ただ一点を目指して。
やがて少し開けた場所へたどり着く。 月明かりと闇に照らされて青紫色に染まったリボンがひらひらと舞っている。
そしてその側には生い茂った草に隠されるように井戸があった。
「桂っ!?」
サクヤは井戸へと駆け寄り覗き込みながら叫ぶ。
けれど、目に入ってきたのは寄り添って横たわる二人の少女の姿であった。
「あたしは…また、間に合わなかったって言うのかいっ…」
がっくりと肩を落とし、俯くサクヤの目に光るものが浮かぶ。
「…サクヤさん、二人とも寝ているだけよ?」
傍らに立つ青い着物姿の少女は呆れたように呟いた。
井戸の底では少女達の安らかな寝息が響いていた。 桂は葛を抱き、葛は桂にしがみついて。
「むにゃ……葛ちゃん、見ーつけたっ…」
「…それは………もっと…後です…」
それはとても幸せそうな寝顔であった。
(終)
註・主観・客観入り乱れ。 読みにくくてすみません。
「うわーっ、葛ちゃんかわいーっ♪」
「…」
「わ。 他にもあんなにーっ♪」
「…」
「凄いねー。 よかったね、葛ちゃん」
「あの…、桂おねーさん。 ありがたいんですけれど、こういうのっていいんですか?」
「あまりよろしくないかと思われますが」
「そうなの?」
「そうですようー。 ご迷惑になりますし、何より勝手に話題にするのはいかがなものかと」
「だいたいこういうのは挨拶してから、が筋だろう。 あんたもいいかげん大人になりな、桂」
「うう、以後気をつけます…。 でも恥ずかしいし…」
「恥ずかしいが聞いてあきれるさね。 だったらこれはなんなんだい」
「でもね、今まで再三言ってきたけど、わたし葛ちゃん好きだし…」
「…初耳ですね」
「…どこで言ってるんだい?」
「嬉しいですけど、言ってませんねー」
「あれ? そうだっけ?」
「そんなことどこにも書いてませんようー」
「でもでもっ、やりたい放題好き放題、で三本も話書いてるよ?」
「…でもの意味がわかりませんが」
「みんな似たような話じゃないか」
「ち、違うよーっ。 …違う、よね?」
「…私に聞かれても困りますが」
「だいたい昨日の話って、陽子の話に見えないかい?」
「そんな気もしますねー」
「書き手の技量の問題かと」
「…客観って苦手なんだよ」
「いや、問題はそこじゃないから」
「そこじゃありませんねー」
「確かに違いますね」
「うう、みんなひどいよ…」
「絵を描ける人って凄いよねー」
「おねーさんも描いたじゃないですか」
「…うう、あれはいっそ消したいです…」
「消せばいいじゃないか」
「そう消して解決というのもいさぎよくはないですね。 反省材料は残しておくべきでしょう、自分への戒めに」
「…それはこの記事のことも言ってるのかな?」
「当たり前さね。 反省しなっ」
「『消せばいい』と言っていて言える立場ではないと思いますけどねー」
「そう言えば連日更新ですね」
「んー…。 でも昨日のって、先月には書いてあったし」
「…ではなぜ昨日に?」
「だから、本当は今月の頭くらいにって思ってたんだけど、ちょうどその頃にとある所で葛ちゃんの誕生日って知って…」
「そんな理由でかい?」
「だって、知った時は誕生日でネタなんか浮かばない、って思ったんだよ」
「でも昨日書いてませんでしたか?」
「…烏月さん、ここに書いてないこと言うのやめないかな?」
「でもおねーさん、ファンブック持ってませんでしたっけ?」
「…あまり見てないです…」
「桂は宝の持ち腐れだね」
「出し惜しみはよくないですようー。 いつインできなくなるかわからないんですから」
「別に出し惜しみしてるつもりはないんだけど…」
「まあ、いいさね。 あたしの誕生日は期待してるよ」
「サクヤさんの誕生日は過ぎたよ?」
「私はまだですが」
「それは去年だろう。 今年はこれからだよっ」
「でも葛ちゃん以外書く気はないよ?」
「…桂ちゃん、そんなこと言わないでっ」
「あなたそんなことでいいと思ってるのっ?」
「二人ともどこから出てきたんですか…」
「はとちゃんっ、あたしとの愛は? 積み重ねてきた愛はっ!?」
「また増えましたね」
「え、えーっと………。 じゃあ来年の葛ちゃんの誕生日はちゃんと書くよっ」
「桂っ!」
「桂さんっ!」
「桂ちゃんっ!」
「桂っ!」
「はとちゃんっ!」
「そんなこと言われてもーっ」
「…来年、まだここあるんですかねー」
「フフフ、主様が消してくださいます」
「ほら、来年のことを言うからミカゲちゃんが笑ったよ?」
(終)
註・いろいろな意味ですいません。 ごめんなさい。
「…」
「わ。 他にもあんなにーっ♪」
「…」
「凄いねー。 よかったね、葛ちゃん」
「あの…、桂おねーさん。 ありがたいんですけれど、こういうのっていいんですか?」
「あまりよろしくないかと思われますが」
「そうなの?」
「そうですようー。 ご迷惑になりますし、何より勝手に話題にするのはいかがなものかと」
「だいたいこういうのは挨拶してから、が筋だろう。 あんたもいいかげん大人になりな、桂」
「うう、以後気をつけます…。 でも恥ずかしいし…」
「恥ずかしいが聞いてあきれるさね。 だったらこれはなんなんだい」
「でもね、今まで再三言ってきたけど、わたし葛ちゃん好きだし…」
「…初耳ですね」
「…どこで言ってるんだい?」
「嬉しいですけど、言ってませんねー」
「あれ? そうだっけ?」
「そんなことどこにも書いてませんようー」
「でもでもっ、やりたい放題好き放題、で三本も話書いてるよ?」
「…でもの意味がわかりませんが」
「みんな似たような話じゃないか」
「ち、違うよーっ。 …違う、よね?」
「…私に聞かれても困りますが」
「だいたい昨日の話って、陽子の話に見えないかい?」
「そんな気もしますねー」
「書き手の技量の問題かと」
「…客観って苦手なんだよ」
「いや、問題はそこじゃないから」
「そこじゃありませんねー」
「確かに違いますね」
「うう、みんなひどいよ…」
「絵を描ける人って凄いよねー」
「おねーさんも描いたじゃないですか」
「…うう、あれはいっそ消したいです…」
「消せばいいじゃないか」
「そう消して解決というのもいさぎよくはないですね。 反省材料は残しておくべきでしょう、自分への戒めに」
「…それはこの記事のことも言ってるのかな?」
「当たり前さね。 反省しなっ」
「『消せばいい』と言っていて言える立場ではないと思いますけどねー」
「そう言えば連日更新ですね」
「んー…。 でも昨日のって、先月には書いてあったし」
「…ではなぜ昨日に?」
「だから、本当は今月の頭くらいにって思ってたんだけど、ちょうどその頃にとある所で葛ちゃんの誕生日って知って…」
「そんな理由でかい?」
「だって、知った時は誕生日でネタなんか浮かばない、って思ったんだよ」
「でも昨日書いてませんでしたか?」
「…烏月さん、ここに書いてないこと言うのやめないかな?」
「でもおねーさん、ファンブック持ってませんでしたっけ?」
「…あまり見てないです…」
「桂は宝の持ち腐れだね」
「出し惜しみはよくないですようー。 いつインできなくなるかわからないんですから」
「別に出し惜しみしてるつもりはないんだけど…」
「まあ、いいさね。 あたしの誕生日は期待してるよ」
「サクヤさんの誕生日は過ぎたよ?」
「私はまだですが」
「それは去年だろう。 今年はこれからだよっ」
「でも葛ちゃん以外書く気はないよ?」
「…桂ちゃん、そんなこと言わないでっ」
「あなたそんなことでいいと思ってるのっ?」
「二人ともどこから出てきたんですか…」
「はとちゃんっ、あたしとの愛は? 積み重ねてきた愛はっ!?」
「また増えましたね」
「え、えーっと………。 じゃあ来年の葛ちゃんの誕生日はちゃんと書くよっ」
「桂っ!」
「桂さんっ!」
「桂ちゃんっ!」
「桂っ!」
「はとちゃんっ!」
「そんなこと言われてもーっ」
「…来年、まだここあるんですかねー」
「フフフ、主様が消してくださいます」
「ほら、来年のことを言うからミカゲちゃんが笑ったよ?」
(終)
註・いろいろな意味ですいません。 ごめんなさい。
「陽子ちゃん、おはよう」
「ハロー、はとちゃん。 今日はニュースがあるわよん♪」
「ニュース? どうかしたの?」
予想通りの反応にニヤリと笑みを浮かべるのは、桂のクラスメート、奈良陽子。
「うちのクラスに転校生が来るそうですわ」
と、あっさりネタばらしをしたのが、同じくクラスメートの東郷凛。
「お凛っ! なんでそんな簡単にバラしちゃうのっ!」
「あら、奈良さんのことですから、この後に嘘を吹き込むと思ってましたので。 だから転校生までで止めておいたのですけど?」
「ぐぬぬぬ…」
「へー。 どんな人だろうね?」
言われて教室の中を伺うと、確かに皆一様にいつもよりざわついている。
「それが女装した男って話なのよ」
「ええっ! 陽子ちゃん、それ本当っ!?」
「…」
「…」
「…」
時が止まったかのようなしばしの沈黙。
「く、くくく…あっはっはっはっ。 はとちゃん、あんた本当最高っ」
陽子の隣で凛も苦笑を浮かべている。
「………陽子ちゃん」
「こんな嘘に騙されるなんて、今時はとちゃんしかいないって、あはははっ」
「確かにそうですわね」
「お凛さんまで…」
恨みがましい目で見る桂に、凛が微笑みながらとりなす様に言う。
「羽藤さんが純粋な証拠ですわ」
「いやー、純粋で済ますのはどうかしら?」
そんな話をしている内に予鈴が流れる。
「ま、もうすぐ会えるわよ。 女装男には」
「陽子ちゃんっ」
「あははっ。 ま、楽しみにしましょっ」
やがて担任の教師がやって来て、HRが始まる。
「…今日は、このクラスに…転校生が来る事になりました。 えー…入ってきなさい」
担任の案内で教室に入ってきたのは、女装した男ではもちろんなく、まだ幼い少女だった。 そう、まだあどけなさの残る少女、若杉葛であった。
誰一人として想像すらできなかった転校生に教室がざわめく。
「はい、静かに。 静かにっ。 では自己紹介をしてください」
「はい。 わたくし、若杉葛と申します。 これから皆さんよろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げる。
「特に桂おねーさんはよろしくしてくださいねっ♪」
そう言って、愛らしい満面の笑みを浮かべた。
「あら? 羽藤さんは知り合い? では若杉さんは羽藤さんの隣にした方がいいかしら」
「ありがとうございます♪」
教師の指示に従い、隣の席が空けられる。 葛は教壇から下りるとちょこちょことやって来て座る。
「今後ともよろしくお願いしますね、桂おねーさん」
「えっと、でもどうして?」
「飛び級というやつで」
「うちの学校にそんなのあったっけ?」
「作らせました♪」
笑顔であっさりと返され、桂の開いた口が塞がらない。
「まあ高校程度の学業なら実際できますし。 問題としては体育くらいでしょう」
「…高校程度」
言われて桂は経観塚での葛を思い返す。 なんとなく納得。
そんなこんなの内に休み時間へとなる。
「はとちゃーん、こんな子供と浮気だなんてー。 犯罪だよ、犯罪」
「陽子ちゃんっ」
さっそくやって来た陽子とお凛の2人に、桂は葛を紹介する。
「奈良さんに東郷さんですね。 よろしくお願いします」
「どうぞよろしく。 ところで羽藤さんとはどこでお知り合いに?」
「お凛っ!」
突然の大声に驚き、3人とも陽子を見る。
「なんですの? 奈良さん」
「こんな子供が転校してきて、最初に聞くことがそれってどーいうことだっ!」
「はあ。 では何を聞けばよろしいですの?」
「なんで転校してきたか、に決まってるでしょっ」
「…」
「…」
「…」
しばしの沈黙の後、3人同時に口を開く。
「わたしに会いに来たんじゃないかな」
「桂おねーさんに会うために来ました」
「羽藤さんに会いに来たのではないかしら」
こぼれた言葉はほぼ皆同じ内容であった。
「お凛さん、なんでわかるの!?」
「いや、はとちゃん。 そうじゃなくて…」
「それはですね。 今日来たばかりのおかしな転校生と仲のいい素振りで、かつその転校生の様子を見ていれば、自ずと答えは出てくるわけですよ」
「そういうことですわね」
「そうなの?」
桂の疑問には答えず、葛は凛の方に向き直り言う。
「質問にお答えすると、しばらく前に桂おねーさんのご実家にやっかいになっていた縁でして」
「む!? はとちゃんの実家?」
葛の言葉に凛ではなく陽子が反応する。
「じゃああん時の子供かっ!」
「陽子ちゃん、あの時も名前教えたよ?」
「そんなん覚えてるかーっ」
「力強く言えることではないと思いますわ、奈良さん」
呆れた表情で凛が陽子に諭すように言う。
「と言うことは…奈良さんともお知り合いですの?」
「ううん。 陽子ちゃんには電話で話しただけで、会うのは初めてだよ」
「この子は不法入居者なのよっ」
そう言って陽子は葛を力強く指差す。
「事後承諾ではありますが、許可は得ましたよ。 ですから問題はないと思いますけど」
しれっと答える葛を不満そうに陽子が睨む。
「お話がよくわからないのですけど…」
「あ、お凛さんには話してなかったかも。 あのね、わたしの実家って誰も住んでなかったの。 そこに葛ちゃんが泊まりこんでたんだ」
「そうだったのですか。 でもどうして羽藤さんのご実家にいらしたのですか?」
「それは…」
どう答えていいかわからず桂が葛を見る。
「その時わたしは行く当てもなく旅をしていたのですが、疲れ果てた所に桂おねーさんのご実家に辿り着きまして、これ幸いと宿を借りていたわけです」
「旅って、一人で?」
「いえ、友達と一緒でしたよ」
さらっと答える葛に桂は複雑な表情を浮かべる。
「羽藤さん、どうかしましたか?」
「あ、ううん。 なんでもないなんでもない」
ぱたぱたと桂は両手を振る。
「まあそういうわけで桂おねーさんとはお知り合いになったわけです」
「そうでしたの」
「で、あんた幾つなの?」
「そうですね…皆さんより年下ですね」
「…で、幾つなの?」
苛立った表情で陽子ちゃんが繰り返し尋ねる。
「秘密です」
「なにおーっ!?」
「と言うよりも言っても意味ないと思われますが? 幾つであろうと奈良さんはご不満のようですし」
「ぐぬぬぬ…」
先の展開を見越されて、陽子はくやしそうに歯噛みする。
「若杉さんの仰るとおりですわね。 奈良さんも年上なのですし、それらしく振舞う方がよろしいかと」
「お凛っ。 あんたこの子の味方なのっ?」
「もー、陽子ちゃんてばー。 葛ちゃんの何が気に入らないの?」
「ぐあっ。 はとちゃんまで…。 あたし達が今まで築いてきた絆は? 育ててきた愛は?」
「奈良さんは楽しい人ですねえ」
「まあ楽しいのは最初だけですけれど。 さすがに毎日見ると疲れてきますわね」
「あんたらねえ…」
休み時間が終わり授業が始まる。
やって来る各教科の教師達は知っていたらしく動揺は見せない。 淡々といつも通りな授業風景。 時折、葛を試す様子もあったが、自分で言っていた通り高校の学力は持っているらしく、事もなし。
かくして昼休みにとなる。
「あれ? …はとちゃん、お弁当なんだ……その、どうして?」
カバンから弁当を出す桂を見て陽子がためらいながらも聞く。 桂は少し前に母を亡くしたため、当然の疑問か。
「あ、これ? これは昨日サクヤさんが来てて、作ってくれたんだ」
「サクヤさんとはどちらの方でしょうか?」
「お母さんの親友で、わたしが小さい頃からのお付き合いの人だよ」
「ほほう、サクヤさんのお弁当ですか。 それは美味しそうですねー」
「あれ? 葛ちゃんはお弁当じゃないんだ?」
桂が葛の方を見ると、葛の前には袋に入ったパンが3つ4つ。
「もしかして…葛ちゃん、まだあんな食事してるの?」
「あんな食事?」
「…なんだか蚊帳の外な気分がするんだけど」
「たはは…身に付いた習性はなかなか変えることは出来ないものでして…」
肩をすくめて申し訳無さそうな表情を葛は浮かべる。
「サクヤさんも言ってたじゃない。 よくないよ、葛ちゃん。 …しょうがないなー、わたしのお弁当分けてあげるね」
「あら。 そのサクヤさんと若杉さんはお知り合いなのですか?」
「あ、うん。 その実家にいた時に」
「いえいえ、それには及びませんよ。 桂おねーさんはお気になさらずお食べください」
「ダメだよ、葛ちゃん。 ね、お願い。 一緒に食べよ?」
そう言って桂は椅子を動かして葛に寄せ、二人の真ん中に弁当を置く。
「桂おねーさん…」
「ふふ、仲がよろしいのですわね」
「…」
その様子を陽子が不機嫌そうに見つめる。
「あ、でもお箸が一膳しかないよ、どうしようか?」
「では食堂にでも行っていただいてきますね」
「陽子ちゃん達を待たせちゃうから…あ、なら、葛ちゃんが嫌じゃなかったら、わたしが食べさせてあげるよ」
「嫌っ!」
陽子が力強く口を挟む。
「…なんで陽子ちゃんが言うのかな?」
「奈良さん、大人気ないですわよ」
「ううーっ、大人気があろうがなかろうが嫌なもんは嫌っ! ダメよ、はとちゃんっ。 そんないやらしいっ」
「どうして?」
「間接キスじゃないっ。 ダメダメっ、絶対ダメっ!」
大げさに手を振るジェスチャー付きで陽子が力説する。 その様子を桂と葛は呆気に取られた顔で、凛はため息混じりに見つめる。
「でもわたし、よく陽子ちゃんから飲み物貰ったりしてるよ? あれはいいの?」
「あたしはいいのっ」
「奈良さん、いい加減にしたらどうですか? みっともないですわよ」
「…えっと、時間が勿体無いので箸をいただいてきますね。 わたしに構わず、お先にいただいててください」
そう言って葛は教室を出て行く。
「あ、葛ちゃんっ」
「…奈良さん」
「だって。 …だって、嫌なんだもん……」
「陽子ちゃんひどいよ。 葛ちゃん、かわいそう…」
「…うう、はとちゃんこそひどいよ」
口を尖らせて不満そうな声を陽子が漏らす。
「奈良さんにも困りましたね…」
「陽子ちゃん、仲良くしてよ。 …葛ちゃんはいろいろたいへんなんだよ?」
「何がよ」
「葛ちゃんは若杉グループの後継ぎで…あれ? 今は違うのかな?」
「先日、正式に会長に就任していますわね」
よくわからなくなって頭を抱える桂に凛が助け舟を出すかのように言葉を繋ぐ。
「なんでお凛が知ってるの」
「結構なニュースになりましたから。 奈良さんも少しは新聞やニュースをご覧になった方がよろしいですわ」
「若杉グループって何なのよ」
「あの若杉ですわ」
「あの若杉って………え? 銀行とかなんとかの? あの?」
「そうだよ、陽子ちゃん。 凄いよね、お嬢さまなんだよ」
「…お嬢の何がたいへんなのよ。 変わって欲しいくらいよ」
ふてくされた顔のまま二人から視線を逸らし陽子は言う。
「でも葛ちゃんお父さんもお母さんもいないから…」
「…」
「でなければあのように幼くして会長に就任されることも無いでしょう」
「…」
理解はできたが感情が納得しない。 言葉を出すことなく俯き黙る陽子。
「仲良くして。 ね? 陽子ちゃん」
「…」
「『子供』と呼んでらっしゃったではないですか。 あなたが大人なのでしょう? どっちが大人かわかりませんわよ?」
「…わかったわよ」
ようやく顔を上げ呟くように応える。 そして桂を見つめ陽子が問う。
「はとちゃん。 あの子のこと…好き?」
「うん、好きだよ」
「あたしは?」
「好きだよ?」
「…そっか」
ふう、と大きく息をつく。 そして首を振っていつもの表情に戻って陽子が言う。
「そだねっ。 年上なんだからお姉さまとして振舞わなくっちゃねっ!」
「うんっ」
「手のかかる方ですわね」
「なんか言った? お凛」
「いえ。 別に何も」
すると、教室の入り口に小さな姿が帰ってくる。
「ただいま戻りましたー。 …あれ? 皆さん召し上がってらっしゃらなかったので?」
「うん。 やっぱりみんなで食べた方がおいしいよ」
「そうですわね」
「ほら時間無くなっちゃうから、さっさと座りな、子供」
雨は降らねど地固まる、か。 新たに増えた友との絆はこれから紡ぐもの。 一風変わった転校生との時間は始まったばかり。
「ほれ。 特別にあたしのピーマンもくれてやろう」
「…陽子ちゃん。 それ嫌いなだけじゃ…」
「本当困った方ですわね…」
歓迎されるかされざるか、いろいろな出来事を経て時間が答えを出すであろう。 どちらにせよ選んだのは葛自身である。
「では奈良さんにはお礼にジャムパンのジャムを差し上げましょうー」
「いるかーっ!」
「若杉さんの方が一枚上手ですわね」
「もー、二人とも仲良くしてってば」
だから葛は、自分が選んだ道を正しいと思えるように、全てに立ち向かうことに決めたあの日のために、
やりたい放題好き放題。
(終)
「ハロー、はとちゃん。 今日はニュースがあるわよん♪」
「ニュース? どうかしたの?」
予想通りの反応にニヤリと笑みを浮かべるのは、桂のクラスメート、奈良陽子。
「うちのクラスに転校生が来るそうですわ」
と、あっさりネタばらしをしたのが、同じくクラスメートの東郷凛。
「お凛っ! なんでそんな簡単にバラしちゃうのっ!」
「あら、奈良さんのことですから、この後に嘘を吹き込むと思ってましたので。 だから転校生までで止めておいたのですけど?」
「ぐぬぬぬ…」
「へー。 どんな人だろうね?」
言われて教室の中を伺うと、確かに皆一様にいつもよりざわついている。
「それが女装した男って話なのよ」
「ええっ! 陽子ちゃん、それ本当っ!?」
「…」
「…」
「…」
時が止まったかのようなしばしの沈黙。
「く、くくく…あっはっはっはっ。 はとちゃん、あんた本当最高っ」
陽子の隣で凛も苦笑を浮かべている。
「………陽子ちゃん」
「こんな嘘に騙されるなんて、今時はとちゃんしかいないって、あはははっ」
「確かにそうですわね」
「お凛さんまで…」
恨みがましい目で見る桂に、凛が微笑みながらとりなす様に言う。
「羽藤さんが純粋な証拠ですわ」
「いやー、純粋で済ますのはどうかしら?」
そんな話をしている内に予鈴が流れる。
「ま、もうすぐ会えるわよ。 女装男には」
「陽子ちゃんっ」
「あははっ。 ま、楽しみにしましょっ」
やがて担任の教師がやって来て、HRが始まる。
「…今日は、このクラスに…転校生が来る事になりました。 えー…入ってきなさい」
担任の案内で教室に入ってきたのは、女装した男ではもちろんなく、まだ幼い少女だった。 そう、まだあどけなさの残る少女、若杉葛であった。
誰一人として想像すらできなかった転校生に教室がざわめく。
「はい、静かに。 静かにっ。 では自己紹介をしてください」
「はい。 わたくし、若杉葛と申します。 これから皆さんよろしくお願いします」
ぺこっと頭を下げる。
「特に桂おねーさんはよろしくしてくださいねっ♪」
そう言って、愛らしい満面の笑みを浮かべた。
「あら? 羽藤さんは知り合い? では若杉さんは羽藤さんの隣にした方がいいかしら」
「ありがとうございます♪」
教師の指示に従い、隣の席が空けられる。 葛は教壇から下りるとちょこちょことやって来て座る。
「今後ともよろしくお願いしますね、桂おねーさん」
「えっと、でもどうして?」
「飛び級というやつで」
「うちの学校にそんなのあったっけ?」
「作らせました♪」
笑顔であっさりと返され、桂の開いた口が塞がらない。
「まあ高校程度の学業なら実際できますし。 問題としては体育くらいでしょう」
「…高校程度」
言われて桂は経観塚での葛を思い返す。 なんとなく納得。
そんなこんなの内に休み時間へとなる。
「はとちゃーん、こんな子供と浮気だなんてー。 犯罪だよ、犯罪」
「陽子ちゃんっ」
さっそくやって来た陽子とお凛の2人に、桂は葛を紹介する。
「奈良さんに東郷さんですね。 よろしくお願いします」
「どうぞよろしく。 ところで羽藤さんとはどこでお知り合いに?」
「お凛っ!」
突然の大声に驚き、3人とも陽子を見る。
「なんですの? 奈良さん」
「こんな子供が転校してきて、最初に聞くことがそれってどーいうことだっ!」
「はあ。 では何を聞けばよろしいですの?」
「なんで転校してきたか、に決まってるでしょっ」
「…」
「…」
「…」
しばしの沈黙の後、3人同時に口を開く。
「わたしに会いに来たんじゃないかな」
「桂おねーさんに会うために来ました」
「羽藤さんに会いに来たのではないかしら」
こぼれた言葉はほぼ皆同じ内容であった。
「お凛さん、なんでわかるの!?」
「いや、はとちゃん。 そうじゃなくて…」
「それはですね。 今日来たばかりのおかしな転校生と仲のいい素振りで、かつその転校生の様子を見ていれば、自ずと答えは出てくるわけですよ」
「そういうことですわね」
「そうなの?」
桂の疑問には答えず、葛は凛の方に向き直り言う。
「質問にお答えすると、しばらく前に桂おねーさんのご実家にやっかいになっていた縁でして」
「む!? はとちゃんの実家?」
葛の言葉に凛ではなく陽子が反応する。
「じゃああん時の子供かっ!」
「陽子ちゃん、あの時も名前教えたよ?」
「そんなん覚えてるかーっ」
「力強く言えることではないと思いますわ、奈良さん」
呆れた表情で凛が陽子に諭すように言う。
「と言うことは…奈良さんともお知り合いですの?」
「ううん。 陽子ちゃんには電話で話しただけで、会うのは初めてだよ」
「この子は不法入居者なのよっ」
そう言って陽子は葛を力強く指差す。
「事後承諾ではありますが、許可は得ましたよ。 ですから問題はないと思いますけど」
しれっと答える葛を不満そうに陽子が睨む。
「お話がよくわからないのですけど…」
「あ、お凛さんには話してなかったかも。 あのね、わたしの実家って誰も住んでなかったの。 そこに葛ちゃんが泊まりこんでたんだ」
「そうだったのですか。 でもどうして羽藤さんのご実家にいらしたのですか?」
「それは…」
どう答えていいかわからず桂が葛を見る。
「その時わたしは行く当てもなく旅をしていたのですが、疲れ果てた所に桂おねーさんのご実家に辿り着きまして、これ幸いと宿を借りていたわけです」
「旅って、一人で?」
「いえ、友達と一緒でしたよ」
さらっと答える葛に桂は複雑な表情を浮かべる。
「羽藤さん、どうかしましたか?」
「あ、ううん。 なんでもないなんでもない」
ぱたぱたと桂は両手を振る。
「まあそういうわけで桂おねーさんとはお知り合いになったわけです」
「そうでしたの」
「で、あんた幾つなの?」
「そうですね…皆さんより年下ですね」
「…で、幾つなの?」
苛立った表情で陽子ちゃんが繰り返し尋ねる。
「秘密です」
「なにおーっ!?」
「と言うよりも言っても意味ないと思われますが? 幾つであろうと奈良さんはご不満のようですし」
「ぐぬぬぬ…」
先の展開を見越されて、陽子はくやしそうに歯噛みする。
「若杉さんの仰るとおりですわね。 奈良さんも年上なのですし、それらしく振舞う方がよろしいかと」
「お凛っ。 あんたこの子の味方なのっ?」
「もー、陽子ちゃんてばー。 葛ちゃんの何が気に入らないの?」
「ぐあっ。 はとちゃんまで…。 あたし達が今まで築いてきた絆は? 育ててきた愛は?」
「奈良さんは楽しい人ですねえ」
「まあ楽しいのは最初だけですけれど。 さすがに毎日見ると疲れてきますわね」
「あんたらねえ…」
休み時間が終わり授業が始まる。
やって来る各教科の教師達は知っていたらしく動揺は見せない。 淡々といつも通りな授業風景。 時折、葛を試す様子もあったが、自分で言っていた通り高校の学力は持っているらしく、事もなし。
かくして昼休みにとなる。
「あれ? …はとちゃん、お弁当なんだ……その、どうして?」
カバンから弁当を出す桂を見て陽子がためらいながらも聞く。 桂は少し前に母を亡くしたため、当然の疑問か。
「あ、これ? これは昨日サクヤさんが来てて、作ってくれたんだ」
「サクヤさんとはどちらの方でしょうか?」
「お母さんの親友で、わたしが小さい頃からのお付き合いの人だよ」
「ほほう、サクヤさんのお弁当ですか。 それは美味しそうですねー」
「あれ? 葛ちゃんはお弁当じゃないんだ?」
桂が葛の方を見ると、葛の前には袋に入ったパンが3つ4つ。
「もしかして…葛ちゃん、まだあんな食事してるの?」
「あんな食事?」
「…なんだか蚊帳の外な気分がするんだけど」
「たはは…身に付いた習性はなかなか変えることは出来ないものでして…」
肩をすくめて申し訳無さそうな表情を葛は浮かべる。
「サクヤさんも言ってたじゃない。 よくないよ、葛ちゃん。 …しょうがないなー、わたしのお弁当分けてあげるね」
「あら。 そのサクヤさんと若杉さんはお知り合いなのですか?」
「あ、うん。 その実家にいた時に」
「いえいえ、それには及びませんよ。 桂おねーさんはお気になさらずお食べください」
「ダメだよ、葛ちゃん。 ね、お願い。 一緒に食べよ?」
そう言って桂は椅子を動かして葛に寄せ、二人の真ん中に弁当を置く。
「桂おねーさん…」
「ふふ、仲がよろしいのですわね」
「…」
その様子を陽子が不機嫌そうに見つめる。
「あ、でもお箸が一膳しかないよ、どうしようか?」
「では食堂にでも行っていただいてきますね」
「陽子ちゃん達を待たせちゃうから…あ、なら、葛ちゃんが嫌じゃなかったら、わたしが食べさせてあげるよ」
「嫌っ!」
陽子が力強く口を挟む。
「…なんで陽子ちゃんが言うのかな?」
「奈良さん、大人気ないですわよ」
「ううーっ、大人気があろうがなかろうが嫌なもんは嫌っ! ダメよ、はとちゃんっ。 そんないやらしいっ」
「どうして?」
「間接キスじゃないっ。 ダメダメっ、絶対ダメっ!」
大げさに手を振るジェスチャー付きで陽子が力説する。 その様子を桂と葛は呆気に取られた顔で、凛はため息混じりに見つめる。
「でもわたし、よく陽子ちゃんから飲み物貰ったりしてるよ? あれはいいの?」
「あたしはいいのっ」
「奈良さん、いい加減にしたらどうですか? みっともないですわよ」
「…えっと、時間が勿体無いので箸をいただいてきますね。 わたしに構わず、お先にいただいててください」
そう言って葛は教室を出て行く。
「あ、葛ちゃんっ」
「…奈良さん」
「だって。 …だって、嫌なんだもん……」
「陽子ちゃんひどいよ。 葛ちゃん、かわいそう…」
「…うう、はとちゃんこそひどいよ」
口を尖らせて不満そうな声を陽子が漏らす。
「奈良さんにも困りましたね…」
「陽子ちゃん、仲良くしてよ。 …葛ちゃんはいろいろたいへんなんだよ?」
「何がよ」
「葛ちゃんは若杉グループの後継ぎで…あれ? 今は違うのかな?」
「先日、正式に会長に就任していますわね」
よくわからなくなって頭を抱える桂に凛が助け舟を出すかのように言葉を繋ぐ。
「なんでお凛が知ってるの」
「結構なニュースになりましたから。 奈良さんも少しは新聞やニュースをご覧になった方がよろしいですわ」
「若杉グループって何なのよ」
「あの若杉ですわ」
「あの若杉って………え? 銀行とかなんとかの? あの?」
「そうだよ、陽子ちゃん。 凄いよね、お嬢さまなんだよ」
「…お嬢の何がたいへんなのよ。 変わって欲しいくらいよ」
ふてくされた顔のまま二人から視線を逸らし陽子は言う。
「でも葛ちゃんお父さんもお母さんもいないから…」
「…」
「でなければあのように幼くして会長に就任されることも無いでしょう」
「…」
理解はできたが感情が納得しない。 言葉を出すことなく俯き黙る陽子。
「仲良くして。 ね? 陽子ちゃん」
「…」
「『子供』と呼んでらっしゃったではないですか。 あなたが大人なのでしょう? どっちが大人かわかりませんわよ?」
「…わかったわよ」
ようやく顔を上げ呟くように応える。 そして桂を見つめ陽子が問う。
「はとちゃん。 あの子のこと…好き?」
「うん、好きだよ」
「あたしは?」
「好きだよ?」
「…そっか」
ふう、と大きく息をつく。 そして首を振っていつもの表情に戻って陽子が言う。
「そだねっ。 年上なんだからお姉さまとして振舞わなくっちゃねっ!」
「うんっ」
「手のかかる方ですわね」
「なんか言った? お凛」
「いえ。 別に何も」
すると、教室の入り口に小さな姿が帰ってくる。
「ただいま戻りましたー。 …あれ? 皆さん召し上がってらっしゃらなかったので?」
「うん。 やっぱりみんなで食べた方がおいしいよ」
「そうですわね」
「ほら時間無くなっちゃうから、さっさと座りな、子供」
雨は降らねど地固まる、か。 新たに増えた友との絆はこれから紡ぐもの。 一風変わった転校生との時間は始まったばかり。
「ほれ。 特別にあたしのピーマンもくれてやろう」
「…陽子ちゃん。 それ嫌いなだけじゃ…」
「本当困った方ですわね…」
歓迎されるかされざるか、いろいろな出来事を経て時間が答えを出すであろう。 どちらにせよ選んだのは葛自身である。
「では奈良さんにはお礼にジャムパンのジャムを差し上げましょうー」
「いるかーっ!」
「若杉さんの方が一枚上手ですわね」
「もー、二人とも仲良くしてってば」
だから葛は、自分が選んだ道を正しいと思えるように、全てに立ち向かうことに決めたあの日のために、
やりたい放題好き放題。
(終)
だけど結局みんなに渡すよりも前にみんなに渡されてしまった。
大切な気持ちを忘れないように。 渡したい気持ちをいつも心に。
そう、思った。
「これはいきなり何だい? 桂さん」
「『渡したい気持ち』の最初に書いた最後の部分。 だけどいろいろ考えてこの部分は消したの」
「なぜだい?」
「あの終わり方の方がいいかな、って思ったのが一番の理由ではあるんだけど…。 他には、13日にアップしたかったからとか」
「ああ、なるほど。 これだと内容的に今日になるね。 でもどうして13日にこだわるんだい?」
「ううん。 こだわっているつもりはないよ? ただ書くと決めた時から前日の話にしようと思っただけで」
「なるほどね」
「あと他の消した理由は、『渡した』って描写を書きたくなかったんだ」
「それは…こういう時節ネタなのにどうしてまた?」
「…。 これ、書き始めとは話が途中で変わっちゃってるんだよ。 だから話を甘い方に持っていきたくなかったんだ」
「そうなのかい? 私は気づかなかったけれど…」
「読んだ人はわかると思うんだけど、書き始めは柚明お姉ちゃんとの甘い話、を考えてたのね」
「…まるで違う話になっているね」
「サクヤさんが出てきたあたりから話が変わってきて、いつの間にかあんな話に…」
「でもこれはこれでいいんじゃないかな。 私も兄に小さいながら捧げてきたしね」
「うん、そうだよねっ」
「いろいろ考えたんだけど…使わなかったなー」
「そうなのかい?」
「うん。 チョコを食べてバレンタインに気づいてチョコのリップでキス、とか」
「それは…なんと言うか…」
「チョコをあーんしてもらって食べさせて、『チョコより甘い時間』、みたいな感じとか」
「ああ…その…うん」
「思いっきり迫られて、手に持ったチョコもわたしも溶けてしまいそうだった、みたいなのとか」
「あ……ああ…確かに、その、今もう…暑い、ね」
「でもありがちで書くのはつまらないんだよね。 読むのは好きなんだけど」
「いや、そこは逃げるべきではないよ、桂さん」
「いっそいつもの感じでコメディ調に、とも考えたんだけど」
「それこそ逃げだよ。 桂さん、ちゃんと正面から向かい合わなくてはっ」
「…烏月さん、どうかした? …その、書いてる人がいるかもしれないから不穏当な表現は控えて欲しいんだけど…」
「せっかく甘い話を書くいい機会に、笑いで逃げるのはいさぎよくはない。 戦いから逃げるだけでは強くはなれないんだよっ」
「でも、結局は甘い話じゃないよ? 渡すのは白花ちゃんになってるし」
「奴め…。 いっそ槐の木ごと私が切ってこようっ」
「烏月さんっ、さっきと言ってること違うよーっ」
「ちなみにわたしはいつもこんな感じでネタを出して、そこから適当に書いてるんだ」
「…あのわずか一行程度の内容から話を作っているのだね」
「そう。 だから今回みたいに途中で話が変わったりするんだよね…。 それとか書けなくなって放置とか…」
「戯言はどうなのかな」
「戯言も変わりはないよ? 身近な所からネタを引っ張ってくる、ってところが違うだけかな?」
「それでよくあれだけ書けるね」
「えへへー」
「…いや褒めたわけではないんだが」
「あれ?」
(終)
大切な気持ちを忘れないように。 渡したい気持ちをいつも心に。
そう、思った。
「これはいきなり何だい? 桂さん」
「『渡したい気持ち』の最初に書いた最後の部分。 だけどいろいろ考えてこの部分は消したの」
「なぜだい?」
「あの終わり方の方がいいかな、って思ったのが一番の理由ではあるんだけど…。 他には、13日にアップしたかったからとか」
「ああ、なるほど。 これだと内容的に今日になるね。 でもどうして13日にこだわるんだい?」
「ううん。 こだわっているつもりはないよ? ただ書くと決めた時から前日の話にしようと思っただけで」
「なるほどね」
「あと他の消した理由は、『渡した』って描写を書きたくなかったんだ」
「それは…こういう時節ネタなのにどうしてまた?」
「…。 これ、書き始めとは話が途中で変わっちゃってるんだよ。 だから話を甘い方に持っていきたくなかったんだ」
「そうなのかい? 私は気づかなかったけれど…」
「読んだ人はわかると思うんだけど、書き始めは柚明お姉ちゃんとの甘い話、を考えてたのね」
「…まるで違う話になっているね」
「サクヤさんが出てきたあたりから話が変わってきて、いつの間にかあんな話に…」
「でもこれはこれでいいんじゃないかな。 私も兄に小さいながら捧げてきたしね」
「うん、そうだよねっ」
「いろいろ考えたんだけど…使わなかったなー」
「そうなのかい?」
「うん。 チョコを食べてバレンタインに気づいてチョコのリップでキス、とか」
「それは…なんと言うか…」
「チョコをあーんしてもらって食べさせて、『チョコより甘い時間』、みたいな感じとか」
「ああ…その…うん」
「思いっきり迫られて、手に持ったチョコもわたしも溶けてしまいそうだった、みたいなのとか」
「あ……ああ…確かに、その、今もう…暑い、ね」
「でもありがちで書くのはつまらないんだよね。 読むのは好きなんだけど」
「いや、そこは逃げるべきではないよ、桂さん」
「いっそいつもの感じでコメディ調に、とも考えたんだけど」
「それこそ逃げだよ。 桂さん、ちゃんと正面から向かい合わなくてはっ」
「…烏月さん、どうかした? …その、書いてる人がいるかもしれないから不穏当な表現は控えて欲しいんだけど…」
「せっかく甘い話を書くいい機会に、笑いで逃げるのはいさぎよくはない。 戦いから逃げるだけでは強くはなれないんだよっ」
「でも、結局は甘い話じゃないよ? 渡すのは白花ちゃんになってるし」
「奴め…。 いっそ槐の木ごと私が切ってこようっ」
「烏月さんっ、さっきと言ってること違うよーっ」
「ちなみにわたしはいつもこんな感じでネタを出して、そこから適当に書いてるんだ」
「…あのわずか一行程度の内容から話を作っているのだね」
「そう。 だから今回みたいに途中で話が変わったりするんだよね…。 それとか書けなくなって放置とか…」
「戯言はどうなのかな」
「戯言も変わりはないよ? 身近な所からネタを引っ張ってくる、ってところが違うだけかな?」
「それでよくあれだけ書けるね」
「えへへー」
「…いや褒めたわけではないんだが」
「あれ?」
(終)
「桂ちゃん、明日はバレンタインデーね」
学校から帰ってのんびりとテレビを見ていたら、突然柚明お姉ちゃんが言ってきた。
「うん、そうだねー。 でもわたし女子校だからあまり関係ないかな」
「あら桂ちゃんはあげないの?」
「え? 柚明お姉ちゃんあげる人いるの?」
「あらあら。 桂ちゃんたらひどいわね」
「え? え?」
わたしの知らない間に誰か好きな人ができたのだろうか。 驚いたわたしは言葉が出ない。
「さあ、そろそろ湯煎でも始めようかしら」
そう言ってお姉ちゃんは台所へと向かう。
「え、お姉ちゃん誰にあげるのっ?」
「~♪」
聞こえなかったのか、無視されたのか。 お姉ちゃんは鼻歌を歌いながら、湯煎を始めたらしい。
何か大切な人を奪われたような気分。 なぜだか鼓動が早くなる。 …いやだ、気持ち悪い。
ドンドンドンッ。
不意に玄関口の扉が叩かれる。
「は、はーい」
「あら、どなたかしら。 悪いけど桂ちゃん出てくれる?」
台所からお姉ちゃんの声が飛んでくる。 と同時に玄関口からも声が来た。
「おーい、いないのかーい」
「…サクヤさんみたい」
「…もう。 ベルを鳴らしてって言ってるのに」
「桂ー。 柚明ー」
「はーい、今出まーす」
扉を開けるとサクヤさんが赤い大きな紙袋を抱えて立っていた。
「何それ、サクヤさん」
「よっ。 久しぶりだね、桂。 とりあえず中に入れとくれよ」
「あ、うん」
「もう…サクヤさんたらいつまでたっても扉を叩くのやめてくださらないんですね」
お姉ちゃんがエプロンで手を拭きながら、サクヤさんを出迎える。
「そう固いこと言うんじゃないよ、柚明。 …って、やっぱりあんたも準備してたのかい」
「え? 何の話?」
「明日はバレンタインデーだろ?」
「うん」
それは関係あるんですか?
「サクヤさん、桂ちゃんはあげる人いないんですって。 ひどいと思いません?」
お姉ちゃんがサクヤさんにひどく真面目な顔で訴える。 わたしはさっきから心が落ち着かない程悩んでいるのに、お姉ちゃんってばひどい…。 だけど追い討ちをかけるように、
「ああー? 桂、いくらなんでもそりゃないんじゃないかい? あたしだってこうやって、ちゃーんと用意してるよ?」
そうサクヤさんは言って紙袋を逆さにする。 と、たくさんのチョコレートが転がり落ちてくる。
「…サクヤさんのはお仕事先への義理チョコでしょ…」
「何言ってんだい。 義理用のは別に買ってあるよ。 これは別口さね」
「えっ! じゃあサクヤさんもあげる人いるの!?」
「当たり前じゃないか。 桂こそ本当にあげる人いないのかい?」
「…いないよ。 そんな人、誰も」
わたしがそう言うと二人は揃ってため息をつく。 それって、なんかひどくないですか?
「柚明、よくないよ。 こういうのは」
「…ええ、そうですね。 …でも、こういうことは誰かに言われてすることでもありませんから」
なんだか変な会話のような気がする上に、どうもわたしの事らしい。
「…わたし、誰かにあげなくちゃいけないのかな?」
「…そうじゃないけど……」
「あげなくちゃいけない、わけではないけど、あげる方がいいさね」
「誰に?」
わたしが聞くと、二人は顔を見合わせる。
「そりゃあ…」
「サクヤさん」
言おうとしたサクヤさんをお姉ちゃんが止める。
「桂ちゃん」
わたしを真っ直ぐに見つめ、柚明お姉ちゃんは真剣な顔で言う。
「それをわたし達が言ったら、その時点で意味はないの。 これは義理でも義務でもないから。 桂ちゃんがわからないなら、わたし達は残念だなと思うけど誰にもあげなくていいのよ」
「でも…」
答えどころか、問題すらわかってないようなわたしはもう頭がおかしくなりそうだった。
なんで二人にはあげる人がいるの? どうしてわたしは責められてるの? 二人のチョコレートをあげる程好きな人って誰?
こんな時に誰か相談できたら…例えば………あっ!!
「白花ちゃん…」
忘れていた。 今のわたしを、わたし達を助けてくれた大切な人。 わたしの最も身近な異性、お兄ちゃん。
「…桂ちゃん」
「大切なお兄ちゃんじゃないか。 あげないでいいのかい、桂」
「ううん、ううんっ」
大きく首を振る。 いいわけなんてない。 あげたい、心の底から。
「わ、わたし、チョコ買ってくるっ!」
「あたしの分けてあげようか?」
「ううんっ。 ちゃんと自分で買ってくるっ!」
「…そうかい」
「台所は準備しておくから大丈夫よ、桂ちゃん」
「ありがとう、お姉ちゃんっ」
お財布を持って慌てて駆け出す。
大きなチョコレートを買いながら思う。 あげる人がいないなんてことはない。 誰かに助けられ、誰かに感謝して生きているのだから、あげたい人はいるに決まっている。
わかっていなかった自分を反省して、白花ちゃんの分以外にもチョコレートを買う。
明日渡そう。 白花ちゃんには思いを込めて手作りの大きなチョコを。 そして、わたしの大切な人達にも思いを込めて、感謝して。
ありがとう、柚明お姉ちゃん。 ありがとう、サクヤさん。 ありがとう、陽子ちゃん、お凛さん。 ありがとう、烏月さん、葛ちゃん。 そして…ありがとう、お父さん、お母さん。
槐の香りと共に、このチョコレートを渡そう。
(終)
学校から帰ってのんびりとテレビを見ていたら、突然柚明お姉ちゃんが言ってきた。
「うん、そうだねー。 でもわたし女子校だからあまり関係ないかな」
「あら桂ちゃんはあげないの?」
「え? 柚明お姉ちゃんあげる人いるの?」
「あらあら。 桂ちゃんたらひどいわね」
「え? え?」
わたしの知らない間に誰か好きな人ができたのだろうか。 驚いたわたしは言葉が出ない。
「さあ、そろそろ湯煎でも始めようかしら」
そう言ってお姉ちゃんは台所へと向かう。
「え、お姉ちゃん誰にあげるのっ?」
「~♪」
聞こえなかったのか、無視されたのか。 お姉ちゃんは鼻歌を歌いながら、湯煎を始めたらしい。
何か大切な人を奪われたような気分。 なぜだか鼓動が早くなる。 …いやだ、気持ち悪い。
ドンドンドンッ。
不意に玄関口の扉が叩かれる。
「は、はーい」
「あら、どなたかしら。 悪いけど桂ちゃん出てくれる?」
台所からお姉ちゃんの声が飛んでくる。 と同時に玄関口からも声が来た。
「おーい、いないのかーい」
「…サクヤさんみたい」
「…もう。 ベルを鳴らしてって言ってるのに」
「桂ー。 柚明ー」
「はーい、今出まーす」
扉を開けるとサクヤさんが赤い大きな紙袋を抱えて立っていた。
「何それ、サクヤさん」
「よっ。 久しぶりだね、桂。 とりあえず中に入れとくれよ」
「あ、うん」
「もう…サクヤさんたらいつまでたっても扉を叩くのやめてくださらないんですね」
お姉ちゃんがエプロンで手を拭きながら、サクヤさんを出迎える。
「そう固いこと言うんじゃないよ、柚明。 …って、やっぱりあんたも準備してたのかい」
「え? 何の話?」
「明日はバレンタインデーだろ?」
「うん」
それは関係あるんですか?
「サクヤさん、桂ちゃんはあげる人いないんですって。 ひどいと思いません?」
お姉ちゃんがサクヤさんにひどく真面目な顔で訴える。 わたしはさっきから心が落ち着かない程悩んでいるのに、お姉ちゃんってばひどい…。 だけど追い討ちをかけるように、
「ああー? 桂、いくらなんでもそりゃないんじゃないかい? あたしだってこうやって、ちゃーんと用意してるよ?」
そうサクヤさんは言って紙袋を逆さにする。 と、たくさんのチョコレートが転がり落ちてくる。
「…サクヤさんのはお仕事先への義理チョコでしょ…」
「何言ってんだい。 義理用のは別に買ってあるよ。 これは別口さね」
「えっ! じゃあサクヤさんもあげる人いるの!?」
「当たり前じゃないか。 桂こそ本当にあげる人いないのかい?」
「…いないよ。 そんな人、誰も」
わたしがそう言うと二人は揃ってため息をつく。 それって、なんかひどくないですか?
「柚明、よくないよ。 こういうのは」
「…ええ、そうですね。 …でも、こういうことは誰かに言われてすることでもありませんから」
なんだか変な会話のような気がする上に、どうもわたしの事らしい。
「…わたし、誰かにあげなくちゃいけないのかな?」
「…そうじゃないけど……」
「あげなくちゃいけない、わけではないけど、あげる方がいいさね」
「誰に?」
わたしが聞くと、二人は顔を見合わせる。
「そりゃあ…」
「サクヤさん」
言おうとしたサクヤさんをお姉ちゃんが止める。
「桂ちゃん」
わたしを真っ直ぐに見つめ、柚明お姉ちゃんは真剣な顔で言う。
「それをわたし達が言ったら、その時点で意味はないの。 これは義理でも義務でもないから。 桂ちゃんがわからないなら、わたし達は残念だなと思うけど誰にもあげなくていいのよ」
「でも…」
答えどころか、問題すらわかってないようなわたしはもう頭がおかしくなりそうだった。
なんで二人にはあげる人がいるの? どうしてわたしは責められてるの? 二人のチョコレートをあげる程好きな人って誰?
こんな時に誰か相談できたら…例えば………あっ!!
「白花ちゃん…」
忘れていた。 今のわたしを、わたし達を助けてくれた大切な人。 わたしの最も身近な異性、お兄ちゃん。
「…桂ちゃん」
「大切なお兄ちゃんじゃないか。 あげないでいいのかい、桂」
「ううん、ううんっ」
大きく首を振る。 いいわけなんてない。 あげたい、心の底から。
「わ、わたし、チョコ買ってくるっ!」
「あたしの分けてあげようか?」
「ううんっ。 ちゃんと自分で買ってくるっ!」
「…そうかい」
「台所は準備しておくから大丈夫よ、桂ちゃん」
「ありがとう、お姉ちゃんっ」
お財布を持って慌てて駆け出す。
大きなチョコレートを買いながら思う。 あげる人がいないなんてことはない。 誰かに助けられ、誰かに感謝して生きているのだから、あげたい人はいるに決まっている。
わかっていなかった自分を反省して、白花ちゃんの分以外にもチョコレートを買う。
明日渡そう。 白花ちゃんには思いを込めて手作りの大きなチョコを。 そして、わたしの大切な人達にも思いを込めて、感謝して。
ありがとう、柚明お姉ちゃん。 ありがとう、サクヤさん。 ありがとう、陽子ちゃん、お凛さん。 ありがとう、烏月さん、葛ちゃん。 そして…ありがとう、お父さん、お母さん。
槐の香りと共に、このチョコレートを渡そう。
(終)
「葉崎様申し訳ありませんー。 この通り平謝りに謝りますのでどうかお許しをーっ」
「先に謝るの?」
「はいです。 先に言い訳などをすると、某Sさんのような短気な方は『うだうだ言ってないで結論を言いなっ』とか騒ぎ立てたりしますので」
「…その某Sさんてのは誰のことだい?」
「いえいえ。 別にサクヤさんのことではないですようー。 たまたまイニシャルが一緒なだけでして」
「じゃあ誰のことだい?」
「それを言わないためにイニシャルでお話しているのですけど? まあそれはさておき、先日の戯言の解析からリンクについての部分はオチのためのフリでして…。 誤解を招く書き方でたいへん申し訳ありませんでしたーっ」
「…じゃあプレッシャーはないって言うんだね」
「と言うよりも、一人でも見に来られる方がいれば、更新しなければとか考える性質ですのでそこは問題ではないと思いますねー」
「じゃあレッスルは…」
「おねーさん、触れなくてもいい部分に触れないでください」
「少なくともわたしの方からは『そんなこと口が裂けても言いません』のでー」
「プレッシャーが全く無くなったら更新しなくなるよね」
「そんな気がするねえ…」
「先日の戯言は…そのフリの部分から後がとてもネガティブなわけですが…」
「ああ、そうだね」
「疲れてたんですよ」
「葛ちゃん、忙しいもんね」
「…現実と虚構を織り交ぜて話すのはやめないかい?」
「考えて書いてないものですから、あんな話になってますが…オチに向かうための繋ぎだからまあいいかー、と思って直さなかったわけです」
「どういう意味だい?」
「…つまり、その…一時的錯乱状態のようなものでして…軽く読み飛ばしていただければいいかなー、と」
「じゃああれは嘘かい?」
「嘘ではありませんよ。 確かにあの時点ではああ思ってましたよ?」
「あ、わかったよ。 この前そういうのを何ていうか聞いたよ、『誘い受け』って言うんだよね?」
「違います」
「似たようなもんじゃないか」
「違います、そんな気はありませんので。 これ以上誤解を招く発言は慎んでください」
「とりあえず戯言は続けますが…」
「戯言って小話書けない時の逃げなんだよね」
「いいじゃないかい。 そんな気にしてたら何も書けやしないさ」
「…」
「…」
「なんだい、何か言いたいことでもあるのかい?」
「サクヤさんのツッコミって、よく聞くと自分に都合のいいこと言ってるよね」
「悪魔の囁きですよねー。 さすがは鬼ですねー」
「あんたらねえ…」
「返信ってこんな感じでやるの? なんかコメント二つ以上来たら手に負えなくなりそうな気がするんだけど…」
「困りましたねー。 どうしましょうか、サクヤさん?」
「なんであたしに聞くのさ」
「いえいえ、別に都合のいいこと言って欲しいなんて思ってませんよ?」
「…あんた、あたしのことどう思ってんだい?」
「と、とにかくやれるだけやってみるよっ」
「本当にお気遣いありがとうございましたー」
「…まあしっかりやんな」
「うん、がんばるよっ」
「大丈夫ですよ。 『わたしが』桂おねーさんを支えますから」
「…。 いやあたしは桂の『保護者』だからね、『あたしが』支えてやるから心配いらないよ」
「…ほほう。 言いますねえ、サクヤさん」
「その言葉そっくり返すよ、葛」
「あ、あの、二人とも仲良くしようよ」
「桂おねーさんはわたしの方がいいですよねー」
「あたしに決まってるさね。 なあ桂?」
「え、えっと…」
「桂おねーさんっ」
「桂っ」
「なんでこうなるのーっ?」
(終)
「先に謝るの?」
「はいです。 先に言い訳などをすると、某Sさんのような短気な方は『うだうだ言ってないで結論を言いなっ』とか騒ぎ立てたりしますので」
「…その某Sさんてのは誰のことだい?」
「いえいえ。 別にサクヤさんのことではないですようー。 たまたまイニシャルが一緒なだけでして」
「じゃあ誰のことだい?」
「それを言わないためにイニシャルでお話しているのですけど? まあそれはさておき、先日の戯言の解析からリンクについての部分はオチのためのフリでして…。 誤解を招く書き方でたいへん申し訳ありませんでしたーっ」
「…じゃあプレッシャーはないって言うんだね」
「と言うよりも、一人でも見に来られる方がいれば、更新しなければとか考える性質ですのでそこは問題ではないと思いますねー」
「じゃあレッスルは…」
「おねーさん、触れなくてもいい部分に触れないでください」
「少なくともわたしの方からは『そんなこと口が裂けても言いません』のでー」
「プレッシャーが全く無くなったら更新しなくなるよね」
「そんな気がするねえ…」
「先日の戯言は…そのフリの部分から後がとてもネガティブなわけですが…」
「ああ、そうだね」
「疲れてたんですよ」
「葛ちゃん、忙しいもんね」
「…現実と虚構を織り交ぜて話すのはやめないかい?」
「考えて書いてないものですから、あんな話になってますが…オチに向かうための繋ぎだからまあいいかー、と思って直さなかったわけです」
「どういう意味だい?」
「…つまり、その…一時的錯乱状態のようなものでして…軽く読み飛ばしていただければいいかなー、と」
「じゃああれは嘘かい?」
「嘘ではありませんよ。 確かにあの時点ではああ思ってましたよ?」
「あ、わかったよ。 この前そういうのを何ていうか聞いたよ、『誘い受け』って言うんだよね?」
「違います」
「似たようなもんじゃないか」
「違います、そんな気はありませんので。 これ以上誤解を招く発言は慎んでください」
「とりあえず戯言は続けますが…」
「戯言って小話書けない時の逃げなんだよね」
「いいじゃないかい。 そんな気にしてたら何も書けやしないさ」
「…」
「…」
「なんだい、何か言いたいことでもあるのかい?」
「サクヤさんのツッコミって、よく聞くと自分に都合のいいこと言ってるよね」
「悪魔の囁きですよねー。 さすがは鬼ですねー」
「あんたらねえ…」
「返信ってこんな感じでやるの? なんかコメント二つ以上来たら手に負えなくなりそうな気がするんだけど…」
「困りましたねー。 どうしましょうか、サクヤさん?」
「なんであたしに聞くのさ」
「いえいえ、別に都合のいいこと言って欲しいなんて思ってませんよ?」
「…あんた、あたしのことどう思ってんだい?」
「と、とにかくやれるだけやってみるよっ」
「本当にお気遣いありがとうございましたー」
「…まあしっかりやんな」
「うん、がんばるよっ」
「大丈夫ですよ。 『わたしが』桂おねーさんを支えますから」
「…。 いやあたしは桂の『保護者』だからね、『あたしが』支えてやるから心配いらないよ」
「…ほほう。 言いますねえ、サクヤさん」
「その言葉そっくり返すよ、葛」
「あ、あの、二人とも仲良くしようよ」
「桂おねーさんはわたしの方がいいですよねー」
「あたしに決まってるさね。 なあ桂?」
「え、えっと…」
「桂おねーさんっ」
「桂っ」
「なんでこうなるのーっ?」
(終)
「あの手裏剣くるくるなんだけど」
「アクセス解析ですね」
「前に見方がわからない、って話したでしょ?」
「わかったのかい?」
「いろいろ調べて、やっぱりいまいちわからなかったんだけど」
「やれやれですねー」
「なんだかねえ…」
「でもっ。 少しだけわかったんだよ」
「何がですか?」
「検索フレーズって言うの見ればいいんだよ」
「なんでですか?」
「日本語で表示されるから」
「…」
「…」
「…なんか二人ともわたしを凄いバカにした目で見てない?」
「見てますねー」
「見てるね」
「どうしてーっ?」
「それで何かわかりましたか?」
「だいたいアカイイト関連かジルオール関連で人が来てるみたいなんだ」
「だろうね。 一応メインなんだろうし、当然じゃないか」
「それで思ったんだけど、アカイイトは大好きなサイトさんにリンクしてもらって人が来てるんだと思うんだけど…」
「桂おねーさん、リンクと検索は違いますようー」
「あれ? そうなの?」
「あーあー。 そこから説明したら無駄に長くなるからそこは流しておきな、葛」
「…まあ、確かにそうですね。 それで? 桂おねーさん、何ですか?」
「え? あ、えっと、ジルオール関連で来た人ってがっかりしたんだろうなー、って思って。 少数派なネタだし、戯言の方が多いし…」
「そうですねー」
「それがどうかしたかい?」
「でね、そんなこと考えたら、今度はアカイイト関連で来てくれた人はジルオールとかって読む物ないなーって思うかなって…」
「それはどうでもいいんじゃないんですか? そんなこと気にして書いてて疲れませんか?」
「…うん、そうなんだけど…」
「そんなこと言ったら、この前のシノブ伝はどうなんだい。 あれなんか自分しかわからないんじゃないかい?」
「わかる人はいるよっ。 見に来てる人の中にいるかはわからないけど…」
「あれはどうしてシノブ伝だったんですか? それも戯言扱いになってますし」
「書きやすいかなーって思って…。 実際は凄い書きづらかったけど…。 戯言にしたのは多分もう書かないから…」
「それを言ったら絶対×浪漫や神無月もそうじゃないんですか?」
「…うん、そうなんだけどね」
「どうでもいいんだけどさ、桂」
「何? サクヤさん」
「さっきからかかってる曲止めてくれないかい?」
「なんかおかしなテンションになってきますよねー」
「え、でも、これかかってるとなんだか目が覚めるんだよ」
「嫌な目の覚まし方だね」
「あなたでなーきゃ、ダメっなーのー♪ 楽しいよ?」
「…二時間くらいエンドレスなんですけど…」
「うーん。 じゃあ止めるね」
「お客さんがどれ見たとかわからないから推測なんだけど、戯言って読まれてないと思うんだよ」
「どうしてですか?」
「読んでも意味わからないことばかり書いてあるから」
「そう思うんだったらわかるように書いたらどうだい」
「でもこれ小話と違って直接書いてるから、疲れて眠い時に書いててどうしようもないんだよね。 できるだけオチをつけようとするので目一杯なわけですよ」
「ついてないことが多いですけどねー」
「うう、それは言わないや…」
「ああ、もうそれはいいから」
「だから戯言はやめちゃおうかなーって」
「これが一番書きやすいんじゃないんですか?」
「うん、まあそうなんだけど…。 読んでて『痛い』かなーとも思うし…。 それにここ以外に書いたものと混同するんだよね…」
「ここ以外ってどこだい」
「…よそのアカイイトサイトさんに行った時の足跡・感想とか?」
「その方が『痛い』んじゃないでしょうか?」
「ううう、反省してます…」
「やめたら更新するものなくならないかい? 最近書いてないじゃないか」
「うう、それは言わな…」
「だからそれはもういいですので」
「うう、二人ともひどいよ…」
「さっきはああ言ったんだけど」
「何の話だい?」
「小話と違って…って。 でもよく考えたら小話も適当に書いてるんだよね」
「残しているか、残していないかの違いしかないわけですねー」
「そうなんだよね。 戯言って全く残してないんだよね。 この前の絵ももう両方ともないし」
「どうしてさ?」
「パソコンからも消したし、原版は捨てたし」
「…」
「…」
「アップしたからもういいやーって。 だいたい描いた絵って手元に残ってないんだよね」
「桂おねーさんはなんでもかんでもすぐ捨てようとしますよねー」
「あたしも捨てられちまうのかねえ…」
「どういうこと?」
「わたしは捨てられても離れませんけどね」
「言うねえ、葛」
「二人とも、何言ってるの?」
「何の話だったっけ?」
「で、結局こうなるわけかい。 確かにこれなら戯言はやめた方がいいかもね」
「サクヤさん、文章も書くんでしょ? わたしに書き方教えてくれないかな?」
「文章の書き方なんて起承転結がしっかりしてたらいいんだよ。 とりあえずはね」
「…それができないから聞いてるのに」
「それに教えたところであたしの文章になるだけさね。 あんた自身が気づくしかないのさ」
「うう…」
「まあまあ。 桂おねーさん、サクヤさんは教えてくれないようですし、わたしと『二人で』どう書けばいいか考えましょうー」
「あ、うんっ。 ありがとう、葛ちゃんっ」
「あ、いや。 教えないなんて言ってないだろう、桂。 いやそうじゃなくて、もう教えたじゃないか」
「いえいえ、あとはわたしと桂おねーさんとで考えますので、サクヤさんはもういいですようー」
「…謀ったね、葛」
「そんなことしてないですよ? ただ利用させていただいただけですよ?」
「じゃあ葛ちゃん、考えようか」
「そうですねー。 ではサクヤさん、また」
「あ、サクヤさん。 また来てね」
「-っ。 葛っ、覚えてなっ!」
「で、リンクと検索ってどう違うの?」
「…そういうオチですか」
(終)
「アクセス解析ですね」
「前に見方がわからない、って話したでしょ?」
「わかったのかい?」
「いろいろ調べて、やっぱりいまいちわからなかったんだけど」
「やれやれですねー」
「なんだかねえ…」
「でもっ。 少しだけわかったんだよ」
「何がですか?」
「検索フレーズって言うの見ればいいんだよ」
「なんでですか?」
「日本語で表示されるから」
「…」
「…」
「…なんか二人ともわたしを凄いバカにした目で見てない?」
「見てますねー」
「見てるね」
「どうしてーっ?」
「それで何かわかりましたか?」
「だいたいアカイイト関連かジルオール関連で人が来てるみたいなんだ」
「だろうね。 一応メインなんだろうし、当然じゃないか」
「それで思ったんだけど、アカイイトは大好きなサイトさんにリンクしてもらって人が来てるんだと思うんだけど…」
「桂おねーさん、リンクと検索は違いますようー」
「あれ? そうなの?」
「あーあー。 そこから説明したら無駄に長くなるからそこは流しておきな、葛」
「…まあ、確かにそうですね。 それで? 桂おねーさん、何ですか?」
「え? あ、えっと、ジルオール関連で来た人ってがっかりしたんだろうなー、って思って。 少数派なネタだし、戯言の方が多いし…」
「そうですねー」
「それがどうかしたかい?」
「でね、そんなこと考えたら、今度はアカイイト関連で来てくれた人はジルオールとかって読む物ないなーって思うかなって…」
「それはどうでもいいんじゃないんですか? そんなこと気にして書いてて疲れませんか?」
「…うん、そうなんだけど…」
「そんなこと言ったら、この前のシノブ伝はどうなんだい。 あれなんか自分しかわからないんじゃないかい?」
「わかる人はいるよっ。 見に来てる人の中にいるかはわからないけど…」
「あれはどうしてシノブ伝だったんですか? それも戯言扱いになってますし」
「書きやすいかなーって思って…。 実際は凄い書きづらかったけど…。 戯言にしたのは多分もう書かないから…」
「それを言ったら絶対×浪漫や神無月もそうじゃないんですか?」
「…うん、そうなんだけどね」
「どうでもいいんだけどさ、桂」
「何? サクヤさん」
「さっきからかかってる曲止めてくれないかい?」
「なんかおかしなテンションになってきますよねー」
「え、でも、これかかってるとなんだか目が覚めるんだよ」
「嫌な目の覚まし方だね」
「あなたでなーきゃ、ダメっなーのー♪ 楽しいよ?」
「…二時間くらいエンドレスなんですけど…」
「うーん。 じゃあ止めるね」
「お客さんがどれ見たとかわからないから推測なんだけど、戯言って読まれてないと思うんだよ」
「どうしてですか?」
「読んでも意味わからないことばかり書いてあるから」
「そう思うんだったらわかるように書いたらどうだい」
「でもこれ小話と違って直接書いてるから、疲れて眠い時に書いててどうしようもないんだよね。 できるだけオチをつけようとするので目一杯なわけですよ」
「ついてないことが多いですけどねー」
「うう、それは言わないや…」
「ああ、もうそれはいいから」
「だから戯言はやめちゃおうかなーって」
「これが一番書きやすいんじゃないんですか?」
「うん、まあそうなんだけど…。 読んでて『痛い』かなーとも思うし…。 それにここ以外に書いたものと混同するんだよね…」
「ここ以外ってどこだい」
「…よそのアカイイトサイトさんに行った時の足跡・感想とか?」
「その方が『痛い』んじゃないでしょうか?」
「ううう、反省してます…」
「やめたら更新するものなくならないかい? 最近書いてないじゃないか」
「うう、それは言わな…」
「だからそれはもういいですので」
「うう、二人ともひどいよ…」
「さっきはああ言ったんだけど」
「何の話だい?」
「小話と違って…って。 でもよく考えたら小話も適当に書いてるんだよね」
「残しているか、残していないかの違いしかないわけですねー」
「そうなんだよね。 戯言って全く残してないんだよね。 この前の絵ももう両方ともないし」
「どうしてさ?」
「パソコンからも消したし、原版は捨てたし」
「…」
「…」
「アップしたからもういいやーって。 だいたい描いた絵って手元に残ってないんだよね」
「桂おねーさんはなんでもかんでもすぐ捨てようとしますよねー」
「あたしも捨てられちまうのかねえ…」
「どういうこと?」
「わたしは捨てられても離れませんけどね」
「言うねえ、葛」
「二人とも、何言ってるの?」
「何の話だったっけ?」
「で、結局こうなるわけかい。 確かにこれなら戯言はやめた方がいいかもね」
「サクヤさん、文章も書くんでしょ? わたしに書き方教えてくれないかな?」
「文章の書き方なんて起承転結がしっかりしてたらいいんだよ。 とりあえずはね」
「…それができないから聞いてるのに」
「それに教えたところであたしの文章になるだけさね。 あんた自身が気づくしかないのさ」
「うう…」
「まあまあ。 桂おねーさん、サクヤさんは教えてくれないようですし、わたしと『二人で』どう書けばいいか考えましょうー」
「あ、うんっ。 ありがとう、葛ちゃんっ」
「あ、いや。 教えないなんて言ってないだろう、桂。 いやそうじゃなくて、もう教えたじゃないか」
「いえいえ、あとはわたしと桂おねーさんとで考えますので、サクヤさんはもういいですようー」
「…謀ったね、葛」
「そんなことしてないですよ? ただ利用させていただいただけですよ?」
「じゃあ葛ちゃん、考えようか」
「そうですねー。 ではサクヤさん、また」
「あ、サクヤさん。 また来てね」
「-っ。 葛っ、覚えてなっ!」
「で、リンクと検索ってどう違うの?」
「…そういうオチですか」
(終)
「ほーらいい天気じゃねえか、お前ら。 こんな日は近くの女子校にでもくり出して体育でも見に行きたくなるねー」
「-っ!」
「-っ!?」
「-っ」
「って、無視かぁっ! ったく、昼間っからギャルゲーしてんじゃねえよ、このダメ野郎どもが」
「音速丸さん、それは違います」
「我々は硬派なナイスガイ。 今はADVゲームをやっていた所です」
「ああっ、崖から落ちたっ!?」
「落ち着けっ、オハシラサマがいるっ!」
「ギャルゲーじゃねえかあっ!!」
「違います。 ホラーADVですっ」
「そうです、音速丸さん。 考えてください、夜中に鈴の音と共に白い顔の少女が突然現れたりするんですよっ?」
「美少女だろがぁっ、ボケどもっ。 いくらでも来いってんだ、この俺様の厚い胸で限りなく受け止めてやるぅぅぅっ」
「死体に噛み付いて化ける少女とかいるんですよっ?」
「そんな唯一三日目で(検閲)」
「ああっ。 せっかく楓さんが来てくれたのに、音速丸と忍者さん達が阿鼻叫喚の渦にっ!」
「…まあ、いつものことだけどね」
「このままではわたし達まで巻き込まれてしまいます。 逃げましょうっ、楓さんっ」
「そうね。 行こうっ、シノブちゃんっ」
「ってオイ、サスケ。 お前は何やってんだよ」
「ふっ。 僕は皆とは違いますよ、音速丸さん。 古きを訪ねて新しきを知る、旧ハードに未来への考察を鑑みてADVを…」
「音速丸さんっ、野々村ですっ。 X指定ですっ」
「ああー、やめろよー。 僕の宝物をバラすなよー」
「こぉの、大バカ野郎がぁっ! てめえらそれでも漢かあっ!」
「お、音速丸さんっ!?」
「バカなっ!? あれのどこに間違いがっ!?」
「より高みを目指さないでどうするってんだっ! そこに山があるから上るんだろう?」
「さーてバーストエラーでもやろうっと」
「おい待てよ、次は俺がピアキャロやるんだぞっ」
「聞けよっ、おい」
「じゃあ音速丸さんは何やるんですか?」
「耳かっぽじってよぉく聞け。 同級生2だるぁぁぁっ」
「じゃあ僕の野々村の後にで」
「何言ってんだよ、次は俺のピアキャロって言っただろっ」
「おいおいハニー。 誰がサターンと言ったんだい?」
「はっ、まさかっ!?」
「そうともっ! コンシューマーの限界に到達した幻の白い塔っ! FX版だらぁぁぁっ!」
「ああっ、僕にも見せてくださいーっ!」
「俺もっ!」
「俺も俺もっ!」
「ねえシノブちゃん。 ここ狭いよ?」
「いえ音速丸達の目をくらませるにはここしかありませんっ。 さあもっと身を寄せ合ってっ」
「うーん…」
「(ああ楓さん、いい匂い~♪)」
「なんで押入れなんかに…」
「(楓さんと肌と肌が触れ合って…)」
「でもこれ開けられちゃったら逃げようもないんだけど。 って、シノブちゃん聞いてる?」
「はっ!? だ、大丈夫ですようー。 ちゃんと気配は消してますからー」
「…私は?」
「は?」
「私、気配を消すなんて出来ないんだけど…」
「ああ、じゃあ、とっておきの忍法を使いましょうっ。 忍法、隠れ蓑の術ぅっ!」
「隠れ蓑? って、きゃあっ!?」
「こうやって、布団で隠れるわけです」
「なんかさっきより狭苦しいんだけど…」
「(ああ…楓さんと一つ布団で二人きり…)」
「おいおい、これ以上はいいのかい。 お客さん」
「お、音速丸さんっ! どうして学校行かないんですかっ! 僕の唯ちゃんがっ!」
「バカ野郎っ。 学校行ったらいずみちゃんだろっ!」
「唯ちゃんは俺のだぞっ!」
「あー、チミたち。 喧嘩はやめるぞなもし」
「…ねえ、シノブちゃん。 さっきから思ってたんだけど、音速丸達、私達探してないんじゃないかな?」
「いいえっ、楓さん。 それはわたし達を油断させるための罠ですっ。 まだまだ隠れていた方が安全ですっ!」
「それにくっつきすぎて暑いんだけど…」
「大丈夫ですっ。 柔らかくていい匂いですっ」
「はあ?」
「だから音速丸さん、電車乗りすぎですよっ!」
「お金ないじゃないですかっ!」
「だぁぁぁぁっ、うるせえっ、バカ者どもがぁぁぁっ!」
「シノブちゃん、なんか外暗い気がするんだけど」
「楓さん…」
「シノブちゃん?」
「むにゃむにゃ…」
「って、寝てるし…」
ガラッ
「っ!?」
「お姉ちゃん達、何やってるの?」
「み、雅ちゃん…。 音速丸達は?」
「なんか皆でゲームしてるよ」
「やっぱり探してないじゃないーっ」
「?」
「…楓さん、好き……」
(終)
註・勢いで書いてたら収拾つかなく…。 オチのつけようが…。 反省。
「-っ!」
「-っ!?」
「-っ」
「って、無視かぁっ! ったく、昼間っからギャルゲーしてんじゃねえよ、このダメ野郎どもが」
「音速丸さん、それは違います」
「我々は硬派なナイスガイ。 今はADVゲームをやっていた所です」
「ああっ、崖から落ちたっ!?」
「落ち着けっ、オハシラサマがいるっ!」
「ギャルゲーじゃねえかあっ!!」
「違います。 ホラーADVですっ」
「そうです、音速丸さん。 考えてください、夜中に鈴の音と共に白い顔の少女が突然現れたりするんですよっ?」
「美少女だろがぁっ、ボケどもっ。 いくらでも来いってんだ、この俺様の厚い胸で限りなく受け止めてやるぅぅぅっ」
「死体に噛み付いて化ける少女とかいるんですよっ?」
「そんな唯一三日目で(検閲)」
「ああっ。 せっかく楓さんが来てくれたのに、音速丸と忍者さん達が阿鼻叫喚の渦にっ!」
「…まあ、いつものことだけどね」
「このままではわたし達まで巻き込まれてしまいます。 逃げましょうっ、楓さんっ」
「そうね。 行こうっ、シノブちゃんっ」
「ってオイ、サスケ。 お前は何やってんだよ」
「ふっ。 僕は皆とは違いますよ、音速丸さん。 古きを訪ねて新しきを知る、旧ハードに未来への考察を鑑みてADVを…」
「音速丸さんっ、野々村ですっ。 X指定ですっ」
「ああー、やめろよー。 僕の宝物をバラすなよー」
「こぉの、大バカ野郎がぁっ! てめえらそれでも漢かあっ!」
「お、音速丸さんっ!?」
「バカなっ!? あれのどこに間違いがっ!?」
「より高みを目指さないでどうするってんだっ! そこに山があるから上るんだろう?」
「さーてバーストエラーでもやろうっと」
「おい待てよ、次は俺がピアキャロやるんだぞっ」
「聞けよっ、おい」
「じゃあ音速丸さんは何やるんですか?」
「耳かっぽじってよぉく聞け。 同級生2だるぁぁぁっ」
「じゃあ僕の野々村の後にで」
「何言ってんだよ、次は俺のピアキャロって言っただろっ」
「おいおいハニー。 誰がサターンと言ったんだい?」
「はっ、まさかっ!?」
「そうともっ! コンシューマーの限界に到達した幻の白い塔っ! FX版だらぁぁぁっ!」
「ああっ、僕にも見せてくださいーっ!」
「俺もっ!」
「俺も俺もっ!」
「ねえシノブちゃん。 ここ狭いよ?」
「いえ音速丸達の目をくらませるにはここしかありませんっ。 さあもっと身を寄せ合ってっ」
「うーん…」
「(ああ楓さん、いい匂い~♪)」
「なんで押入れなんかに…」
「(楓さんと肌と肌が触れ合って…)」
「でもこれ開けられちゃったら逃げようもないんだけど。 って、シノブちゃん聞いてる?」
「はっ!? だ、大丈夫ですようー。 ちゃんと気配は消してますからー」
「…私は?」
「は?」
「私、気配を消すなんて出来ないんだけど…」
「ああ、じゃあ、とっておきの忍法を使いましょうっ。 忍法、隠れ蓑の術ぅっ!」
「隠れ蓑? って、きゃあっ!?」
「こうやって、布団で隠れるわけです」
「なんかさっきより狭苦しいんだけど…」
「(ああ…楓さんと一つ布団で二人きり…)」
「おいおい、これ以上はいいのかい。 お客さん」
「お、音速丸さんっ! どうして学校行かないんですかっ! 僕の唯ちゃんがっ!」
「バカ野郎っ。 学校行ったらいずみちゃんだろっ!」
「唯ちゃんは俺のだぞっ!」
「あー、チミたち。 喧嘩はやめるぞなもし」
「…ねえ、シノブちゃん。 さっきから思ってたんだけど、音速丸達、私達探してないんじゃないかな?」
「いいえっ、楓さん。 それはわたし達を油断させるための罠ですっ。 まだまだ隠れていた方が安全ですっ!」
「それにくっつきすぎて暑いんだけど…」
「大丈夫ですっ。 柔らかくていい匂いですっ」
「はあ?」
「だから音速丸さん、電車乗りすぎですよっ!」
「お金ないじゃないですかっ!」
「だぁぁぁぁっ、うるせえっ、バカ者どもがぁぁぁっ!」
「シノブちゃん、なんか外暗い気がするんだけど」
「楓さん…」
「シノブちゃん?」
「むにゃむにゃ…」
「って、寝てるし…」
ガラッ
「っ!?」
「お姉ちゃん達、何やってるの?」
「み、雅ちゃん…。 音速丸達は?」
「なんか皆でゲームしてるよ」
「やっぱり探してないじゃないーっ」
「?」
「…楓さん、好き……」
(終)
註・勢いで書いてたら収拾つかなく…。 オチのつけようが…。 反省。
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