数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
(本当たいへんだね、な話)
休止中にもかかわらず足を運んでくださる方が多く感謝しております。 現状たいへん忙しく次の更新はいつになるかわかりませんが、少しずつやっていこうと思います。 これからもよろしくお願いします。
…って、通りすがりの方ばかりなのかな?
休止中にもかかわらず足を運んでくださる方が多く感謝しております。 現状たいへん忙しく次の更新はいつになるかわかりませんが、少しずつやっていこうと思います。 これからもよろしくお願いします。
…って、通りすがりの方ばかりなのかな?
「ああ、烏月かい。 今桂は買い物に出てるよ」
「…それは構わないのですが、なぜあなたがここにいるのですか?」
「あたしは桂の保護者だからねえ、若い女の一人暮らしには反対なのさね。 だからちょくちょく来るようにしてるのさ」
「保護者、ではなく保護者代わりでしょう」
「たいした違いじゃないよ。 そもそも桂は親類縁者がいないから、真弓が亡くなった時だってあたしが全部手配したんだからね」
「桂さんのご母堂…。 千羽、真弓、さまですね」
「あー、そういやあんたも親戚か。 ま、いいけどさ」
「私はお会いしたことはないのですが…。 桂さんに似た方だったのでしょうか?」
「いやあ? 桂のは笑子さんや父親似だよ。 羽藤の血なんだね。 真弓はあんたも知っての通り、鬼切り役なんてやってたクチだからさ。 まあ、一筋縄じゃいかない女だったよ」
「…」
「でも…だからかねえ…。 桂は母親べったりで、頼りすぎていた。 そのせいで亡くなった時はただ呆然として、そして泣き続けた」
「…」
「だけどさ、実際にはそれじゃダメなんだ。 ちゃんと葬儀を挙げなきゃいけないし、いろいろ手続きもある」
「ああ、なるほど…」
「葬儀屋に手配して、通夜までの手続き並びに告別式までの計画、各方面への連絡などなどなど…。 桂はまだ年齢が年齢だけにわからなくて当然だけど、それでも誰かがやらなくちゃいけない」
「私もそういうことは詳しくはないですね。 振る舞いの仕方であればわかりますが」
「ま、そんなもんだろうさ。 だけどさ、結局はあたしは他人扱いだからね、泣いてる桂には悪かったけど、結構動かしたよ」
「全て葬儀屋の方に頼んだのではないのですか?」
「そうすると、かなり金がかかるんだよ。 ま、参列者はあまり多くないのがわかってたから、そこら辺は助かったけどね。 基本的に公共のものを使うようにすれば、大幅に安く済むよ」
「公共の? 斎場ですか?」
「そうだよ。 斎場だけじゃない、墓だってそうさ。 まあ、競争率がべらぼうに高いけどね」
「…そう、なんですか」
「それにさ、葬儀が終わってもまだやることはたくさんある。 およそ全ての名義変更であり、保険関係の手続きだったり、相続の手続きだったりでいろんな所、主に役所かね。 を駆け回るのさ」
「はあ」
「ほとんどあたし、とあたしの知り合いの弁護士が手を貸したけど、桂にはがんばってもらったよ」
「桂さんががんばった、ですか?」
「そうさ。 あたしやあたしの知り合いの弁護士は所詮他人さね。 いちいち本人じゃないとダメな手続きが多くてね。 泣いてる暇すらあげられなかったよ」
「桂さん…」
「だけどね、ある意味それがかえってよかったのさ。 ひたすらたいへんで悲しみが薄れていくんだよ。 もちろん後になって悲しみはまた襲ってくるけど、とりあえず立ち直るきっかけにはなるもんさね」
「そうですね。 経観塚で会った時、桂さんは時折悲しそうにはしていましたが、落ち込んでいる様子は伺えなかったですし」
「ま、あの子は自分で抱え込んで見せない、ってのもあるけどね。 そういう所は真弓にそっくりだよ」
「たいへんだったのですね、桂さん…」
「あー…、いや、まだ終わっちゃいないけどね。 時間かかるんだよ、こういう手続きは。 それに税金の問題とかもあるしねえ…。 だいたい一年くらいは引っ張るよ」
「そうなのですか?」
「そうだよ。 本当たいへんなんだよ」
「…なるほど」
「ま、そういうわけだから、さっさと帰りな烏月」
「…今日は私は桂さんに招かれて来ているのですが」
「社交辞令、ってやつさ。 そこら辺汲み取れないのかねえ?」
「それに先ほどサクヤさん自身が言っていたように、桂さんのような女の子が一人でいるのは危険ですので、私が付いていましょう」
「…」
「サクヤさんは安心して、桂さんのために『影から』手を貸してあげてください」
「あんたねえ…」
「サクヤさんといると桂さんが葬儀のことを思い出して悲しむかもしれません。 どうぞお帰りくださって構いませんよ? 留守を含め、私が桂さんに付いていますから」
「…烏月、葛みたいなこと言うようになったねえ」
「…おかげ様で随分鍛えられました」
(終)
註・オチなし。 今はこれが精一杯。
「…それは構わないのですが、なぜあなたがここにいるのですか?」
「あたしは桂の保護者だからねえ、若い女の一人暮らしには反対なのさね。 だからちょくちょく来るようにしてるのさ」
「保護者、ではなく保護者代わりでしょう」
「たいした違いじゃないよ。 そもそも桂は親類縁者がいないから、真弓が亡くなった時だってあたしが全部手配したんだからね」
「桂さんのご母堂…。 千羽、真弓、さまですね」
「あー、そういやあんたも親戚か。 ま、いいけどさ」
「私はお会いしたことはないのですが…。 桂さんに似た方だったのでしょうか?」
「いやあ? 桂のは笑子さんや父親似だよ。 羽藤の血なんだね。 真弓はあんたも知っての通り、鬼切り役なんてやってたクチだからさ。 まあ、一筋縄じゃいかない女だったよ」
「…」
「でも…だからかねえ…。 桂は母親べったりで、頼りすぎていた。 そのせいで亡くなった時はただ呆然として、そして泣き続けた」
「…」
「だけどさ、実際にはそれじゃダメなんだ。 ちゃんと葬儀を挙げなきゃいけないし、いろいろ手続きもある」
「ああ、なるほど…」
「葬儀屋に手配して、通夜までの手続き並びに告別式までの計画、各方面への連絡などなどなど…。 桂はまだ年齢が年齢だけにわからなくて当然だけど、それでも誰かがやらなくちゃいけない」
「私もそういうことは詳しくはないですね。 振る舞いの仕方であればわかりますが」
「ま、そんなもんだろうさ。 だけどさ、結局はあたしは他人扱いだからね、泣いてる桂には悪かったけど、結構動かしたよ」
「全て葬儀屋の方に頼んだのではないのですか?」
「そうすると、かなり金がかかるんだよ。 ま、参列者はあまり多くないのがわかってたから、そこら辺は助かったけどね。 基本的に公共のものを使うようにすれば、大幅に安く済むよ」
「公共の? 斎場ですか?」
「そうだよ。 斎場だけじゃない、墓だってそうさ。 まあ、競争率がべらぼうに高いけどね」
「…そう、なんですか」
「それにさ、葬儀が終わってもまだやることはたくさんある。 およそ全ての名義変更であり、保険関係の手続きだったり、相続の手続きだったりでいろんな所、主に役所かね。 を駆け回るのさ」
「はあ」
「ほとんどあたし、とあたしの知り合いの弁護士が手を貸したけど、桂にはがんばってもらったよ」
「桂さんががんばった、ですか?」
「そうさ。 あたしやあたしの知り合いの弁護士は所詮他人さね。 いちいち本人じゃないとダメな手続きが多くてね。 泣いてる暇すらあげられなかったよ」
「桂さん…」
「だけどね、ある意味それがかえってよかったのさ。 ひたすらたいへんで悲しみが薄れていくんだよ。 もちろん後になって悲しみはまた襲ってくるけど、とりあえず立ち直るきっかけにはなるもんさね」
「そうですね。 経観塚で会った時、桂さんは時折悲しそうにはしていましたが、落ち込んでいる様子は伺えなかったですし」
「ま、あの子は自分で抱え込んで見せない、ってのもあるけどね。 そういう所は真弓にそっくりだよ」
「たいへんだったのですね、桂さん…」
「あー…、いや、まだ終わっちゃいないけどね。 時間かかるんだよ、こういう手続きは。 それに税金の問題とかもあるしねえ…。 だいたい一年くらいは引っ張るよ」
「そうなのですか?」
「そうだよ。 本当たいへんなんだよ」
「…なるほど」
「ま、そういうわけだから、さっさと帰りな烏月」
「…今日は私は桂さんに招かれて来ているのですが」
「社交辞令、ってやつさ。 そこら辺汲み取れないのかねえ?」
「それに先ほどサクヤさん自身が言っていたように、桂さんのような女の子が一人でいるのは危険ですので、私が付いていましょう」
「…」
「サクヤさんは安心して、桂さんのために『影から』手を貸してあげてください」
「あんたねえ…」
「サクヤさんといると桂さんが葬儀のことを思い出して悲しむかもしれません。 どうぞお帰りくださって構いませんよ? 留守を含め、私が桂さんに付いていますから」
「…烏月、葛みたいなこと言うようになったねえ」
「…おかげ様で随分鍛えられました」
(終)
註・オチなし。 今はこれが精一杯。
PR