数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
たいせつなひとが いなくなってしまった
ー電話の音ー
マナーモードに変えていなかったという事実が焦らせる。 周りに迷惑顔の人がいないと知って落ちつきを取り戻す。
「…は、はい……も、もしもし……?」
『やっほー、はとちゃん』
「……あ……よ、陽子さん…」
顔の見えない電話越しの一言だけで人となりがわかってしまう彼女は、クラスメートの奈良陽子ちゃん。
『元気だった?』
「…え、ええ…バタバタしてたのも……な、なんとか…一段落……」
『そ? なら丁度良かった。 さすがは私、絶妙なタイミング』
「…」
『…』
「…」
『…でぇ、はとちゃん今、暇?』
「…ひ、暇といえば……暇…かな…?」
『カレー食べにいこっ♪』
ー中断ー
「台詞を変えるな、祐希子」
「いやー、なんだか飽きてきちゃったー。 私声だけだしー。 お腹空いてきちゃったしー」
「お前なぁ…」
「……あ、あの……」
「もういいじゃん、社長。 私のシーンはすっ飛ばしちゃっていいからさ」
「いやお前人気あるし。 いてくれた方ウケがいいんだよ」
「……あの………あの………」
「お腹空いたーっ。 カレー食べに行くっ!」
「あーあ…。 ま、しょうがないか。 じゃ、次行こう」
「………あうぅ……」
ー再開ー
「……ん……?」
ーその人は、いきなり視界に現れた。
「…う、うわ……」
思わず見とれてしまっていた。
「自分に何か用事っスか?」
ー中断ー
「社長、ダメっ! 真田ちゃんは配役ミスですっ!」
「…うん。 なんかそんな気もする」
「ひどいっスよー…自分、一所懸命やってるっスよ?」
「……あ、あの…」
「じゃあ、真田を変更。 ダメ出しした優香、行け」
「えっ!? …あの…わたしこういう怖いのは……」
「平気だ。 まだ先のシーンだよ」
「………あの……あの……」
「嘘ーっ! ぜったい嘘っ、イヤっ! わたしもカレー食べに行くっ!」
「あっコラ! …逃げ足の速い……これだからルチャの選手は…」
「どうするっスか?」
「…あ、あの……」
「じゃあ、入団したばかりだが…。 みこと、頼む」
「わかりました」
「………あうぅ…」
ー再開ー
「…あ……あの……その………」
(おお、迫真の演技だな、遥)
(単にいつも通りなだけじゃないですか?)
「いえ…それで、私に用事ですか?」
「…し、失礼しました……ご、ごきげんよう……」
ー暗転中ー
「しかし進行悪いな…。 省略してるのに終わりが見えないんだが…いっそここで終わっとこうか?」
「そうですねー。 …って、社長っ! なんスかそれはっ! 男が一度始めたことを投げだすんスかっ!?」
「……わ、私も……や、やめたい……」
「…いいじゃんよー。 みんな逃げてくしさー。 井上クンなんか今日の話聞いたら有休取ったぞ?」
「そうですけど…で、でも出番待ちの上戸と内田だって………あれ?」
「………いないな」
「……あ、あの……わ、私も……」
「マッキーさんとラッキーさんなら祐希子さんより前に連れ立って出ていきましたが」
「…それじゃ最初からじゃないか。 気付いてたなら話せ、みこと」
「はあ」
「……あ、あの…わ、私も………」
「しょうがないなぁ…。 じゃあシーン飛ばそうっ、かったるいし」
「なんか社長投げやりですね…」
「じゃあもう翌日の昼で」
「昼? あのシーンっスか? …あれ誰がやるんですか? 自分っスか?」
「ふっ。 お前には期待できん」
「ひどいっスよー…じゃあ、誰がやるんですか?」
「心配はいらん。 このためにWARSから人を呼んでおいたっ」
「呼んでおいて、さっき『終わっとこうか』とか言ったんスか…?」
「…」
「……あうぅ………」
ー再開ー
大きな木の下に男の子が立っている。
「……あ、あれ………?」
見たことのある人だった。
「私の顔がどうかしたのかい? バンビちゃん?」
ー中断ー
「帰れ、ミシェール」
「おお、軽い挨拶だよ、社長さん。 それに別に間違ってはいないだろうに」
「………や、やめたい……」
「なんとか言ってやれ、真田」
「い、いや…一応ミシェールさんは元役者さんですし、それにこの業界でも先輩ですし…自分はちょっと…」
「真田。 上に噛み付く気概がなくてどうする? そんなんじゃいつまでたっても上には上がれないぞ!?」
「はっ!? そ、そうっスねっ! 自分が間違ってましたっ!」
「……あ、あの………」
「ミシェールっ、役に立たないからとっとと帰れっ…ス!」
「言いきれてないあたり、まだまだだな」
「……ほう…人の団体から無理やり人を借り出してそういう扱いか、この団体は…」
「あ」
「わ」
「……や、やめたい……」
「それならこっちにも考えというものが…」
「い、いや龍子。 そうは言うけどな…」
「もうイヤーっ! 助けてーっ!」
「なんだっ!?」
「あれ? 優香、もう帰ってきたのか」
「ちょっとー、優香。 まだ食べ始めたばかりじゃないのー」
「もう食べられないですぅ…ゆるしてくださいぃぃ」
「………。 あいつ、今まで一緒に行ったことなかったのか?」
「……そうみたいですね」
「あっ、龍子じゃないっ。 久しぶりー♪」
「げっ。 新女のカレー女っ」
「もう移籍して1年経つわよっ。 それにそのカレー女って何っ!」
「…そのまんまじゃないか」
「…そっスね」
「じゃあ邪魔したな。 帰るぞ、ミシェール」
「早いな」
「経験あるんスね」
「ちょっとちょっと。 久しぶりに会ったんだからご飯でも食べに行こっ」
「…遠慮しておく」
「いいからいいから♪ 今日は私の奢りだー♪」
「やめろっ、離せーっ!!」
「それでは失礼するよ、諸君」
「…」
「…」
「……や、やめたい……」
「そ、そうか遥っ。 じゃあ終わろうっ」
「そっスねっ。 いつ帰ってくるかわからないっスからっ」
「…カレーはイヤ……」
「みことっ、そのくたばった奴、遥と2人で運んでくれっ。 撤収っ!」
「了解っス!」
「わかりました」
「…カレーは……イヤ…」
「……お、終わった……よ、よかった……」
後日、サンダー龍子が海老名市運動公園ホールにて試合途中に突如乱入。 マイティ祐希子が重症を負った。
その後半年に渡るWARSとの対抗戦は、今思えばこの日が原因だったのかもしれない。
(終)
ー電話の音ー
マナーモードに変えていなかったという事実が焦らせる。 周りに迷惑顔の人がいないと知って落ちつきを取り戻す。
「…は、はい……も、もしもし……?」
『やっほー、はとちゃん』
「……あ……よ、陽子さん…」
顔の見えない電話越しの一言だけで人となりがわかってしまう彼女は、クラスメートの奈良陽子ちゃん。
『元気だった?』
「…え、ええ…バタバタしてたのも……な、なんとか…一段落……」
『そ? なら丁度良かった。 さすがは私、絶妙なタイミング』
「…」
『…』
「…」
『…でぇ、はとちゃん今、暇?』
「…ひ、暇といえば……暇…かな…?」
『カレー食べにいこっ♪』
ー中断ー
「台詞を変えるな、祐希子」
「いやー、なんだか飽きてきちゃったー。 私声だけだしー。 お腹空いてきちゃったしー」
「お前なぁ…」
「……あ、あの……」
「もういいじゃん、社長。 私のシーンはすっ飛ばしちゃっていいからさ」
「いやお前人気あるし。 いてくれた方ウケがいいんだよ」
「……あの………あの………」
「お腹空いたーっ。 カレー食べに行くっ!」
「あーあ…。 ま、しょうがないか。 じゃ、次行こう」
「………あうぅ……」
ー再開ー
「……ん……?」
ーその人は、いきなり視界に現れた。
「…う、うわ……」
思わず見とれてしまっていた。
「自分に何か用事っスか?」
ー中断ー
「社長、ダメっ! 真田ちゃんは配役ミスですっ!」
「…うん。 なんかそんな気もする」
「ひどいっスよー…自分、一所懸命やってるっスよ?」
「……あ、あの…」
「じゃあ、真田を変更。 ダメ出しした優香、行け」
「えっ!? …あの…わたしこういう怖いのは……」
「平気だ。 まだ先のシーンだよ」
「………あの……あの……」
「嘘ーっ! ぜったい嘘っ、イヤっ! わたしもカレー食べに行くっ!」
「あっコラ! …逃げ足の速い……これだからルチャの選手は…」
「どうするっスか?」
「…あ、あの……」
「じゃあ、入団したばかりだが…。 みこと、頼む」
「わかりました」
「………あうぅ…」
ー再開ー
「…あ……あの……その………」
(おお、迫真の演技だな、遥)
(単にいつも通りなだけじゃないですか?)
「いえ…それで、私に用事ですか?」
「…し、失礼しました……ご、ごきげんよう……」
ー暗転中ー
「しかし進行悪いな…。 省略してるのに終わりが見えないんだが…いっそここで終わっとこうか?」
「そうですねー。 …って、社長っ! なんスかそれはっ! 男が一度始めたことを投げだすんスかっ!?」
「……わ、私も……や、やめたい……」
「…いいじゃんよー。 みんな逃げてくしさー。 井上クンなんか今日の話聞いたら有休取ったぞ?」
「そうですけど…で、でも出番待ちの上戸と内田だって………あれ?」
「………いないな」
「……あ、あの……わ、私も……」
「マッキーさんとラッキーさんなら祐希子さんより前に連れ立って出ていきましたが」
「…それじゃ最初からじゃないか。 気付いてたなら話せ、みこと」
「はあ」
「……あ、あの…わ、私も………」
「しょうがないなぁ…。 じゃあシーン飛ばそうっ、かったるいし」
「なんか社長投げやりですね…」
「じゃあもう翌日の昼で」
「昼? あのシーンっスか? …あれ誰がやるんですか? 自分っスか?」
「ふっ。 お前には期待できん」
「ひどいっスよー…じゃあ、誰がやるんですか?」
「心配はいらん。 このためにWARSから人を呼んでおいたっ」
「呼んでおいて、さっき『終わっとこうか』とか言ったんスか…?」
「…」
「……あうぅ………」
ー再開ー
大きな木の下に男の子が立っている。
「……あ、あれ………?」
見たことのある人だった。
「私の顔がどうかしたのかい? バンビちゃん?」
ー中断ー
「帰れ、ミシェール」
「おお、軽い挨拶だよ、社長さん。 それに別に間違ってはいないだろうに」
「………や、やめたい……」
「なんとか言ってやれ、真田」
「い、いや…一応ミシェールさんは元役者さんですし、それにこの業界でも先輩ですし…自分はちょっと…」
「真田。 上に噛み付く気概がなくてどうする? そんなんじゃいつまでたっても上には上がれないぞ!?」
「はっ!? そ、そうっスねっ! 自分が間違ってましたっ!」
「……あ、あの………」
「ミシェールっ、役に立たないからとっとと帰れっ…ス!」
「言いきれてないあたり、まだまだだな」
「……ほう…人の団体から無理やり人を借り出してそういう扱いか、この団体は…」
「あ」
「わ」
「……や、やめたい……」
「それならこっちにも考えというものが…」
「い、いや龍子。 そうは言うけどな…」
「もうイヤーっ! 助けてーっ!」
「なんだっ!?」
「あれ? 優香、もう帰ってきたのか」
「ちょっとー、優香。 まだ食べ始めたばかりじゃないのー」
「もう食べられないですぅ…ゆるしてくださいぃぃ」
「………。 あいつ、今まで一緒に行ったことなかったのか?」
「……そうみたいですね」
「あっ、龍子じゃないっ。 久しぶりー♪」
「げっ。 新女のカレー女っ」
「もう移籍して1年経つわよっ。 それにそのカレー女って何っ!」
「…そのまんまじゃないか」
「…そっスね」
「じゃあ邪魔したな。 帰るぞ、ミシェール」
「早いな」
「経験あるんスね」
「ちょっとちょっと。 久しぶりに会ったんだからご飯でも食べに行こっ」
「…遠慮しておく」
「いいからいいから♪ 今日は私の奢りだー♪」
「やめろっ、離せーっ!!」
「それでは失礼するよ、諸君」
「…」
「…」
「……や、やめたい……」
「そ、そうか遥っ。 じゃあ終わろうっ」
「そっスねっ。 いつ帰ってくるかわからないっスからっ」
「…カレーはイヤ……」
「みことっ、そのくたばった奴、遥と2人で運んでくれっ。 撤収っ!」
「了解っス!」
「わかりました」
「…カレーは……イヤ…」
「……お、終わった……よ、よかった……」
後日、サンダー龍子が海老名市運動公園ホールにて試合途中に突如乱入。 マイティ祐希子が重症を負った。
その後半年に渡るWARSとの対抗戦は、今思えばこの日が原因だったのかもしれない。
(終)
「なあ桂、ゴールデンウイークだって言うのに何もなしかい?」
「うう、そうは思うけど書けないんだよ…」
「それなりに時間はあったじゃないか」
「桂さんや私はあなたのように無限に等しい時間を生きているわけではないですから」
「…烏月、喧嘩売ってるのなら買うよ」
「そういうつもりはありませんが、お望みならお相手致しましょう」
「二人ともやめてやめて。 …わたしだって気にはしてるんだよ。 何か書くことないかなって」
「とは言え、あまり書けないことは口にしたくないですしね」
「そうさねー」
「しかたないから出さないでいたものを出すことにするよ」
「と言うとあれですか?」
「うん」
「…でもあれはすでに見た人も多いんじゃないかい? それにここに来てくれている人が興味あるかねえ?」
「…何もないよりはましかなって」
「ない方がいいかもしれませんが」
「とりあえずいずれは出すつもりだったから。 ちょっと予定より早くなっただけだよ」
「ま、桂がいいならいいんじゃないかい」
「こうやってみて思うけどプロの人は凄いよね。 わたしが書いてるのくらいなら毎日書いてたりするよね」
「桂と比べればみんな凄いよ」
「うう、それはわたしが至らないのはわかってるけど…」
「落ち込むことはないよ、桂さん。 桂さんには桂さんしか書けないものがあるんだから」
「…例えば?」
「今日は葛様はいらっしゃらないのですか?」
「そう言えば今日はいないね、葛ちゃん」
「桂、ごまかされてるよ」
「別にそういうつもりはありませんが」
「えっと、じゃあ例えばどの話がわたしならではかな?」
「あ、申し訳ない桂さん。 私は葛様を迎えに行かなければならないのを忘れていたよ。 すぐに行かなければっ」
「あ、そうなんだっ。 うん、がんばってね烏月さん」
「ああっ、じゃあまたっ」
「…わざわざ確認するあたり烏月も計算高くなったもんだね」
「? 何言ってるの、サクヤさん?」
(終)
「うう、そうは思うけど書けないんだよ…」
「それなりに時間はあったじゃないか」
「桂さんや私はあなたのように無限に等しい時間を生きているわけではないですから」
「…烏月、喧嘩売ってるのなら買うよ」
「そういうつもりはありませんが、お望みならお相手致しましょう」
「二人ともやめてやめて。 …わたしだって気にはしてるんだよ。 何か書くことないかなって」
「とは言え、あまり書けないことは口にしたくないですしね」
「そうさねー」
「しかたないから出さないでいたものを出すことにするよ」
「と言うとあれですか?」
「うん」
「…でもあれはすでに見た人も多いんじゃないかい? それにここに来てくれている人が興味あるかねえ?」
「…何もないよりはましかなって」
「ない方がいいかもしれませんが」
「とりあえずいずれは出すつもりだったから。 ちょっと予定より早くなっただけだよ」
「ま、桂がいいならいいんじゃないかい」
「こうやってみて思うけどプロの人は凄いよね。 わたしが書いてるのくらいなら毎日書いてたりするよね」
「桂と比べればみんな凄いよ」
「うう、それはわたしが至らないのはわかってるけど…」
「落ち込むことはないよ、桂さん。 桂さんには桂さんしか書けないものがあるんだから」
「…例えば?」
「今日は葛様はいらっしゃらないのですか?」
「そう言えば今日はいないね、葛ちゃん」
「桂、ごまかされてるよ」
「別にそういうつもりはありませんが」
「えっと、じゃあ例えばどの話がわたしならではかな?」
「あ、申し訳ない桂さん。 私は葛様を迎えに行かなければならないのを忘れていたよ。 すぐに行かなければっ」
「あ、そうなんだっ。 うん、がんばってね烏月さん」
「ああっ、じゃあまたっ」
「…わざわざ確認するあたり烏月も計算高くなったもんだね」
「? 何言ってるの、サクヤさん?」
(終)
「最近おねーさん目に見えて更新速度落ちてますね」
「そうかな?」
「どう見たってそうじゃないさ」
「うーん。 でも最初の頃のはすでに書いてあった物を出してるだけだから」
「でも書いてませんよねー」
「書いてないねえ」
「…」
「続ける、って言ったじゃないさね。 ちゃんとやりな、桂」
「サクヤさん、そうは言うけどそうそう簡単には書けないよ」
「まあそれはそうかもしれませんねー」
「そうかい? あんな短いの簡単なんじゃないかい? それにその後の話なら桂の創造力次第じゃないさ」
「わたし、そんな創造力なんてないよ」
「そういう言い訳はよくないよ、桂。 やる以上はしっかりやるもんさね」
「えっと…善処します…」
「もちろんわたしももっと更新したいと思ってるよ?」
「じゃあすればいいじゃないさ」
「だからそれができないのは話が浮かばないから、とおねーさんは言いたいわけですね」
「うん」
「やれやれだね。 あたしの話ならいくらでも出そうなもんじゃないさね」
「サクヤさんはこの前書いたから当分書くつもりないよ?」
「…桂、あんたいつからそういうこと言う子になっちまったのかねえ……」
「今は葛ちゃんで考えてるんだけど…全然出てこなくって…」
「葛ぁー? あいつのなんかもう散々書いてるじゃないさね。 書く必要なんかないじゃないか」
「そういうことは本人がいない所で言うものかと思いますけど」
「数は関係ないよ。 わたしが書きたいんだよ」
「でも書けないんだろう? だったらあたしの話を考える方がいいさね」
「烏月さんも書きたいし…」
「烏月ぃー? あんな刃物振り回すような女なんて碌なもんじゃないさ。 およしよ、桂」
「本人と関わりある者の前で言うのもどうかと思いますけど」
「でも葛ちゃんの話も烏月さんの話も今書いてある話と似たような話になっちゃうんだよね…」
「わたしの話はトゥルーEDかノーマルED後でばかり書いてますからねー」
「DXとEXは同じ話なんじゃないかい?」
「違うよ、サクヤさんちゃんと読んでくれてる?」
「読んでないね。 あたしが出てないしね、読む必要がないさね」
「これはまた狭量なことで」
「じゃああんたはあたしの話読んでるのかい?」
「まあおねーさん、あせって書く必要はありませんから。 ゆっくりとご自分のペースで書かれる方がいいと思いますよ?」
「うん。 ありがとう、葛ちゃん」
「ちょっと待ちなっ、葛っ。 何話を変えてるんだいっ」
「でもアカイイト以外も今書けなくて困ってるんだよね」
「うーん。 何がきっかけで書けるようになるかはわかりませんから、あまり気にしない方がいいと思いますよ、おねーさん」
「無視するんじゃないよっ、葛っ」
「うん。 わたしやれるだけやってみるよ」
「その意気ですよ、おねーさん♪」
「こらっ、あたしの話を聞きなーっ」
(終)
「そうかな?」
「どう見たってそうじゃないさ」
「うーん。 でも最初の頃のはすでに書いてあった物を出してるだけだから」
「でも書いてませんよねー」
「書いてないねえ」
「…」
「続ける、って言ったじゃないさね。 ちゃんとやりな、桂」
「サクヤさん、そうは言うけどそうそう簡単には書けないよ」
「まあそれはそうかもしれませんねー」
「そうかい? あんな短いの簡単なんじゃないかい? それにその後の話なら桂の創造力次第じゃないさ」
「わたし、そんな創造力なんてないよ」
「そういう言い訳はよくないよ、桂。 やる以上はしっかりやるもんさね」
「えっと…善処します…」
「もちろんわたしももっと更新したいと思ってるよ?」
「じゃあすればいいじゃないさ」
「だからそれができないのは話が浮かばないから、とおねーさんは言いたいわけですね」
「うん」
「やれやれだね。 あたしの話ならいくらでも出そうなもんじゃないさね」
「サクヤさんはこの前書いたから当分書くつもりないよ?」
「…桂、あんたいつからそういうこと言う子になっちまったのかねえ……」
「今は葛ちゃんで考えてるんだけど…全然出てこなくって…」
「葛ぁー? あいつのなんかもう散々書いてるじゃないさね。 書く必要なんかないじゃないか」
「そういうことは本人がいない所で言うものかと思いますけど」
「数は関係ないよ。 わたしが書きたいんだよ」
「でも書けないんだろう? だったらあたしの話を考える方がいいさね」
「烏月さんも書きたいし…」
「烏月ぃー? あんな刃物振り回すような女なんて碌なもんじゃないさ。 およしよ、桂」
「本人と関わりある者の前で言うのもどうかと思いますけど」
「でも葛ちゃんの話も烏月さんの話も今書いてある話と似たような話になっちゃうんだよね…」
「わたしの話はトゥルーEDかノーマルED後でばかり書いてますからねー」
「DXとEXは同じ話なんじゃないかい?」
「違うよ、サクヤさんちゃんと読んでくれてる?」
「読んでないね。 あたしが出てないしね、読む必要がないさね」
「これはまた狭量なことで」
「じゃああんたはあたしの話読んでるのかい?」
「まあおねーさん、あせって書く必要はありませんから。 ゆっくりとご自分のペースで書かれる方がいいと思いますよ?」
「うん。 ありがとう、葛ちゃん」
「ちょっと待ちなっ、葛っ。 何話を変えてるんだいっ」
「でもアカイイト以外も今書けなくて困ってるんだよね」
「うーん。 何がきっかけで書けるようになるかはわかりませんから、あまり気にしない方がいいと思いますよ、おねーさん」
「無視するんじゃないよっ、葛っ」
「うん。 わたしやれるだけやってみるよ」
「その意気ですよ、おねーさん♪」
「こらっ、あたしの話を聞きなーっ」
(終)
「…だいぶ復興は進んできているようね」
「そうね」
「傷跡は小さくないけれど、これなら…」
あちこちに活気のある声が聞こえる。 明日を生きる人々の姿を見ながら、エンシャントの街をザギヴと二人で歩く。
巡察している内に街はずれの方、墓地の近くまで歩いてきてしまった。
「あ、へいかー」
小さな女の子が笑顔で寄ってきて、手に持った花を差し出す。
「おはな、あげるー」
「ありがとう。 きれいなお花ね」
しゃがんで女の子と話す。
「はい。 エレンディアにもあげるー」
「ありがとう…って…。 あなた…ハンナ? あれ? どうしてここにいるの?」
花を差し出す女の子に見覚えがある気がしていたが、実際知っている女の子であった。 ロストールのスラムで知り合ったその子の名はハンナといった。
「エレンディアにあいにきたのよ」
「えっ、私に? どうやってここまで?」
「それは俺が連れてきたんだ」
不意にかかった声に顔を上げると、少し離れた場所に立つ見知った顔。
「ゼネテス!?」
「デートの邪魔をする気は無かったんだがな。 すまないな、陛下」
「あ、そ、そんな、その。 な、何なの、あなたっ」
「相変わらずねー、ゼネテスは」
ゼネテスの軽口にらしくなくうろたえるザギヴ。 助け舟かわりに私が話す。 それで幾分落ち着いたのか、ザギヴがいつもの調子に戻って話し出す。
「あなた、どうしてこんな所に? ロストールの状況はどうなっているの?」
「ああ、それなんだが…。 少し頼みがあってきたんだ」
「何かしら。 ファーロス国防総司令殿直々とは怖いわね。 ここで話すの?」
「いや城に行ったら、『巡察に出た』って言われたんでな」
「? じゃあ、正式な国家要請なの? なのにハンナを連れてきたの?」
思わず口を出す。 するとゼネテスは頭を掻きながら苦笑して言う。
「あー…その、それは…」
「わたしがゼネテスにたのんだのよ。 つれてって、て」
「どうして?」
「それは…」
「こらこらハンナ、言ったろ? それはここでは言わないでくれ」
「仕方ないわね、城に戻りましょう」
ため息をついてザギヴがゼネテスとハンナを見、私の方を向き頷く。
「そうね。 では陛下、ゼネテス閣下。 城までご案内致します」
「わたしは?」
「ごめんなさい、後でね」
そうハンナに謝ると、ゼネテスが口を出す。
「いや、ハンナは使者だ。 俺は使者の護衛とフォローってところかな」
「その子が使者?」
「ああ。 冗談じゃあねえよ」
眉をひそめるザギヴ。 私も腑に落ちないが、自分の役割に従う。
「では陛下、ゼネテス閣下、使者ハンナ様。 城までご案内致します」
「近衛将軍直々の護衛とは痛み入るね」
「よく言うわよ」
偽りの神となったエルファスを倒し世界の人々にソウルが戻った後、ザギヴはネメアさんの意向によりディンガル帝国皇帝に即位し、私はその近衛将軍となった。
ネメアさんは皇帝をザギヴに任せると自分はどこかに消えてしまった。 ベルゼーヴァは宰相を辞そうとしたが、ネメアさんの指示でいまだディンガルの要である。
皇帝になったザギヴはまずロストールと終戦し友好同盟を結び、主だった者の亡くなったロストールを援助した。
カルラは嫌がったが、最終的には渋々従った。 彼女も今では国防の最高司令官になり、相手のいない軍隊に厳しく修練させている。 たまに会いに行くと相変わらずでこっちを困らせては笑っている。
ロストールはディンガルの支援を受けていても状況は極めて困難の様子を見せていて、復興がうまく進んでいない。
新女王の下、階級社会の撤廃を望んではいるが、人材不足のため国の復興が遅れていてそこまで手が回らないのだ。
「それでは聞きましょうか」
「現在のロストールの状況は知っての通りだ。 今だ復興は芳しくない。 ディンガルの支援に感謝はしているが、人材不足はどうにもならない」
姿勢こそ直立であるものの、口調はざっくばらん。 状況が変わったにも関わらずゼネテスは変わらないようで、私は口元を緩める。
「民衆の支持を得てはいるが、新女王はそもそも目のハンデから抜けたばかりでまだ政務に携わるには時間がかかる。 エストもよくやってくれてはいるが、もともとが学者なだけに手際が悪い」
「…なるほど。 アイリーンは?」
「彼女は俺の下で国防及び国内警備だ。 政務とは関係無い。 …ま、民衆の代表的位置付けだから、苦労はしてるだろうがね」
アイリーンがんばってるのか。 不器用な彼女が暴れているのが目に浮かぶ。
「で、仕方ないから形になるまで俺が政務の方に取り掛かりたいんだが、アイリーンは感情的になりやすいんで国防関係を完全に任せられない。 そこでお願いがある」
「…何なの?」
「人をしばらく借りたい」
それを聞くとザギヴはため息をつく。
「ディンガルも人材不足は変わらないわ。 支援だけでも感謝して欲しいところだけど?」
「いやそれはわかってる。 ただロストールの連中はあまりにも幼く拙い。 陛下や宰相閣下、そしてカルラ総司令とは比べようも無い」
「そうかもしれないけど…」
「ひと月、それも人材は一人でいい。 それで頼めないだろうか?」
「宰相も総司令も動かせないわよ」
「いや、彼らは求めてない」
「当然私も無理よ」
「わかってる。 そんな無理を言いやしないさ」
「それなら…」
仕方ないという表情でザギヴが頷く。 それなりの支援をしているわけだし、これ以上ロストールの復興が遅れるのは見過ごすわけにはいかない。
「そうかっ。 …では改めて女王よりの要請を報告致します」
「?」
ザギヴの返事を聞くや、ゼネテスが口調を変える。 その態度にザギヴも私もいぶかしむ。
「ロストール女王、アトレイア・リュー。 並びに政務補佐、エスト・リューガの能力補佐に国防総司令ゼネテス・ファーロスを一時的に執務次官に専任するにあたり、ディンガル帝国の精鋭の協力を要請します」
ゼネテスが宣言するかのように高らかと話す。
「国防総司令副官、アイリーン・エルメスの監査及び指導のため、ディンガル帝国近衛将軍、エレンディア・ロス殿の派遣を望みます」
「なっ!?」
「はっ? わ、私!?」
唐突に自分の名前が呼ばれ驚く。 だけど、ザギヴの方がよっぽど驚いていた。
「だ、だめよっ! エレンディアはだめよっ!」
「先程皇帝陛下の許可を伺った際に、名前の上がった方々の中に近衛将軍は入っていなかったので問題はないかと」
しれっとした顔でゼネテスが言う。
「そ、あ…、こ、近衛将軍は私の警護を任されていますっ。 そうそう任を離れてもらうわけにはいきませんっ!」
「しかし近衛将軍にも部下くらいはいるでしょう。 わずかひと月の間ですので、その間くらいなら問題は無いと思われますが。 どうでしょうか、宰相閣下」
ずっと黙って聞いていたベルゼーヴァは、ザギヴとゼネテスを見てため息混じりに口を開く。
「確かに問題はないでしょう」
「え、そ、そんなことっ…。 ベルゼーヴァ様!?」
「陛下は少々近衛将軍に頼りすぎなきらいがあります。 少し離れる点については賛成でもあります」
「エレンディアっ!?」
ザギヴが心細そうな顔で私を見つめる。 いつもなら二人きりの時くらいしかこんな顔見せない彼女が珍しい。 それだけ信頼されていることは素直に嬉しい。
「ほら、ハンナ。 ここで言うんだ」
「う、うん…」
さっきから居心地悪そうにしてゼネテスの後ろに隠れていたハンナをゼネテスが前に押し出す。
「エレンディア、ろすとーるにあそびにきて? みんなあいたがってるよ? アトレイアもあいたいって」
ハンナがじっと私を見つめて訴える。 うう、こんなのなんて答えろって言うのよ…って、ゼネテスったら、だからハンナを!
どうやらザギヴも気づいたらしく、露骨に不快そうな顔をしてゼネテスを睨む。 しかしゼネテスは素知らぬ顔で受け流している。
結局私はロストールに行くことになった。
道中、ハンナの手を引いて歩きながら私はゼネテスに言う。
「あーいうやり方ってよくないと思うなー。 あの後ザギヴ荒れてたわよー」
「ははっ、泣かしちまったか。 それはマズかったな」
「怒ってたのよ。 どんな仕返しするかわかんないわよ、彼女」
「かー、怖いね。 …ま、だけどさ、これしか手が浮かばなかったんだ。 お前さんを連れ帰る手段が」
頭を掻きながら苦笑を浮かべゼネテスは言う。
「アトレイアにお前さんを連れてきて欲しい、って頼まれたもののどうすればいいか困ってなあ…。 困ってスラムで飲んでて、出たところでハンナに会って…てなわけさ」
「わたしもエレンディアにあいたかったもん」
「まあ、そりゃあ私だって皆には会いたいとは思っていたけどさ。 うーん、ザギヴ大丈夫かなー」
旅立つ時城門前まで私を見送ってくれた彼女の淋しそうな顔が思い浮かばれてくる。
「彼女はなんだかんだ言ったって強いから平気だろうさ。 ベルゼーヴァもいるしな」
「そうだけど…」
「…」
ふと気づくとゼネテスが私をじっと見つめている。
「どうかした?」
尋ねると視線を逸らしてゼネテスは言う。
「…ま、アレだ。 こっちにも甘えん坊がいるから、しばらくはそっちに気を回してくれ。 お前さんが甘えん坊にしたんだからな」
「私なのかな?」
「はあ…。 そりゃ本気で言ってんのかい? お前さんは手に負えないな」
「ちょ、ちょっとっ。 何よ、それ」
ひどく人聞きの悪いことを言われる。 心外ですね。 …と思ったが、先日カルラが言ってたことを思い出す。
『エレンディアはさー。 誰彼構わずちょっかい出すんだよねー。 ひどいよねー』
『何よ、それ。 どういう意味よ』
『自覚無いのが手に負えないっての。 振り回される身にもなってもらいたいってー』
『私が、あなたに、振り回されてるのっ』
『ちっちっち。 ぜーんぜんわかってない。 あたしも振り回されてるんだってば、エレンディアには』
『どう振り回されてるって言うのよ』
『あたしの口からは言いづらいよねー。 一応振り回されてる内の一人だし』
『もうー。 何言ってるのかわかんないわよ』
…なんか同じ事言われてる? 皆ひどい…。 私が何したって言うのよ。
「ディンガル帝国近衛将軍、エレンディア・ロス殿をお連れしました」
随分と久方ぶりに訪れたロストール王宮は閑散としていた。 主だった者達は亡くなり、階級社会の撤廃を望んでいるからだとは思うが、なんだか淋しい気分になる。
「エレンディア様っ」
玉座にいた美しい少女が走り寄ってくる。 ロストールの新女王、アトレイア・リューだ。
「ふふ、久しぶり。 アトレイア」
胸に飛び込んだアトレイアを抱きしめ、私は囁く。
「エレンディア様ひどいです…。 あれから全然会いに来てくださらないなんて…」
「あはは…、ごめんね。 私も近衛将軍になったから前みたいには自由に動けるわけじゃないのよ」
「…どうしてディンガルの将軍になられたのですか?」
「えっと、それは…」
返答に困り、アトレイアから視線を逸らす。 どうしてって…えっと…。
「『陛下』。 あまり客人を困らせるもんじゃないぜ。 とりあえずひと月はいてくださるんだ、十分話す時間はあるだろ」
困り果てていると、ゼネテスが助け舟を出してくれた。
「あ、ゼネテス様…そう、そうですね。 ごめんなさい、エレンディア様。 私ったらエレンディア様に会えたのが嬉しくって…」
「…うん。 私もアトレイアに会えて嬉しいわよ? だから謝らないで、ね?」
「エレンディア様…」
うっすらと頬を赤らめアトレイアが熱っぽく私を見つめる。
「さあ陛下。 こちらも約束を果たしたし、しっかりやってもらわないと困るぜ?」
「あ…は、はいっ」
横からかかったゼネテスの声に、アトレイアは満面の笑みで答えた。
そしてそれから、とやかく理由をつけてロストールに連れて来られたものの、実際には私はただのお客様となっていた。
一応便宜上はアイリーン国防総司令代理の監督と言うことだが、彼女も青竜軍副将をやっていただけあって私が口を出す必要もない。 ま、たまに感情的になりやすい彼女にブレーキはかけるけど、特別することもなく、何かとアトレイアの所に顔を出してばかりの日々。
「どうですか、エレンディア様? 私少しはうまくなったでしょうか?」
今日も今日とてアトレイアお手製のお菓子を食べていたりする。
「『少し』じゃないわよ、『かなり』よ。 本当おいしい、凄いわねー、アトレイアは。 …って、あ、女王様は」
「やめてください。 エレンディア様にそう呼ばれるのは私嫌です」
拗ねた様子で私を睨む。 その顔を見て私は知らず微笑む。
「もう、エレンディア様っ。 どうして笑うんですのっ?」
「…うん、なんだろう…嬉しいなって思って、ね」
「どういう…ことですの?」
怪訝そうな顔でアトレイアが私に尋ねる。
「出会った時、アトレイアはきれいだけど陰が差していた。 それを越えたらすぐにまたいろいろな出来事があって、アトレイアはたいへんになっちゃって…」
「…」
「悲しい別れもあって、突然の重責もかかって、また陰が差してしまうんじゃないかなって不安だった。 だけど今こうして会って話してて、こんなにいろんな表情でかわいくなってて、本当嬉しいな、って思って」
もちろん実際私の見てない所で苦しんでいたりもするかもしれない。 だけど、こんな顔ができるのであれば、再び陰が差すことはないだろう。
「初めて会った時思ったもの、こんなきれいな子がこんな所で寂しそうにしてるなんておかしいって。 こんなきれいな子はもっといろんな人に愛されるべきだって」
「そ、そんな…エレンディア様」
「私は…こんなだから、あなたはもっと輝いてて欲しいの。 私がなれない眩しいくらいのいい女でいて、アトレイア」
例えるなら宝石。 輝く宝石は人の目を惹きつける。 私の目を奪う、心を惹きつける、そんな存在でいて欲しい。
「………」
「アトレイア?」
「…エレンディア様はご自分を理解されていませんわ」
アトレイアが私を真っ直ぐに、そして熱っぽく見つめ少し怒ったように言う。
「え?」
「エレンディア様こそ眩しいくらいに輝いてます。 そしていろんな方に愛されています」
言いながらアトレイアが椅子を離れ、ゆっくりと私に近寄る。
「…もちろん、私も愛しております」
そう言ってうっすら頬を染めたアトレイアは私に抱きつく。 座っているところに抱きつかれ、私は支えきれず椅子ごと倒れる。
「あ、たた…。 えっと、アトレイア大丈、夫?」
覆いかぶさるような体制のままアトレイアが私の顔を覗き込んでいる。
「エレンディア様、私は…」
「失礼するわっ!」
唐突に勢いよく扉が開かれる。
「きゃっ」
「何っ!?」
あわててそちらに目を向けると、扉のところでザギヴが怒った顔で睨んでいて、その後ろに困った顔で頭をかくゼネテスと呆れ顔のカルラがいた。
「あれ? えっと…ザギヴ、どうしたの?」
「どうしたの、ですって? それは私の台詞っ。 あなたいったい何をしてるの!? 何それはっ!」
「え? あ、ああ、今倒れちゃってね」
そっとアトレイアが離れる。
「まーまー、落ち着きなさいよ、陛下。 らしくないわよん」
カルラがザギヴに声をかける。 立場的には不適当な言い方の気もするけどカルラはやめない。 でもそこがカルラのいい所でもある。
「ん…そうね。 …突然に失礼したわ、アトレイア女王。 今日はロストールの復興の様子の確認と近衛将軍の仕事ぶりを見に来たのだけど、近衛将軍は女王と歓談中と聞いたので失礼させてもらったわ」
「それはようこそいらっしゃいました」
女王の顔になって挨拶を返すアトレイア。 私といる時との違いに驚いたけど、よく考えれば当然のこと。
「今将軍には休憩していただいていた所ですわ」
「休憩、ね」
カルラがニヤニヤ笑いながら私を見る。 何よ、何か言いたいわけ?
「…」
ザギヴが私とアトレイアを交互に睨み、口を開く。
「先ほど国防総司令代理アイリーン・エルメス殿の仕事ぶりは拝見させていただきました。 十分な仕事ぶりに関心させられましたわ。 もう将軍の力は必要としていないんじゃないのかしら?」
「お褒めに預かり恐悦至極です。 けれどアイリーン様はまだまだ未熟。 将軍様のお力に頼る部分が大きいです。 どうぞお約束の期日までお待ちください」
…えっと、なんか変な空気になってるような……。
「けれど実際アイリーン殿はディンガルで副将軍を務めた事のある方、そこまで補佐を必要とするのでしょうか?」
「今は軍ではなく国を相手にしていますので。 規模が大きくなった分負担が大きく変わっておりますでしょう? それは皇帝陛下も十分ご理解されているかと存じます」
「…しかし、あの有能な方がそこまで時間を必要とするのでしょうか?」
「普段であればファーロス卿の力も借りられますが、そうはいかないためにご協力をいただいております。 どうぞ長期的視野でお願いいたします」
「…」
「…」
睨みあいを続ける二人からそっと離れ、私はカルラとゼネテスに近寄る。
「…どうしよう?」
「いや、そう言われてもな」
困った顔で頭をかくゼネテス。 するとカルラが私を見て言った。
「だから言ったでしょ? みんなあんたに振り回されてる、ってさ」
「…私が何したって言うのよー…」
「自覚がないから救いがないやね。 そう思わない? ゼネテス」
「まあな。 これじゃ誰も報われんさ」
ひどい言われようにもほどがあると思うんだけど、どうなのかな二人とも?
「埒があかないわね。 もう十分だと思います。 近衛将軍、帰りましょう」
「あら。 エレンディア様はお仕事放棄なんてなさいませんわよね?」
「ほらお呼びよ」
カルラが私の背中を押す。
「ちょ、ちょっとっ。 あ、あの、二人とも落ち着いてさ…」
「エレンディアっ!」
「エレンディア様っ!」
世界の平穏は訪れても、私の平穏はまだまだ遠いみたい…
(終)
「そうね」
「傷跡は小さくないけれど、これなら…」
あちこちに活気のある声が聞こえる。 明日を生きる人々の姿を見ながら、エンシャントの街をザギヴと二人で歩く。
巡察している内に街はずれの方、墓地の近くまで歩いてきてしまった。
「あ、へいかー」
小さな女の子が笑顔で寄ってきて、手に持った花を差し出す。
「おはな、あげるー」
「ありがとう。 きれいなお花ね」
しゃがんで女の子と話す。
「はい。 エレンディアにもあげるー」
「ありがとう…って…。 あなた…ハンナ? あれ? どうしてここにいるの?」
花を差し出す女の子に見覚えがある気がしていたが、実際知っている女の子であった。 ロストールのスラムで知り合ったその子の名はハンナといった。
「エレンディアにあいにきたのよ」
「えっ、私に? どうやってここまで?」
「それは俺が連れてきたんだ」
不意にかかった声に顔を上げると、少し離れた場所に立つ見知った顔。
「ゼネテス!?」
「デートの邪魔をする気は無かったんだがな。 すまないな、陛下」
「あ、そ、そんな、その。 な、何なの、あなたっ」
「相変わらずねー、ゼネテスは」
ゼネテスの軽口にらしくなくうろたえるザギヴ。 助け舟かわりに私が話す。 それで幾分落ち着いたのか、ザギヴがいつもの調子に戻って話し出す。
「あなた、どうしてこんな所に? ロストールの状況はどうなっているの?」
「ああ、それなんだが…。 少し頼みがあってきたんだ」
「何かしら。 ファーロス国防総司令殿直々とは怖いわね。 ここで話すの?」
「いや城に行ったら、『巡察に出た』って言われたんでな」
「? じゃあ、正式な国家要請なの? なのにハンナを連れてきたの?」
思わず口を出す。 するとゼネテスは頭を掻きながら苦笑して言う。
「あー…その、それは…」
「わたしがゼネテスにたのんだのよ。 つれてって、て」
「どうして?」
「それは…」
「こらこらハンナ、言ったろ? それはここでは言わないでくれ」
「仕方ないわね、城に戻りましょう」
ため息をついてザギヴがゼネテスとハンナを見、私の方を向き頷く。
「そうね。 では陛下、ゼネテス閣下。 城までご案内致します」
「わたしは?」
「ごめんなさい、後でね」
そうハンナに謝ると、ゼネテスが口を出す。
「いや、ハンナは使者だ。 俺は使者の護衛とフォローってところかな」
「その子が使者?」
「ああ。 冗談じゃあねえよ」
眉をひそめるザギヴ。 私も腑に落ちないが、自分の役割に従う。
「では陛下、ゼネテス閣下、使者ハンナ様。 城までご案内致します」
「近衛将軍直々の護衛とは痛み入るね」
「よく言うわよ」
偽りの神となったエルファスを倒し世界の人々にソウルが戻った後、ザギヴはネメアさんの意向によりディンガル帝国皇帝に即位し、私はその近衛将軍となった。
ネメアさんは皇帝をザギヴに任せると自分はどこかに消えてしまった。 ベルゼーヴァは宰相を辞そうとしたが、ネメアさんの指示でいまだディンガルの要である。
皇帝になったザギヴはまずロストールと終戦し友好同盟を結び、主だった者の亡くなったロストールを援助した。
カルラは嫌がったが、最終的には渋々従った。 彼女も今では国防の最高司令官になり、相手のいない軍隊に厳しく修練させている。 たまに会いに行くと相変わらずでこっちを困らせては笑っている。
ロストールはディンガルの支援を受けていても状況は極めて困難の様子を見せていて、復興がうまく進んでいない。
新女王の下、階級社会の撤廃を望んではいるが、人材不足のため国の復興が遅れていてそこまで手が回らないのだ。
「それでは聞きましょうか」
「現在のロストールの状況は知っての通りだ。 今だ復興は芳しくない。 ディンガルの支援に感謝はしているが、人材不足はどうにもならない」
姿勢こそ直立であるものの、口調はざっくばらん。 状況が変わったにも関わらずゼネテスは変わらないようで、私は口元を緩める。
「民衆の支持を得てはいるが、新女王はそもそも目のハンデから抜けたばかりでまだ政務に携わるには時間がかかる。 エストもよくやってくれてはいるが、もともとが学者なだけに手際が悪い」
「…なるほど。 アイリーンは?」
「彼女は俺の下で国防及び国内警備だ。 政務とは関係無い。 …ま、民衆の代表的位置付けだから、苦労はしてるだろうがね」
アイリーンがんばってるのか。 不器用な彼女が暴れているのが目に浮かぶ。
「で、仕方ないから形になるまで俺が政務の方に取り掛かりたいんだが、アイリーンは感情的になりやすいんで国防関係を完全に任せられない。 そこでお願いがある」
「…何なの?」
「人をしばらく借りたい」
それを聞くとザギヴはため息をつく。
「ディンガルも人材不足は変わらないわ。 支援だけでも感謝して欲しいところだけど?」
「いやそれはわかってる。 ただロストールの連中はあまりにも幼く拙い。 陛下や宰相閣下、そしてカルラ総司令とは比べようも無い」
「そうかもしれないけど…」
「ひと月、それも人材は一人でいい。 それで頼めないだろうか?」
「宰相も総司令も動かせないわよ」
「いや、彼らは求めてない」
「当然私も無理よ」
「わかってる。 そんな無理を言いやしないさ」
「それなら…」
仕方ないという表情でザギヴが頷く。 それなりの支援をしているわけだし、これ以上ロストールの復興が遅れるのは見過ごすわけにはいかない。
「そうかっ。 …では改めて女王よりの要請を報告致します」
「?」
ザギヴの返事を聞くや、ゼネテスが口調を変える。 その態度にザギヴも私もいぶかしむ。
「ロストール女王、アトレイア・リュー。 並びに政務補佐、エスト・リューガの能力補佐に国防総司令ゼネテス・ファーロスを一時的に執務次官に専任するにあたり、ディンガル帝国の精鋭の協力を要請します」
ゼネテスが宣言するかのように高らかと話す。
「国防総司令副官、アイリーン・エルメスの監査及び指導のため、ディンガル帝国近衛将軍、エレンディア・ロス殿の派遣を望みます」
「なっ!?」
「はっ? わ、私!?」
唐突に自分の名前が呼ばれ驚く。 だけど、ザギヴの方がよっぽど驚いていた。
「だ、だめよっ! エレンディアはだめよっ!」
「先程皇帝陛下の許可を伺った際に、名前の上がった方々の中に近衛将軍は入っていなかったので問題はないかと」
しれっとした顔でゼネテスが言う。
「そ、あ…、こ、近衛将軍は私の警護を任されていますっ。 そうそう任を離れてもらうわけにはいきませんっ!」
「しかし近衛将軍にも部下くらいはいるでしょう。 わずかひと月の間ですので、その間くらいなら問題は無いと思われますが。 どうでしょうか、宰相閣下」
ずっと黙って聞いていたベルゼーヴァは、ザギヴとゼネテスを見てため息混じりに口を開く。
「確かに問題はないでしょう」
「え、そ、そんなことっ…。 ベルゼーヴァ様!?」
「陛下は少々近衛将軍に頼りすぎなきらいがあります。 少し離れる点については賛成でもあります」
「エレンディアっ!?」
ザギヴが心細そうな顔で私を見つめる。 いつもなら二人きりの時くらいしかこんな顔見せない彼女が珍しい。 それだけ信頼されていることは素直に嬉しい。
「ほら、ハンナ。 ここで言うんだ」
「う、うん…」
さっきから居心地悪そうにしてゼネテスの後ろに隠れていたハンナをゼネテスが前に押し出す。
「エレンディア、ろすとーるにあそびにきて? みんなあいたがってるよ? アトレイアもあいたいって」
ハンナがじっと私を見つめて訴える。 うう、こんなのなんて答えろって言うのよ…って、ゼネテスったら、だからハンナを!
どうやらザギヴも気づいたらしく、露骨に不快そうな顔をしてゼネテスを睨む。 しかしゼネテスは素知らぬ顔で受け流している。
結局私はロストールに行くことになった。
道中、ハンナの手を引いて歩きながら私はゼネテスに言う。
「あーいうやり方ってよくないと思うなー。 あの後ザギヴ荒れてたわよー」
「ははっ、泣かしちまったか。 それはマズかったな」
「怒ってたのよ。 どんな仕返しするかわかんないわよ、彼女」
「かー、怖いね。 …ま、だけどさ、これしか手が浮かばなかったんだ。 お前さんを連れ帰る手段が」
頭を掻きながら苦笑を浮かべゼネテスは言う。
「アトレイアにお前さんを連れてきて欲しい、って頼まれたもののどうすればいいか困ってなあ…。 困ってスラムで飲んでて、出たところでハンナに会って…てなわけさ」
「わたしもエレンディアにあいたかったもん」
「まあ、そりゃあ私だって皆には会いたいとは思っていたけどさ。 うーん、ザギヴ大丈夫かなー」
旅立つ時城門前まで私を見送ってくれた彼女の淋しそうな顔が思い浮かばれてくる。
「彼女はなんだかんだ言ったって強いから平気だろうさ。 ベルゼーヴァもいるしな」
「そうだけど…」
「…」
ふと気づくとゼネテスが私をじっと見つめている。
「どうかした?」
尋ねると視線を逸らしてゼネテスは言う。
「…ま、アレだ。 こっちにも甘えん坊がいるから、しばらくはそっちに気を回してくれ。 お前さんが甘えん坊にしたんだからな」
「私なのかな?」
「はあ…。 そりゃ本気で言ってんのかい? お前さんは手に負えないな」
「ちょ、ちょっとっ。 何よ、それ」
ひどく人聞きの悪いことを言われる。 心外ですね。 …と思ったが、先日カルラが言ってたことを思い出す。
『エレンディアはさー。 誰彼構わずちょっかい出すんだよねー。 ひどいよねー』
『何よ、それ。 どういう意味よ』
『自覚無いのが手に負えないっての。 振り回される身にもなってもらいたいってー』
『私が、あなたに、振り回されてるのっ』
『ちっちっち。 ぜーんぜんわかってない。 あたしも振り回されてるんだってば、エレンディアには』
『どう振り回されてるって言うのよ』
『あたしの口からは言いづらいよねー。 一応振り回されてる内の一人だし』
『もうー。 何言ってるのかわかんないわよ』
…なんか同じ事言われてる? 皆ひどい…。 私が何したって言うのよ。
「ディンガル帝国近衛将軍、エレンディア・ロス殿をお連れしました」
随分と久方ぶりに訪れたロストール王宮は閑散としていた。 主だった者達は亡くなり、階級社会の撤廃を望んでいるからだとは思うが、なんだか淋しい気分になる。
「エレンディア様っ」
玉座にいた美しい少女が走り寄ってくる。 ロストールの新女王、アトレイア・リューだ。
「ふふ、久しぶり。 アトレイア」
胸に飛び込んだアトレイアを抱きしめ、私は囁く。
「エレンディア様ひどいです…。 あれから全然会いに来てくださらないなんて…」
「あはは…、ごめんね。 私も近衛将軍になったから前みたいには自由に動けるわけじゃないのよ」
「…どうしてディンガルの将軍になられたのですか?」
「えっと、それは…」
返答に困り、アトレイアから視線を逸らす。 どうしてって…えっと…。
「『陛下』。 あまり客人を困らせるもんじゃないぜ。 とりあえずひと月はいてくださるんだ、十分話す時間はあるだろ」
困り果てていると、ゼネテスが助け舟を出してくれた。
「あ、ゼネテス様…そう、そうですね。 ごめんなさい、エレンディア様。 私ったらエレンディア様に会えたのが嬉しくって…」
「…うん。 私もアトレイアに会えて嬉しいわよ? だから謝らないで、ね?」
「エレンディア様…」
うっすらと頬を赤らめアトレイアが熱っぽく私を見つめる。
「さあ陛下。 こちらも約束を果たしたし、しっかりやってもらわないと困るぜ?」
「あ…は、はいっ」
横からかかったゼネテスの声に、アトレイアは満面の笑みで答えた。
そしてそれから、とやかく理由をつけてロストールに連れて来られたものの、実際には私はただのお客様となっていた。
一応便宜上はアイリーン国防総司令代理の監督と言うことだが、彼女も青竜軍副将をやっていただけあって私が口を出す必要もない。 ま、たまに感情的になりやすい彼女にブレーキはかけるけど、特別することもなく、何かとアトレイアの所に顔を出してばかりの日々。
「どうですか、エレンディア様? 私少しはうまくなったでしょうか?」
今日も今日とてアトレイアお手製のお菓子を食べていたりする。
「『少し』じゃないわよ、『かなり』よ。 本当おいしい、凄いわねー、アトレイアは。 …って、あ、女王様は」
「やめてください。 エレンディア様にそう呼ばれるのは私嫌です」
拗ねた様子で私を睨む。 その顔を見て私は知らず微笑む。
「もう、エレンディア様っ。 どうして笑うんですのっ?」
「…うん、なんだろう…嬉しいなって思って、ね」
「どういう…ことですの?」
怪訝そうな顔でアトレイアが私に尋ねる。
「出会った時、アトレイアはきれいだけど陰が差していた。 それを越えたらすぐにまたいろいろな出来事があって、アトレイアはたいへんになっちゃって…」
「…」
「悲しい別れもあって、突然の重責もかかって、また陰が差してしまうんじゃないかなって不安だった。 だけど今こうして会って話してて、こんなにいろんな表情でかわいくなってて、本当嬉しいな、って思って」
もちろん実際私の見てない所で苦しんでいたりもするかもしれない。 だけど、こんな顔ができるのであれば、再び陰が差すことはないだろう。
「初めて会った時思ったもの、こんなきれいな子がこんな所で寂しそうにしてるなんておかしいって。 こんなきれいな子はもっといろんな人に愛されるべきだって」
「そ、そんな…エレンディア様」
「私は…こんなだから、あなたはもっと輝いてて欲しいの。 私がなれない眩しいくらいのいい女でいて、アトレイア」
例えるなら宝石。 輝く宝石は人の目を惹きつける。 私の目を奪う、心を惹きつける、そんな存在でいて欲しい。
「………」
「アトレイア?」
「…エレンディア様はご自分を理解されていませんわ」
アトレイアが私を真っ直ぐに、そして熱っぽく見つめ少し怒ったように言う。
「え?」
「エレンディア様こそ眩しいくらいに輝いてます。 そしていろんな方に愛されています」
言いながらアトレイアが椅子を離れ、ゆっくりと私に近寄る。
「…もちろん、私も愛しております」
そう言ってうっすら頬を染めたアトレイアは私に抱きつく。 座っているところに抱きつかれ、私は支えきれず椅子ごと倒れる。
「あ、たた…。 えっと、アトレイア大丈、夫?」
覆いかぶさるような体制のままアトレイアが私の顔を覗き込んでいる。
「エレンディア様、私は…」
「失礼するわっ!」
唐突に勢いよく扉が開かれる。
「きゃっ」
「何っ!?」
あわててそちらに目を向けると、扉のところでザギヴが怒った顔で睨んでいて、その後ろに困った顔で頭をかくゼネテスと呆れ顔のカルラがいた。
「あれ? えっと…ザギヴ、どうしたの?」
「どうしたの、ですって? それは私の台詞っ。 あなたいったい何をしてるの!? 何それはっ!」
「え? あ、ああ、今倒れちゃってね」
そっとアトレイアが離れる。
「まーまー、落ち着きなさいよ、陛下。 らしくないわよん」
カルラがザギヴに声をかける。 立場的には不適当な言い方の気もするけどカルラはやめない。 でもそこがカルラのいい所でもある。
「ん…そうね。 …突然に失礼したわ、アトレイア女王。 今日はロストールの復興の様子の確認と近衛将軍の仕事ぶりを見に来たのだけど、近衛将軍は女王と歓談中と聞いたので失礼させてもらったわ」
「それはようこそいらっしゃいました」
女王の顔になって挨拶を返すアトレイア。 私といる時との違いに驚いたけど、よく考えれば当然のこと。
「今将軍には休憩していただいていた所ですわ」
「休憩、ね」
カルラがニヤニヤ笑いながら私を見る。 何よ、何か言いたいわけ?
「…」
ザギヴが私とアトレイアを交互に睨み、口を開く。
「先ほど国防総司令代理アイリーン・エルメス殿の仕事ぶりは拝見させていただきました。 十分な仕事ぶりに関心させられましたわ。 もう将軍の力は必要としていないんじゃないのかしら?」
「お褒めに預かり恐悦至極です。 けれどアイリーン様はまだまだ未熟。 将軍様のお力に頼る部分が大きいです。 どうぞお約束の期日までお待ちください」
…えっと、なんか変な空気になってるような……。
「けれど実際アイリーン殿はディンガルで副将軍を務めた事のある方、そこまで補佐を必要とするのでしょうか?」
「今は軍ではなく国を相手にしていますので。 規模が大きくなった分負担が大きく変わっておりますでしょう? それは皇帝陛下も十分ご理解されているかと存じます」
「…しかし、あの有能な方がそこまで時間を必要とするのでしょうか?」
「普段であればファーロス卿の力も借りられますが、そうはいかないためにご協力をいただいております。 どうぞ長期的視野でお願いいたします」
「…」
「…」
睨みあいを続ける二人からそっと離れ、私はカルラとゼネテスに近寄る。
「…どうしよう?」
「いや、そう言われてもな」
困った顔で頭をかくゼネテス。 するとカルラが私を見て言った。
「だから言ったでしょ? みんなあんたに振り回されてる、ってさ」
「…私が何したって言うのよー…」
「自覚がないから救いがないやね。 そう思わない? ゼネテス」
「まあな。 これじゃ誰も報われんさ」
ひどい言われようにもほどがあると思うんだけど、どうなのかな二人とも?
「埒があかないわね。 もう十分だと思います。 近衛将軍、帰りましょう」
「あら。 エレンディア様はお仕事放棄なんてなさいませんわよね?」
「ほらお呼びよ」
カルラが私の背中を押す。
「ちょ、ちょっとっ。 あ、あの、二人とも落ち着いてさ…」
「エレンディアっ!」
「エレンディア様っ!」
世界の平穏は訪れても、私の平穏はまだまだ遠いみたい…
(終)
「で、今日が答え発表の日なんだけど…」
「どうかしたって言うの?」
「わたし後から気づいたんだけど、答えは翌日、って書いちゃったってことは必ず更新しなくちゃいけないってことだったんだよね」
「当たり前でしょ。 そんなことも考えずに書いたと言うの?」
「うう…でもだって期間終わったらすぐに答え、って思うでしょ?」
「それはそうね」
「でも答え発表がイコール更新とは考えてなかったんだよー」
「本当あなたは考えの足りない不出来な子ね」
「だったらノゾミちゃんあの時言ってくれればよかったのに」
「そんなことわざわざ言う必要がないから言わなかったのよっ」
「ううー」
「それで正解なんだけど、『望みある限り』が正解でしたー」
「ふふふ、まあ当然のことね」
「当然、ってノゾミちゃん言うけど、一応ここは葛ちゃんを一番応援してるんだけど…」
「あんな小娘なんかのどこがいいって言うのっ。 私の方がよっぽどいいのではなくて?」
「いやもちろんノゾミちゃんも好きだけど。 でも葛ちゃんもかわいいよ?」
「あんな10年かそこら生きた小娘よりも私の方がいいに決まっているじゃないのっ。 それにあの力でいつ桂の血を求めてくるかわかったものじゃないわっ」
「貴様だって鬼だろうに」
「ど、どこから現れたのよっ、あなたっ」
「いつでもどこであろうとも桂さんを鬼から守る。 私は私の誓いのためにここにいる」
「…答えになっていないのではなくて?」
「参加してくれる人が少ないのは予想してたんだけど、正解者が出ないのは予想してなかったよね」
「まあ不自然だったからじゃないかな」
「どこが不自然だと言うの? これ以上ないくらいわかりやすいのではなくて?」
「鬼と話す気はないっ」
「だったらさっさといなくなればいいのではなくて? あなたのことなんか呼んでもいないわっ」
「…ふっ。 千羽は鬼切りが生業、いっそ今すぐにでも冥土へといざなってくれよう…」
「ちょ、ちょっと烏月さん落ち着いてよっ」
「キャラクターで、ってことなら葛ちゃんが好きなんだけど、話はこの話が一番好きなんだ」
「私の話だもの。 当然でしょう」
「話をよく聞くんだな、愚かな鬼ふぜいが」
「自分の中で考えてたノゾミちゃんを十分に書けた気がするんだよ。 抱えてた思いや望みとか。 それに、私以外の主観ってのも少ないしね」
「必ずしも出来がいいとは限らないけれど、本人のみの感性による部分の話だね」
「わ、私がこう思ってるとは限らないわよっ」
「貴様は人の話を聞いていないのか? 繰り言を口にするのはやめないか」
「でもね。 基準があいまいでヒントもなかったから正解者は出なかったんだよね」
「それは仕方のないことだよ、桂さん。 あまり自分のせいにするのはよくないよ」
「よかったのではなくて? どうせ正解者への見返りも考えていなかったのだから」
「ノゾミちゃん、それは言わない約束だよ」
「私そんな約束していないわ」
「うう、ノゾミちゃんにすらわかってもらえない…」
「あなた何を言っているの?」
「誤解のないように言っておくけど、全部好きではあるよ? その中でも一番好きなものだからね?」
「わかってるよ、桂さん。 心配することない」
「そうよ。 私が一番なのはわざわざ言うほどのことではないわ」
「繰り言は止めろ、と何度言えば……」
「年若い鬼切り役にはその程度のこともわからないのね」
「…」
「それで鬼切り役とは聞いてあきれるわ。 アハハハハ」
「ちょ、ちょっとノゾミちゃんっ」
「桂さん、すまない」
「え?」
「やはり役目上、私には鬼を野放しにできない」
「私とやろうと言うのね? できるかしら?」
「千羽党が鬼切り役、千羽烏月。 千羽妙見流にてお相手致すっ。 いざっ」
「ふ、二人ともやめてよーっ」
(終)
「どうかしたって言うの?」
「わたし後から気づいたんだけど、答えは翌日、って書いちゃったってことは必ず更新しなくちゃいけないってことだったんだよね」
「当たり前でしょ。 そんなことも考えずに書いたと言うの?」
「うう…でもだって期間終わったらすぐに答え、って思うでしょ?」
「それはそうね」
「でも答え発表がイコール更新とは考えてなかったんだよー」
「本当あなたは考えの足りない不出来な子ね」
「だったらノゾミちゃんあの時言ってくれればよかったのに」
「そんなことわざわざ言う必要がないから言わなかったのよっ」
「ううー」
「それで正解なんだけど、『望みある限り』が正解でしたー」
「ふふふ、まあ当然のことね」
「当然、ってノゾミちゃん言うけど、一応ここは葛ちゃんを一番応援してるんだけど…」
「あんな小娘なんかのどこがいいって言うのっ。 私の方がよっぽどいいのではなくて?」
「いやもちろんノゾミちゃんも好きだけど。 でも葛ちゃんもかわいいよ?」
「あんな10年かそこら生きた小娘よりも私の方がいいに決まっているじゃないのっ。 それにあの力でいつ桂の血を求めてくるかわかったものじゃないわっ」
「貴様だって鬼だろうに」
「ど、どこから現れたのよっ、あなたっ」
「いつでもどこであろうとも桂さんを鬼から守る。 私は私の誓いのためにここにいる」
「…答えになっていないのではなくて?」
「参加してくれる人が少ないのは予想してたんだけど、正解者が出ないのは予想してなかったよね」
「まあ不自然だったからじゃないかな」
「どこが不自然だと言うの? これ以上ないくらいわかりやすいのではなくて?」
「鬼と話す気はないっ」
「だったらさっさといなくなればいいのではなくて? あなたのことなんか呼んでもいないわっ」
「…ふっ。 千羽は鬼切りが生業、いっそ今すぐにでも冥土へといざなってくれよう…」
「ちょ、ちょっと烏月さん落ち着いてよっ」
「キャラクターで、ってことなら葛ちゃんが好きなんだけど、話はこの話が一番好きなんだ」
「私の話だもの。 当然でしょう」
「話をよく聞くんだな、愚かな鬼ふぜいが」
「自分の中で考えてたノゾミちゃんを十分に書けた気がするんだよ。 抱えてた思いや望みとか。 それに、私以外の主観ってのも少ないしね」
「必ずしも出来がいいとは限らないけれど、本人のみの感性による部分の話だね」
「わ、私がこう思ってるとは限らないわよっ」
「貴様は人の話を聞いていないのか? 繰り言を口にするのはやめないか」
「でもね。 基準があいまいでヒントもなかったから正解者は出なかったんだよね」
「それは仕方のないことだよ、桂さん。 あまり自分のせいにするのはよくないよ」
「よかったのではなくて? どうせ正解者への見返りも考えていなかったのだから」
「ノゾミちゃん、それは言わない約束だよ」
「私そんな約束していないわ」
「うう、ノゾミちゃんにすらわかってもらえない…」
「あなた何を言っているの?」
「誤解のないように言っておくけど、全部好きではあるよ? その中でも一番好きなものだからね?」
「わかってるよ、桂さん。 心配することない」
「そうよ。 私が一番なのはわざわざ言うほどのことではないわ」
「繰り言は止めろ、と何度言えば……」
「年若い鬼切り役にはその程度のこともわからないのね」
「…」
「それで鬼切り役とは聞いてあきれるわ。 アハハハハ」
「ちょ、ちょっとノゾミちゃんっ」
「桂さん、すまない」
「え?」
「やはり役目上、私には鬼を野放しにできない」
「私とやろうと言うのね? できるかしら?」
「千羽党が鬼切り役、千羽烏月。 千羽妙見流にてお相手致すっ。 いざっ」
「ふ、二人ともやめてよーっ」
(終)
「あら、アイリーン久しぶり」
「本当ご無沙汰だったわね、エレンディア。 いったいどこに行ってたの?」
「…いやー? 別にどこにも?」
「またまたぁ。 MMO始めたらしいじゃない、大方そっちに行ってたんじゃないのー?」
「んー? うん、行ってはいるけど…あんま楽しくないのよねー」
「何それ。 楽しいから行ってるんじゃないの?」
「だってお金無くて何もできないんだもん。 装備とか全然買えないし」
「バカねー、エレンディア。 お金が欲しいんだったらエンシャントに行って箱やってきなさいよー」
「…あの、カルラ様。 あれはエンシャントにしかないものなんですけど…」
「そうよ。 だからエンシャントに行けばいいじゃん」
「…カルラわかってて言ってるでしょ」
「でー? ゲームに夢中で何も書いてない、って話?」
「違うわよ。 この前アンケートに感謝、ってことでアカイイトで話書いたでしょ? ジルオールにも票は入ってたからちゃんと書くわよ」
「まさかエレンディア、これで済ますつもりじゃ…」
「そんなことしないわよ。 休止に入る前に書いてて途中で止まったままになっちゃってるのを完成させようと思ってるよ?」
「だったらこんなの書いてないでそっちを書きなさいよ」
「あのね。 こんな書こうと思っただけで書けるものと一緒にしないで欲しいんだけど。 小話は毎度たいした話じゃないけど、ちゃんと考えて書いてるんだからねー」
「でもさー、休止前からってことはひと月近くでしょ? そんなに時間かかるのー?」
「…それなんだけど、書いては消してを繰り返してて進まないんだよね…。 いまいちイメージ通りに書けないとかあってさー」
「あれさー、投票した人ががっかりする話じゃない?」
「…」
「何よ、そうなの?」
「いやでもカルラ。 うちのジルオール話に投票してくれたんだから、大丈夫なんじゃないかな?」
「まだ完成してないものの話をするのはやめた方がいいんじゃないの?」
「カルラが話を振ったからじゃない。 文句ならそっちに言ってよね」
「それでさ、四十九日が近くて忙しいのよね。 前に書けるかちょっとわからないな、って」
「ゲームやめればー?」
「イヤ」
「…なんか同じ流れをどこかで見た気がするわね」
「ところでエレンディア」
「何?」
「今のアンケートなんだけど…」
「アンケートじゃなくてクイズ」
「あれ正解したらどうなるの?」
「…何も考えてないんだけど…ダメ、かな?」
「それ言わなきゃよかったかもしんないけど、言っちゃったからダメかなー」
「そうかな?」
「それじゃあやる気にならないじゃない。 張り合いがないわよ」
「いやでも単なるお遊びだしー…。 じゃあ正解者が出たら、その人だけに小話を書くってのはどうかな?」
「それどうやんのよ」
「え? どこかフリーメールでも取得してもらってそこに送る、とか」
「意味わかんない。 なんなのそれ?」
「んー、ゴメン。 おもしろいかなって思って」
「こういうのってたいていはリクエスト受付とかじゃないの?」
「無理。 書けない話なんていくらでもあるもん」
「例えば?」
「セラが特に書けないかなー…。 どういう反応を返すか想像できないんだよねー」
「そう? わりと簡単じゃない?」
「人の話聞かないやつでシスコンにしとけばオッケーでしょ」
「そんなの書きたくないっ」
「無駄に元気でよろしい。 ま、ここの方向性的にセラを出す理由もないからいいんじゃない?」
「うーん。 戯言で出すかも」
「そうなの?」
「いや出さないとは言いたくないだけで…出すつもりはあんまり無いかな…」
「予定は未定、なわけだ」
「まあそういうわけでジルオールも書きますんで気長にお待ちいただけると助かります、というわけよ」
「待ってるかなー?」
「…そういうこと言わないでくれる?」
「なんだか全然まとまってないわね…」
(終)
「本当ご無沙汰だったわね、エレンディア。 いったいどこに行ってたの?」
「…いやー? 別にどこにも?」
「またまたぁ。 MMO始めたらしいじゃない、大方そっちに行ってたんじゃないのー?」
「んー? うん、行ってはいるけど…あんま楽しくないのよねー」
「何それ。 楽しいから行ってるんじゃないの?」
「だってお金無くて何もできないんだもん。 装備とか全然買えないし」
「バカねー、エレンディア。 お金が欲しいんだったらエンシャントに行って箱やってきなさいよー」
「…あの、カルラ様。 あれはエンシャントにしかないものなんですけど…」
「そうよ。 だからエンシャントに行けばいいじゃん」
「…カルラわかってて言ってるでしょ」
「でー? ゲームに夢中で何も書いてない、って話?」
「違うわよ。 この前アンケートに感謝、ってことでアカイイトで話書いたでしょ? ジルオールにも票は入ってたからちゃんと書くわよ」
「まさかエレンディア、これで済ますつもりじゃ…」
「そんなことしないわよ。 休止に入る前に書いてて途中で止まったままになっちゃってるのを完成させようと思ってるよ?」
「だったらこんなの書いてないでそっちを書きなさいよ」
「あのね。 こんな書こうと思っただけで書けるものと一緒にしないで欲しいんだけど。 小話は毎度たいした話じゃないけど、ちゃんと考えて書いてるんだからねー」
「でもさー、休止前からってことはひと月近くでしょ? そんなに時間かかるのー?」
「…それなんだけど、書いては消してを繰り返してて進まないんだよね…。 いまいちイメージ通りに書けないとかあってさー」
「あれさー、投票した人ががっかりする話じゃない?」
「…」
「何よ、そうなの?」
「いやでもカルラ。 うちのジルオール話に投票してくれたんだから、大丈夫なんじゃないかな?」
「まだ完成してないものの話をするのはやめた方がいいんじゃないの?」
「カルラが話を振ったからじゃない。 文句ならそっちに言ってよね」
「それでさ、四十九日が近くて忙しいのよね。 前に書けるかちょっとわからないな、って」
「ゲームやめればー?」
「イヤ」
「…なんか同じ流れをどこかで見た気がするわね」
「ところでエレンディア」
「何?」
「今のアンケートなんだけど…」
「アンケートじゃなくてクイズ」
「あれ正解したらどうなるの?」
「…何も考えてないんだけど…ダメ、かな?」
「それ言わなきゃよかったかもしんないけど、言っちゃったからダメかなー」
「そうかな?」
「それじゃあやる気にならないじゃない。 張り合いがないわよ」
「いやでも単なるお遊びだしー…。 じゃあ正解者が出たら、その人だけに小話を書くってのはどうかな?」
「それどうやんのよ」
「え? どこかフリーメールでも取得してもらってそこに送る、とか」
「意味わかんない。 なんなのそれ?」
「んー、ゴメン。 おもしろいかなって思って」
「こういうのってたいていはリクエスト受付とかじゃないの?」
「無理。 書けない話なんていくらでもあるもん」
「例えば?」
「セラが特に書けないかなー…。 どういう反応を返すか想像できないんだよねー」
「そう? わりと簡単じゃない?」
「人の話聞かないやつでシスコンにしとけばオッケーでしょ」
「そんなの書きたくないっ」
「無駄に元気でよろしい。 ま、ここの方向性的にセラを出す理由もないからいいんじゃない?」
「うーん。 戯言で出すかも」
「そうなの?」
「いや出さないとは言いたくないだけで…出すつもりはあんまり無いかな…」
「予定は未定、なわけだ」
「まあそういうわけでジルオールも書きますんで気長にお待ちいただけると助かります、というわけよ」
「待ってるかなー?」
「…そういうこと言わないでくれる?」
「なんだか全然まとまってないわね…」
(終)
「はーい」
扉を開けるとそこにはサクヤさんが立っていた。
浅間サクヤさん。 フリーのルポライター兼フォトグラファーで、いろんな所に飛び回っているという活動的な人。 およそ日本人離れした容姿で、あたかも外国の女優さんかと思う時もある。
お母さんの親友で、わたしも昔から顔馴染みだ。 本当お母さんとは仲が良かった。
だから、ついこの間お母さんが突然亡くなってしまった時から随分と助けてもらっている。
「やあ桂。 泣きやんだんだね」
「…いつまでも泣いてるわけにはいかない、から」
「そりゃそうさ。 まだ泣いてるようだったらあたしも困るからね」
そう言ってサクヤさんは優しく微笑む。
「…うん」
「さ、今日は七日参りで来たのさ。 ほら」
わたしの前に差し出された菊の花束を受け取り、サクヤさんを中へと誘う。
初七日の後は四十九日だと思っていたら、昔や信心深い人は七日ごとにお参りをするんだそうで。 サクヤさんに聞いて初めて知った。 つまり四十九日は七・七日なんだそうで。
狭い部屋に小さく置かれた祭壇、その上に置かれた白木の位牌と遺影。
その前にサクヤさんは座り、線香を焚く。 香りが部屋に漂う。 もう嗅ぎ慣れてきた、香り。
「えっと、お茶菓子がなくって…。 サクヤさんが持ってきたのでもいいかな?」
お茶の用意をしながら聞くと、サクヤさんは小さく笑って、
「そういう時は『おもたせですいませんが』って言うもんなんだよ」
と言った。
「少しは落ち着いたのかい?」
「…どうなんだろう」
正直わからない。
「お母さん、お仕事で夜遅いことも多かったし。 わたし一人でいることも多かったから、なんだかわからないよ」
「…」
「今留守にしてるだけ、そんな気分になったりもするし。 でも朝起きてご飯をお供えしてたりして、お母さんはいなくて」
少し声が震える。
「やっぱりいないんだ、亡くなっちゃったんだ、って思って」
「そうだね。 そんなすぐには受け入れられるもんじゃないさね、大切な人がいなくなるってのは」
「…うん……」
わたしは泣き出さないように耐えるので必死だったけど、サクヤさんはただ優しい眼差しで黙っていてくれていた。
「でもサクヤさん。 こんなに来てもらっていいのかな?」
「なんだい、あたしが来たら迷惑かい?」
「う、ううんっ。 そんなことないけど…」
ここずっと二日とあけず来てくれている。 わたしとしては一人になる時間が少なくて嬉しいけど、サクヤさんは社会人で働いているわけで。
「だってお仕事とか…」
「あたしはフリーだしね。 干されようと腕と美貌には自信があるから、桂に心配されるほどのことはないさ」
そう自信たっぷりに言い切るサクヤさんはかっこいいけれど、それでいいんですか?
「腕はともかく、美貌って…。 そういうのは自分で言うものじゃないんじゃないの? それに何の関係があるの?」
やはり日本人ですから、謙遜の美徳をとわたしは思うのです。
「そういう所、桂は真弓ゆずりだね。 あいつも固い家出身だから口うるさかったもんさ」
「そうなんだ」
「ああ、うるさいうるさい。 やれ目立つな、やれもっと控えめにだの、持って生まれたもんはしょうがないもんさね」
「…そうかもね」
サクヤさんは結構背もあるし、自分で言うだけの容姿だ。 目立つな、と言うのは無理かも。
「あとね、桂。 この美貌はちゃーんと関係あるんだよ。 いいかい? むさ苦しいおじさんとこんないい女がいたら、どっちに仕事を頼むさね?」
ああ、なるほど。 …って、
「別にむさ苦しいおじさんばかりじゃないでしょ、ルポライターもフォトグラファーも」
「わかりやすい例えだよ。 ま、つまりそういうことさ」
「ふーん」
日が暮れ、宵のころになるとサクヤさんに連れられて夕飯を食べに出かけた。 ずっと位牌のそばにいるのはわたしによくないって。
「いいのさ。 離れたくない気持ちもあるかもしれないけど、外の空気に触れて自分を思い出すことも大事なことだよ」
「自分を思い出す?」
サクヤさんの赤いクロカンブッシュに乗って移動しながら話す。
「そうさ。 桂はまだ生きていて、まだまだこれからいろんな人生が待っている。 それを思い出すんだよ」
「…」
「すぐには無理さね、それは構わない。 だけど、ずっとってわけにもいかないんだよ」
暗い夜道をぼんやりと見つめながらサクヤさんの言葉を聞く。
「友達だって心配してだろう? 連絡してないんじゃないかい?」
「うん…」
「焦る必要はないよ。 だけどゆっくりでも今までの自分も取り戻すのさ」
「そう、だよね。 時間が経てば、忘れちゃったりするよね」
「いや…」
否定の言葉にサクヤさんを見ると、悲しげな顔を浮かべていた。
「忘れやしないさ、大切な人との別れは…。 ずっと、ずっとね…」
そう言うサクヤさんの顔はとてもつらそうだった。
そしてその後二人とも食堂に着くまで口を開くことはなかった。
車の窓から空を見上げると、小さく星が瞬いていた。
(終)
扉を開けるとそこにはサクヤさんが立っていた。
浅間サクヤさん。 フリーのルポライター兼フォトグラファーで、いろんな所に飛び回っているという活動的な人。 およそ日本人離れした容姿で、あたかも外国の女優さんかと思う時もある。
お母さんの親友で、わたしも昔から顔馴染みだ。 本当お母さんとは仲が良かった。
だから、ついこの間お母さんが突然亡くなってしまった時から随分と助けてもらっている。
「やあ桂。 泣きやんだんだね」
「…いつまでも泣いてるわけにはいかない、から」
「そりゃそうさ。 まだ泣いてるようだったらあたしも困るからね」
そう言ってサクヤさんは優しく微笑む。
「…うん」
「さ、今日は七日参りで来たのさ。 ほら」
わたしの前に差し出された菊の花束を受け取り、サクヤさんを中へと誘う。
初七日の後は四十九日だと思っていたら、昔や信心深い人は七日ごとにお参りをするんだそうで。 サクヤさんに聞いて初めて知った。 つまり四十九日は七・七日なんだそうで。
狭い部屋に小さく置かれた祭壇、その上に置かれた白木の位牌と遺影。
その前にサクヤさんは座り、線香を焚く。 香りが部屋に漂う。 もう嗅ぎ慣れてきた、香り。
「えっと、お茶菓子がなくって…。 サクヤさんが持ってきたのでもいいかな?」
お茶の用意をしながら聞くと、サクヤさんは小さく笑って、
「そういう時は『おもたせですいませんが』って言うもんなんだよ」
と言った。
「少しは落ち着いたのかい?」
「…どうなんだろう」
正直わからない。
「お母さん、お仕事で夜遅いことも多かったし。 わたし一人でいることも多かったから、なんだかわからないよ」
「…」
「今留守にしてるだけ、そんな気分になったりもするし。 でも朝起きてご飯をお供えしてたりして、お母さんはいなくて」
少し声が震える。
「やっぱりいないんだ、亡くなっちゃったんだ、って思って」
「そうだね。 そんなすぐには受け入れられるもんじゃないさね、大切な人がいなくなるってのは」
「…うん……」
わたしは泣き出さないように耐えるので必死だったけど、サクヤさんはただ優しい眼差しで黙っていてくれていた。
「でもサクヤさん。 こんなに来てもらっていいのかな?」
「なんだい、あたしが来たら迷惑かい?」
「う、ううんっ。 そんなことないけど…」
ここずっと二日とあけず来てくれている。 わたしとしては一人になる時間が少なくて嬉しいけど、サクヤさんは社会人で働いているわけで。
「だってお仕事とか…」
「あたしはフリーだしね。 干されようと腕と美貌には自信があるから、桂に心配されるほどのことはないさ」
そう自信たっぷりに言い切るサクヤさんはかっこいいけれど、それでいいんですか?
「腕はともかく、美貌って…。 そういうのは自分で言うものじゃないんじゃないの? それに何の関係があるの?」
やはり日本人ですから、謙遜の美徳をとわたしは思うのです。
「そういう所、桂は真弓ゆずりだね。 あいつも固い家出身だから口うるさかったもんさ」
「そうなんだ」
「ああ、うるさいうるさい。 やれ目立つな、やれもっと控えめにだの、持って生まれたもんはしょうがないもんさね」
「…そうかもね」
サクヤさんは結構背もあるし、自分で言うだけの容姿だ。 目立つな、と言うのは無理かも。
「あとね、桂。 この美貌はちゃーんと関係あるんだよ。 いいかい? むさ苦しいおじさんとこんないい女がいたら、どっちに仕事を頼むさね?」
ああ、なるほど。 …って、
「別にむさ苦しいおじさんばかりじゃないでしょ、ルポライターもフォトグラファーも」
「わかりやすい例えだよ。 ま、つまりそういうことさ」
「ふーん」
日が暮れ、宵のころになるとサクヤさんに連れられて夕飯を食べに出かけた。 ずっと位牌のそばにいるのはわたしによくないって。
「いいのさ。 離れたくない気持ちもあるかもしれないけど、外の空気に触れて自分を思い出すことも大事なことだよ」
「自分を思い出す?」
サクヤさんの赤いクロカンブッシュに乗って移動しながら話す。
「そうさ。 桂はまだ生きていて、まだまだこれからいろんな人生が待っている。 それを思い出すんだよ」
「…」
「すぐには無理さね、それは構わない。 だけど、ずっとってわけにもいかないんだよ」
暗い夜道をぼんやりと見つめながらサクヤさんの言葉を聞く。
「友達だって心配してだろう? 連絡してないんじゃないかい?」
「うん…」
「焦る必要はないよ。 だけどゆっくりでも今までの自分も取り戻すのさ」
「そう、だよね。 時間が経てば、忘れちゃったりするよね」
「いや…」
否定の言葉にサクヤさんを見ると、悲しげな顔を浮かべていた。
「忘れやしないさ、大切な人との別れは…。 ずっと、ずっとね…」
そう言うサクヤさんの顔はとてもつらそうだった。
そしてその後二人とも食堂に着くまで口を開くことはなかった。
車の窓から空を見上げると、小さく星が瞬いていた。
(終)
「そう言えばこの前アンケートの話をしたんだけど」
「そうだね。 確かにあるね」
「あれ、今月中で終了の予定なんだ」
「今月中…もうあまり日もないね。 どうして終了なんだい?」
「とりあえずアンケートできるみたいだからやってみよう、って思って作ったものだし。 少しわかったから、今度は違うアンケート取ってみたいなって」
「…でも、その…言いづらいが桂さん。 今回のアンケートはお一人しか参加してくださらなかったみたいだが…」
「…」
「あ、いや、でも桂さんっ。 もしかしたら携帯電話から見てる人が多いのかもしれないね」
「? 携帯から見るとアンケートが無いの?」
「先日携帯電話を新調した時に、ここを見てみたらメルフォやアンケートは表示されないことに気づいてね」
「そうなんだー。 あ、でもね、別にいいんだよ」
「? 別にいい、とは?」
「お暇な時にどうぞ、って書いてあるでしょ? 参加してくれると嬉しいけど、別に参加してくれなくても全然構わないよ?」
「…それは…なんのためのアンケートなのかな」
「えっと…(自主検閲)かな?」
「小話の話になるんだけど、実はアカイイトはもうアイデアが浮かばなくなってて…」
「いきなり話が変わったね」
「適当に書いてるせいで、話の流れがあまりよろしくない方向に向かってましたし、いいのではないでしょうか?」
「…葛様、いつからそこに?」
「さっきからずっといましたよ?」
「そんなはずは…」
「ではもう書かないのですか、桂おねーさん?」
「そんなことないよ? うーん…今はアカイイトで話を考えると、ほとんど全部お母さんの話になっちゃうんだよね…」
「…なるほど」
「仕方ないですねー」
「現時点では、の話になるけど、アカイイトはしばらく書かないかもしれないかな」
「ああ、それは残念だね」
「本編が止まって戯言でアカイイト、まるで某小説のようですねー」
「気晴らしにMMOを始めてみたんだけど」
「また話が変わりましたね」
「うっかりよろしくないことを言ってしまったので助かります」
「何のことですか?」
「陽子ちゃんがやってないので始めたから、一人ぼっちであまりMMOやってる気にならないんだよね」
「…なんでそういう意味のないことをしてるんですか?」
「あまり本気でやる気がないし…。 やったことなかったからどんなものなんだろうって思っただけだから」
「だけど、もう結構続けているのではないのかな?」
「うーん…ゲームはゲーム機で遊んだ方が楽しいんじゃないかな? 烏月さんはどう思う?」
「えっ!? いや、その…私はそういう遊びは知らなくて…」
「と言うより烏月さんは遊びを知ってますか?」
「チャンバラとか?」
「…」
「…」
「いえ、今のは冗談で。 そうですね…読書とか…」
「それは一人でするものです」
「あ、でも葛ちゃん。 わたしよく烏月さんと二人でアルバム見たりするよ?」
「け、桂さん、それはっ」
「ほほう…それは聞き捨てなりませんねえー」
「あ、それは遊びにならないのかな?」
「いえいえ。 今度はその遊びにわたしも混ぜていただきたいですねー」
「あ、うん。 もちろんいいよ? ね、烏月さん?」
「ですよね? 烏月さん?」
「…くっ。 わ、わかりました」
「烏月さん、どうかした?」
(終)
註・どうもうまく書けません。 更なる反省。
「そうだね。 確かにあるね」
「あれ、今月中で終了の予定なんだ」
「今月中…もうあまり日もないね。 どうして終了なんだい?」
「とりあえずアンケートできるみたいだからやってみよう、って思って作ったものだし。 少しわかったから、今度は違うアンケート取ってみたいなって」
「…でも、その…言いづらいが桂さん。 今回のアンケートはお一人しか参加してくださらなかったみたいだが…」
「…」
「あ、いや、でも桂さんっ。 もしかしたら携帯電話から見てる人が多いのかもしれないね」
「? 携帯から見るとアンケートが無いの?」
「先日携帯電話を新調した時に、ここを見てみたらメルフォやアンケートは表示されないことに気づいてね」
「そうなんだー。 あ、でもね、別にいいんだよ」
「? 別にいい、とは?」
「お暇な時にどうぞ、って書いてあるでしょ? 参加してくれると嬉しいけど、別に参加してくれなくても全然構わないよ?」
「…それは…なんのためのアンケートなのかな」
「えっと…(自主検閲)かな?」
「小話の話になるんだけど、実はアカイイトはもうアイデアが浮かばなくなってて…」
「いきなり話が変わったね」
「適当に書いてるせいで、話の流れがあまりよろしくない方向に向かってましたし、いいのではないでしょうか?」
「…葛様、いつからそこに?」
「さっきからずっといましたよ?」
「そんなはずは…」
「ではもう書かないのですか、桂おねーさん?」
「そんなことないよ? うーん…今はアカイイトで話を考えると、ほとんど全部お母さんの話になっちゃうんだよね…」
「…なるほど」
「仕方ないですねー」
「現時点では、の話になるけど、アカイイトはしばらく書かないかもしれないかな」
「ああ、それは残念だね」
「本編が止まって戯言でアカイイト、まるで某小説のようですねー」
「気晴らしにMMOを始めてみたんだけど」
「また話が変わりましたね」
「うっかりよろしくないことを言ってしまったので助かります」
「何のことですか?」
「陽子ちゃんがやってないので始めたから、一人ぼっちであまりMMOやってる気にならないんだよね」
「…なんでそういう意味のないことをしてるんですか?」
「あまり本気でやる気がないし…。 やったことなかったからどんなものなんだろうって思っただけだから」
「だけど、もう結構続けているのではないのかな?」
「うーん…ゲームはゲーム機で遊んだ方が楽しいんじゃないかな? 烏月さんはどう思う?」
「えっ!? いや、その…私はそういう遊びは知らなくて…」
「と言うより烏月さんは遊びを知ってますか?」
「チャンバラとか?」
「…」
「…」
「いえ、今のは冗談で。 そうですね…読書とか…」
「それは一人でするものです」
「あ、でも葛ちゃん。 わたしよく烏月さんと二人でアルバム見たりするよ?」
「け、桂さん、それはっ」
「ほほう…それは聞き捨てなりませんねえー」
「あ、それは遊びにならないのかな?」
「いえいえ。 今度はその遊びにわたしも混ぜていただきたいですねー」
「あ、うん。 もちろんいいよ? ね、烏月さん?」
「ですよね? 烏月さん?」
「…くっ。 わ、わかりました」
「烏月さん、どうかした?」
(終)
註・どうもうまく書けません。 更なる反省。
(気づいたこと、な話)
ちなみにまだ休止中です。 半休止中かな? 書ける時は書くようにしたいのですが、小話を考えるほど時間と心のゆとりを取れそうにないので戯言ばかりになりそうです。 ご理解のほど、よろしくお願いします。
ちなみにまだ休止中です。 半休止中かな? 書ける時は書くようにしたいのですが、小話を考えるほど時間と心のゆとりを取れそうにないので戯言ばかりになりそうです。 ご理解のほど、よろしくお願いします。
「そう言えば陽子ちゃん、この前久しぶりにわたしのブログ読んだらね」
「どーかした?」
「『続きを読む』を押したらパカッって開いて、『続きをしまう』を押したら閉じるようにしてたはずなのに、『続きをしまう』がなかったのっ。 なんでだろうってわかんなくて何度も何度もやったりいじったりしたけど、全然わからなくてっ」
「ふむふむ」
「しばらくして、それまでと違うPCを使ってることに気づいたんだよ」
「…相変わらずおまぬけね、はとちゃんてば」
「そんなことはいいんだけど、来てくれてる人達もなる人とならない人がいるんだろうな、って思ったら申し訳なくて…」
「いやー、そこまで気にする必要はないんじゃない?」
「だからね、陽子ちゃんなんとかできないかな?」
「はとちゃん、そういうのは自分でやるからこそ身になるのよ?」
「…だってどうすればいいのか、全くわからないんだもん…。 陽子ちゃんそんなこと言わないで教えてよ…」
「ごめん、はとちゃん。 あたしもわかんない」
「ええっ!? どうしてっ?」
「いや、そこって驚くところ?」
「だって陽子ちゃんよくゲームやってるでしょ?」
「…」
「えっと、なんだっけ? ふぁみこん?」
「いやはとちゃん。 そのボケは16の乙女が言うには凶悪すぎると思う」
「四角ボタンはゴムだから、めりこんで戻らなかったりして連打しづらいんだっけ?」
「いやはとちゃん。 それ以上…いやもうすでに十分自分の首絞めてるから喋らない方がいいってば」
「いえいえ。 インターネットで検索して知った情報、ということで」
「…無理あるよね」
「そんなことないですようー。 割と有名なネタですし」
「でもあんたが生まれた時点でPSでしょ?」
「某TV番組でファミコンやってるじゃないですか」
「見てるの?」
「見てません」
「二人とも何の話してるの?」
「…と言うわけで、あたしにはわからないわけよ、はとちゃん」
「そうなんだ…。 葛ちゃんはわかる?」
「いえ。 わたしそっちの方面はまだまだ勉強不足でしてー」
「うん、じゃあ仕方ないね…とりあえずあきらめるよ。 ところでね、アンケートを作ったんだよ」
「ありますねー」
「そうね。 でもあれ、なんでああいう選択肢があるわけ?」
「『ああいう選択肢』って?」
「いやほら、ねえ?」
「まあ、性格でしょうねー」
「とりあえず最初に自分で押してみたんだけど」
「…自分であれに押したんだ…」
「えっと…気に入ってないんですか、おねーさん?」
「違うよ、気に入ってるよっ。 えっと…なんて言うのかな、ホラー映画とか見るのと同じ気持ち?」
「ごめん、はとちゃん。 言ってることがまるでわからない」
「アンケートの結果画面を見て、『うわっ、なかったんだっ!』ってショックを受けてみようかな、って。 …でも作った直後に見た時、自分で思ったよりショックを受けちゃったんだけど」
「…おねーさん、素直に休んでた方がいいような気もしますよ?」
「でも今日見たら他にやってくれた人がいたみたいで、あれだけじゃなくなってて大丈夫だったよ」
「なるほどねー。 はとちゃんてばそういう趣味があったんだ」
「趣味?」
「どうりであたしがしっぽ引っ張っても文句言わないわけだ」
「そうなんですか?」
「言ってるよっ。 あれ痛いんだからやめてよ…。 将来ハゲちゃったらどうしたらいいの?」
「その時はあたしが…」
「大丈夫です、桂おねーさん。 わたしが桂おねーさんを守りますから」
「…」
「うう…わたしの味方は葛ちゃんだけだよ」
「いや、あのね…」
「必要ならば若杉の力で全力で敵を排除しますから」
「いつもすまないねぇ」
「まだ何もしてませんよ?」
「あたしはシカトかい」
「愛情表現も含めて若杉さんの方が大人ですわね」
(終)
註・どうにも纏められませんでした。 反省。
「どーかした?」
「『続きを読む』を押したらパカッって開いて、『続きをしまう』を押したら閉じるようにしてたはずなのに、『続きをしまう』がなかったのっ。 なんでだろうってわかんなくて何度も何度もやったりいじったりしたけど、全然わからなくてっ」
「ふむふむ」
「しばらくして、それまでと違うPCを使ってることに気づいたんだよ」
「…相変わらずおまぬけね、はとちゃんてば」
「そんなことはいいんだけど、来てくれてる人達もなる人とならない人がいるんだろうな、って思ったら申し訳なくて…」
「いやー、そこまで気にする必要はないんじゃない?」
「だからね、陽子ちゃんなんとかできないかな?」
「はとちゃん、そういうのは自分でやるからこそ身になるのよ?」
「…だってどうすればいいのか、全くわからないんだもん…。 陽子ちゃんそんなこと言わないで教えてよ…」
「ごめん、はとちゃん。 あたしもわかんない」
「ええっ!? どうしてっ?」
「いや、そこって驚くところ?」
「だって陽子ちゃんよくゲームやってるでしょ?」
「…」
「えっと、なんだっけ? ふぁみこん?」
「いやはとちゃん。 そのボケは16の乙女が言うには凶悪すぎると思う」
「四角ボタンはゴムだから、めりこんで戻らなかったりして連打しづらいんだっけ?」
「いやはとちゃん。 それ以上…いやもうすでに十分自分の首絞めてるから喋らない方がいいってば」
「いえいえ。 インターネットで検索して知った情報、ということで」
「…無理あるよね」
「そんなことないですようー。 割と有名なネタですし」
「でもあんたが生まれた時点でPSでしょ?」
「某TV番組でファミコンやってるじゃないですか」
「見てるの?」
「見てません」
「二人とも何の話してるの?」
「…と言うわけで、あたしにはわからないわけよ、はとちゃん」
「そうなんだ…。 葛ちゃんはわかる?」
「いえ。 わたしそっちの方面はまだまだ勉強不足でしてー」
「うん、じゃあ仕方ないね…とりあえずあきらめるよ。 ところでね、アンケートを作ったんだよ」
「ありますねー」
「そうね。 でもあれ、なんでああいう選択肢があるわけ?」
「『ああいう選択肢』って?」
「いやほら、ねえ?」
「まあ、性格でしょうねー」
「とりあえず最初に自分で押してみたんだけど」
「…自分であれに押したんだ…」
「えっと…気に入ってないんですか、おねーさん?」
「違うよ、気に入ってるよっ。 えっと…なんて言うのかな、ホラー映画とか見るのと同じ気持ち?」
「ごめん、はとちゃん。 言ってることがまるでわからない」
「アンケートの結果画面を見て、『うわっ、なかったんだっ!』ってショックを受けてみようかな、って。 …でも作った直後に見た時、自分で思ったよりショックを受けちゃったんだけど」
「…おねーさん、素直に休んでた方がいいような気もしますよ?」
「でも今日見たら他にやってくれた人がいたみたいで、あれだけじゃなくなってて大丈夫だったよ」
「なるほどねー。 はとちゃんてばそういう趣味があったんだ」
「趣味?」
「どうりであたしがしっぽ引っ張っても文句言わないわけだ」
「そうなんですか?」
「言ってるよっ。 あれ痛いんだからやめてよ…。 将来ハゲちゃったらどうしたらいいの?」
「その時はあたしが…」
「大丈夫です、桂おねーさん。 わたしが桂おねーさんを守りますから」
「…」
「うう…わたしの味方は葛ちゃんだけだよ」
「いや、あのね…」
「必要ならば若杉の力で全力で敵を排除しますから」
「いつもすまないねぇ」
「まだ何もしてませんよ?」
「あたしはシカトかい」
「愛情表現も含めて若杉さんの方が大人ですわね」
(終)
註・どうにも纏められませんでした。 反省。
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