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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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 (団体二年目ころ)



 註・この小話はレッスルエンジェルスサバイバーとアカイイトの両ゲームをプレイされた方でないと意味がわからない可能性があります。

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 たいせつなひとが いなくなってしまった

ー電話の音ー

 マナーモードに変えていなかったという事実が焦らせる。 周りに迷惑顔の人がいないと知って落ちつきを取り戻す。
「…は、はい……も、もしもし……?」
『やっほー、はとちゃん』
「……あ……よ、陽子さん…」
 顔の見えない電話越しの一言だけで人となりがわかってしまう彼女は、クラスメートの奈良陽子ちゃん。
『元気だった?』
「…え、ええ…バタバタしてたのも……な、なんとか…一段落……」
『そ? なら丁度良かった。 さすがは私、絶妙なタイミング』
「…」
『…』
「…」
『…でぇ、はとちゃん今、暇?』
「…ひ、暇といえば……暇…かな…?」
『カレー食べにいこっ♪』

ー中断ー

「台詞を変えるな、祐希子」
「いやー、なんだか飽きてきちゃったー。 私声だけだしー。 お腹空いてきちゃったしー」
「お前なぁ…」
「……あ、あの……」
「もういいじゃん、社長。 私のシーンはすっ飛ばしちゃっていいからさ」
「いやお前人気あるし。 いてくれた方ウケがいいんだよ」
「……あの………あの………」
「お腹空いたーっ。 カレー食べに行くっ!」
「あーあ…。 ま、しょうがないか。 じゃ、次行こう」
「………あうぅ……」

ー再開ー

「……ん……?」
ーその人は、いきなり視界に現れた。
「…う、うわ……」
 思わず見とれてしまっていた。
「自分に何か用事っスか?」

ー中断ー

「社長、ダメっ! 真田ちゃんは配役ミスですっ!」
「…うん。 なんかそんな気もする」
「ひどいっスよー…自分、一所懸命やってるっスよ?」
「……あ、あの…」
「じゃあ、真田を変更。 ダメ出しした優香、行け」
「えっ!? …あの…わたしこういう怖いのは……」
「平気だ。 まだ先のシーンだよ」
「………あの……あの……」
「嘘ーっ! ぜったい嘘っ、イヤっ! わたしもカレー食べに行くっ!」
「あっコラ! …逃げ足の速い……これだからルチャの選手は…」
「どうするっスか?」
「…あ、あの……」
「じゃあ、入団したばかりだが…。 みこと、頼む」
「わかりました」
「………あうぅ…」

ー再開ー

「…あ……あの……その………」
(おお、迫真の演技だな、遥)
(単にいつも通りなだけじゃないですか?)
「いえ…それで、私に用事ですか?」
「…し、失礼しました……ご、ごきげんよう……」

ー暗転中ー

「しかし進行悪いな…。 省略してるのに終わりが見えないんだが…いっそここで終わっとこうか?」
「そうですねー。 …って、社長っ! なんスかそれはっ! 男が一度始めたことを投げだすんスかっ!?」
「……わ、私も……や、やめたい……」
「…いいじゃんよー。 みんな逃げてくしさー。 井上クンなんか今日の話聞いたら有休取ったぞ?」
「そうですけど…で、でも出番待ちの上戸と内田だって………あれ?」
「………いないな」
「……あ、あの……わ、私も……」
「マッキーさんとラッキーさんなら祐希子さんより前に連れ立って出ていきましたが」
「…それじゃ最初からじゃないか。 気付いてたなら話せ、みこと」
「はあ」
「……あ、あの…わ、私も………」
「しょうがないなぁ…。 じゃあシーン飛ばそうっ、かったるいし」
「なんか社長投げやりですね…」
「じゃあもう翌日の昼で」
「昼? あのシーンっスか? …あれ誰がやるんですか? 自分っスか?」
「ふっ。 お前には期待できん」
「ひどいっスよー…じゃあ、誰がやるんですか?」
「心配はいらん。 このためにWARSから人を呼んでおいたっ」
「呼んでおいて、さっき『終わっとこうか』とか言ったんスか…?」
「…」
「……あうぅ………」

ー再開ー

 大きな木の下に男の子が立っている。
「……あ、あれ………?」
 見たことのある人だった。
「私の顔がどうかしたのかい? バンビちゃん?」

ー中断ー

「帰れ、ミシェール」
「おお、軽い挨拶だよ、社長さん。 それに別に間違ってはいないだろうに」
「………や、やめたい……」
「なんとか言ってやれ、真田」
「い、いや…一応ミシェールさんは元役者さんですし、それにこの業界でも先輩ですし…自分はちょっと…」
「真田。 上に噛み付く気概がなくてどうする? そんなんじゃいつまでたっても上には上がれないぞ!?」
「はっ!? そ、そうっスねっ! 自分が間違ってましたっ!」
「……あ、あの………」
「ミシェールっ、役に立たないからとっとと帰れっ…ス!」
「言いきれてないあたり、まだまだだな」
「……ほう…人の団体から無理やり人を借り出してそういう扱いか、この団体は…」
「あ」
「わ」
「……や、やめたい……」
「それならこっちにも考えというものが…」
「い、いや龍子。 そうは言うけどな…」

「もうイヤーっ! 助けてーっ!」
「なんだっ!?」
「あれ? 優香、もう帰ってきたのか」
「ちょっとー、優香。 まだ食べ始めたばかりじゃないのー」
「もう食べられないですぅ…ゆるしてくださいぃぃ」
「………。 あいつ、今まで一緒に行ったことなかったのか?」
「……そうみたいですね」
「あっ、龍子じゃないっ。 久しぶりー♪」
「げっ。 新女のカレー女っ」
「もう移籍して1年経つわよっ。 それにそのカレー女って何っ!」
「…そのまんまじゃないか」
「…そっスね」
「じゃあ邪魔したな。 帰るぞ、ミシェール」
「早いな」
「経験あるんスね」
「ちょっとちょっと。 久しぶりに会ったんだからご飯でも食べに行こっ」
「…遠慮しておく」
「いいからいいから♪ 今日は私の奢りだー♪」
「やめろっ、離せーっ!!」
「それでは失礼するよ、諸君」
「…」
「…」
「……や、やめたい……」
「そ、そうか遥っ。 じゃあ終わろうっ」
「そっスねっ。 いつ帰ってくるかわからないっスからっ」
「…カレーはイヤ……」
「みことっ、そのくたばった奴、遥と2人で運んでくれっ。 撤収っ!」
「了解っス!」
「わかりました」
「…カレーは……イヤ…」
「……お、終わった……よ、よかった……」



 後日、サンダー龍子が海老名市運動公園ホールにて試合途中に突如乱入。 マイティ祐希子が重症を負った。

 その後半年に渡るWARSとの対抗戦は、今思えばこの日が原因だったのかもしれない。



(終)
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