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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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(エステルED 旅先 エレンディア) 註:インフィニット以降準拠



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「それじゃあ、エレンディア。 行こうか!」
 そう言ってエステルが駆け出す。
「そうね」
 私も一緒に走り出す。
「門まで競争だよー! 先についた方の行先にけってーいっ」
 少し前を走る彼女が私の方を向いて笑いながら言う。 その眩しい笑顔を見て私は言った
「エステルーっ」
「何ー、エレンディアーっ。 待ってなんかあげないよー?」
「姉さんにはならないわよー?」
 言った途端エステルが足を止める。 俯いてわずかに肩が震えてる。 怒ったのかと思ったけれど、追いついて見ると顔を耳まで真っ赤にしていた。 照れている様子。
「も、もぅっ! 恥ずかしいなっ、大声でっ」
「エステルが言ったことじゃないの」
「聞かなかったことにするってできないの? いじわるだよ、エレンディアはっ」
「聞かなかったことにしていいならいいんだけど・・・」
 そう言うと彼女は真顔になって上目づかいに聞いてきた。
「・・・ダメ、なの・・・?」
「ダメよ」
 私は即答する。
「どうしてー!」
「あのね、エステル」
 私は彼女に向けて手を開いて右手を伸ばす。 伸ばされた手の意図がわからずエステルは小首をかしげる。
「握って?」
「う、うん」
 彼女も手を伸ばし私の手を握る。
「あなたが私を頼るように、私だってあなたを頼ってるのよ?」
「う、嘘だよー? ボクの方がエレンディアに頼りっぱなしだよ!」
「そんなこと思いっきり言われても困るけど・・・本当だよ? それが信じられないって言うなら、こう言おうかしら。 エステルは私が困ってたら助けない?」
「そ、そんなことないよ! エレンディアが困ってたらボク絶対助けるよ!」
「そうでしょ? うん、私エステルのその気持ちに頼ってるよ?」
 そう言って笑うと彼女は顔を赤くして俯く。 隙アリ! とばかりに私は繋いだ手を引っ張る。
「と、ととっ、うわっ、エレンディア!?」
 ふらふらっとつんのめって来たエステルを抱きしめる。 ふわっとした風と砂の薫りが私の胸に収まる。
「エ、エレンディアっ。 こんなところで何っ?」
「エステル、下に行かないで。 後ろに下がらないで。 私から離れないで、私の隣にいてよ」
 彼女が私を見る。 少し驚いたような顔。
「エレンディア・・・」
「本当だよ? 私エステルに頼ってるんだよ?」
「エレンディア・・・・・・」
 エステルが涙目になる。
「あなたが泣く時はこうして私が肩を抱く。 私が泣く時はお願いするからね?」
「うっ・・・泣かない・・・くせに・・・っ」
「泣くわよ、失礼ね。 誰かさんのせいで凄い泣いたわよ」
「ボク・・・? ううっ・・・いつ・・・? ボク知らないよ・・・」
「ラドラスが落ちた時よ。 あの時私がどれだけ泣いたと思ってるの」
 そう言ってエステルの額をこつんと叩く。
「そんな・・・うっ、ボク・・・見てないもん・・・」
「そうね」
 私はやわらかく笑って、エステルをぎゅっと抱きしめる。
「だから、見える隣にいてね?」
「あ・・・う、うんっ」
 泣き笑いしてエステルも抱き返してくる。

 しばらく抱き合って、落ち着いてきた彼女から離れる。
「と、言うことでー」
「うん。 何?」
「お先っ」
 言うやいなや私は駆け出す。
「先に門についた方の行先よねー?」
「あっ! ちょ、ず、ずるいよっ、エレンディアっ!」
 あわててエステルが追いかけてくる。 その彼女に向けて手を伸ばす。
「ふふっ。 大丈夫よ」
 その手をエステルが握る。
「あなたの行くところが私の行くところ」
「・・・っ、うんっ。 エレンディアの行くところがボクの行くところ!」
「どこまでも」
「いつまでも!」

 そして私たちは手を繋ぎ、今度こそ新たな冒険へと旅立った。



(終)
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