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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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3年目冬~春



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 春まであと少し、遂にWCWWのタイトル戦が行われることになる。 カードはすでに楠木とアドミラルと決定していて、本人たちも結構ナーバスにはなっている
 それにあてられて他の面々も多少ぎこちない感じがジムには感じられた

 現在担当している麗華に練習メニューを伝えひと休みと思ったら、ベンチで真鍋が考え込んでいた

「どうした? 珍しいな、おとなしく考え込むなんて」
「んー、まぁね」
 気の無い返事で考え続けている。 てっきり噛みつかれるものと思っていたので拍子抜けし、そして不安になった
「どうした? 悩みなら相談してくれ」
「いや、たいしたことじゃないよ。 さとみんにはかなり離されて追いつけなさそうだなってだけ」
「・・・」
 適当な同情ならできる。 だがそれをしたら本気で怒るだろう。 小縞はすでにトップ争いに参加しているが、確かに本人の言う通りまだ結論づけるには早い時期ではあるものの、真鍋が追いつくのはかなり困難であろう
「今のままじゃ当て役にもなれないからね・・・」
「ふむ・・・ま、しかしその中でがんばるのも大事だ。 ノエルだって・・・」
「あいつの話は聞きたくないんですけど」
 じろっと睨まれる。 ああ、しまった、ノエルとは遺恨があったんだっけか
「あ、ああ・・・すまん。 ただな、真鍋・・・」
「あーほっといてくんない、社長? 自分で考えてるんだからさー」
「す、すまない・・・」
 追っ払われながら、自分の不甲斐なさに情けなくなる。 こういう苦悩をさせる前に、こちらが真鍋をもっとうまく使うべきだった。 上の選手ばかり見ていていては社長などと胸をはれるものではない


 考えてみれば中堅選手もそれなりには抱えている状態でもある。 もっと彼女らの「おいしい」使い方は考えなければならないな・・・


「社長」
 後ろから声をかけられる。 振り返ると楠木が立っていた
「ん? どうした、楠木」
「考え事なら事務所の方でした方がいいんじゃないんですか?」
「え? あ、邪魔だったか? すまない」
 考え込んでいたためにぼーっと立っていた。 とは言え別にそこまで狭いジムでもないが・・・
「いえ・・・。 他に聞こえてないでしょうが、口に出てましたよ。 聞こえてました」
「え・・・」
「まぁ、大丈夫だと思いますけどね」
「何がだい?」
「そのー・・・私がこういうのもなんですけど、私ら後輩がトップ争いを始めて、先輩たちが中堅扱いになったりもしています。 だけど先輩ですからね。 そのままおとなしく下で落ち着きませんよ。 なんらかの形で仕掛けてくるでしょう」
「それはわかっている。 私が考えてたのは社長として、だよ」
「あんまそっちでいじられるとこっちも動きにくいって遠回しに言ってんだよ、楠木は。 バカ社長」
 いつの間にか後ろにいた真鍋が口を挟んでくる
「なっ・・・」
「あはは、真鍋先輩はきついね。 まぁでもそんな感じでもあります」
「むぅ・・・そういうものか・・・」
「上に決められて動くような人形になるくらいならこんな業界きてねーっての。 みんなそうだよ。 そっちにはそっちの思惑があるだろうから、選手が乗るべきところもあるだろうけど、介入のしすぎは勘弁しておくれよねー」
 相変わらず私はまだまだらしい。 選手に教えられることばかりだ・・・。 さすがに少々こたえて肩を落として事務所へ向かおうとすると、真鍋の声が後ろから飛んできた
「そんなしょげんなよー。 心配してもらって悪いね、私はなんとかするよ」
「そうですよ、社長。 もっとうちらを信じて期待してくださいよ。 がんばりますから!」
 選手に教えられ励まされ、社長としての面目は立たないが・・・まぁ素直に嬉しい。 それに選手に心配させているようでは確かにまだまだだ
「わかったよ。 楽しいリングを期待してる。 がんばってくれ」


 まだまだ一人前の社長は遠そうだ・・・



(終)
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