数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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一世を謳歌したWCWWであったが、団体の上に位置するスポンサーの方でトラブル等があったらしく、団体は別会社に身売りすることになった。 選手やスタッフの多くはそちらへ移動することに。
母体の会社は忘れたが、今後は大阪を拠点に激闘龍と団体名を変えるらしい。 私もそちらから声はかかったが遠慮させてもらった。 話によれば霧子くんも断ったらしい。
実は数年前から予感はあった。 コンツェルン会長のお墨付きはもらっていたものの、内部派閥の折り合いか、本部との連携はかなり悪くなっていたのだ。
また上からの圧力か、という予感。 その時から私は密かに動いていた。
グループ内外、はては選手にまで「なぜ?」と聞かれるような質素な生活。 十分な利益を得ていたにも関わらず、収益をかなりプールしていた。 そしていくつかスポンサーになってくれそうな各所につてを作る。
全ては来ると思われたこの日のために。 おそらく秘書として傍にいた霧子くんもわかって、そして来てくれるために断ったのであろうと信じ連絡を取る。
「やぁ霧子くん、久しぶり」
「社長・・・あ、もう・・・」
「いや、社長だよ、霧子くん。 秘書を探してるのだけど君はもうダメかな?」
「!? ・・・え、社長」
「ああ、私の動きは気づいてただろう。 そして今その時が来たということだ」
「ふふ・・・ええ、お付き合いいたします、社長っ」
あてつけも込めて新団体の名も『WCWW』にすることにした。 略称であるので、いくらでも言い逃れはできる
目星をつけていたフリー選手・まだ世に出ていない若手、かつてトップ団体であった際のノウハウを最大限利用し、買い取った会社・スタッフが動く前に先手をうつ。 そもそもが情報管理は我々がしていたのだからここらはこちらのお得意だ。
メロディ・ノエルと言ったまだ若いフリー選手、サキュバス・小縞の新人を迎え入れ、TWWA・EWAと提携し、外人レスラー主体で収益のおぼつかない綱渡り営業を始める。
「ちょっと~、こーの団体大丈夫なん~?」
「ダメだったら一緒に旅に行く? 真鍋ちゃん」
経営的に不穏なのは選手たちにもわかるようだが、
「ははっ、まぁ今はこんなだが安心してろ。 お前らこそ勝てるのか? どんどん凄い相手用意するぞ?」
「んんー、実家のお店に少しお金都合してもらいましょうか?」
「お前ひとの話聞いてないのかよっ! 大丈夫だってばっ!」
「社長の仰る通りですよ。 今はある資金を多少無理して使ってます。 あなた達が力を付けた頃に十分な戦いをするための準備期間ですよ」
「ふ~ん。 ま、霧子さんが言うなら納得しとくか」
「おいおい、随分な言いようだな」
選手が不安になるのも無理はない。 資本金はそれなりには用意していたが湯水のように使っている。 その割に興行はまだドサ周り。 これでどう稼ぐのかと言った様相だ。
「自分のお金でなければここまで大胆に使うことはできなかったかもしれないな・・・」
「まぁ・・・選手が不安になるのも無理はない出資ですけどね・・・」
自分の経営の方で必死だったため無頓着だったよそ様の様子だったが、霧子くんがチェックしていた。
「どうも激闘龍は選手が大幅に離脱したようですね・・・」
「え?」
「WCWWから移籍した大半はフリーになったようですね・・・。 やはり揉めたのでしょうか」
「うーん・・・もったいないことだな」
夏頃さらにフリーのケルベロスと新人の悠理を加え、地道に活動をする。 この一年、そして来年は辛抱だろう。 いかにこの二年を乗り切るか、が勝負。
私の新たな挑戦はこうして始まったのであった。
(終)
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