数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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「やっぱり海外だとおいしいご飯食べられなくて嫌ですよねー」
無邪気に微笑みながら結城がご飯を食べている。
「ああ。 ふだんあんま気にしたことねぇけど、白いご飯が食いたくなるんだよなー」
「別にパンでもいいじゃない」
「そうだね。 ブレッドにミルクティー。 落ち着いていいじゃないか」
ジューシーペアの二人の会話にロイヤルが紅茶を飲みながら優雅に応える。
「ぶれっど、ってなんです? ロイヤルさん」
「上戸…。 あなたその程度の英語学校で習ったでしょう? パンのことよ」
「パンならパンでいいじゃねぇか…」
そんな様子を少し離れた席でぼんやり私は眺めていた。 ここは選手食堂、朝は私も利用することがある。
「おはよーございまーす」
金森が眠そうな顔で入ってくる。 その後から千春と富沢も入ってくる。
「社長、なんでそんなすみっこで食べてるの?」
朝食のトレーを持ちながら富沢が声をかけてきた。
「いあ…。 いちおうここは女子寮だから、すみっこで利用させてもらおうと…」
「何言ってんの、所長。 そんなこと気にするなら最初から利用しなければいいじゃないのー」
「近くに喫茶店でもあればそっちに行くんだが…」
朝食を扱うような飲食店は近場にはなかった。 夜は結構遅くまで開いている店はあるのだが…。
「あれー? 社長、誰か作ってくれる子とかいないわけー?」
「いたらここにはいないな」
「何なにー? 社長の相手って誰ー?」
興味津々といった感じで金森がトレーを持ってやってくる。 それはまあいいが、何気に内容が変わってるのはいかがなものか。
「誰も何も、いやしないよ、そんな相手」
「おやそうかい? 何かと『社長からですが~』とか言うあの女はいいのかい?」
ニヤニヤと笑いながら千春がトレーを持って後ろに立っていた。
「そら霧子くんは秘書だからそう言うのは当然だろう」
「そうですかー? でもお似合いかもしれませんよ?」
いつの間にか結城やジューシーペアの二人にロイヤルまで来ている。
というか、見事に囲まれてる。 正直逃げたい。
「まあ、一見社長の方が立場強そうで、実際は霧子さんの尻にしかれてるって感じだよなー、社長は」
いろんな意味でこのまま続けると自分の身が危うい気がしてきた。
コーヒーを飲み干す。
「さて、と。 あまり女子寮に男がいるのも望ましくないからそろそろ…」
「まあまあ社長」
立とうとした肩をロイヤルが押さえる。
「たまには選手との親睦を図るのも上司の仕事ってやつですよ」
逃げることもままならない。
「社長と霧子さんね…。 想像できるようなできないような…」
「うーん、そうだねー…」
みんなが黙り込む。 それはいったいどういう意味なのでしょうか?
「ほらお前たちも練習時間も近いんだから準備とか…」
「社長は霧子さんのことどう思ってるの?」
話を変えることもできない。
「どう、って…。 すごい有能な社員、ですよ?」
「まあ社長より有能な気もするけどな」
薄笑いで嫌味をさらりと言う千春。 ああ、そうだろうよ。 実際否定できないものもあるよっ!
「だよねー。 なんで霧子さんが社長じゃないの?」
「…富沢、それは年棒カットの要求か?」
「あ、あははは。 じょ、冗談じゃない、社長ー」
「何、じゃあ社長は霧子さんには興味ないの?」
「興味ない、って言うか…。 仕事中にそんなこと気にしてられないぞ? 仕事にならないじゃないか」
「霧子さんはどうなのかなあ?」
「気にしてないんじゃないんですかー? いつも定時でお帰りのようですしー」
微笑ながら結城が言う。 確かにそうなのだが、人に言われるとなぜか傷つくような気分になるものですね…。 いや構わないのだが。
時計を見ると結構な時間になってきてる。
「おい、お前たちそろそろ練習時間じゃないのか?」
「んー? そうだな、飯も食ったし社長からかうのもここらにするか」
なんですって?
「そうね。 じゃあそろそろ」
「ああ、社長私のコーチなんだからお互いさまだよ? むしろ選手より先じゃないの?」
「かったるいなー、まあ適当にやっか…」
好き放題言ってみんな去っていく。
「…。 なんだったんだ…」
「まあ彼女たちも年頃ですからその手の話はいい肴、ということですね」
「うわあっ! 霧子くんいつからっ!」
「金森さんの『社長は霧子さんのことどう思ってるの?』あたりからでしょうか」
なんか納得。 どうりでみんな霧子くんへは何も言わないわけだ…。
「まあこれでみんな今日も一日がんばってくれることでしょう」
「…私は?」
「『社長』ですから何があろうと毎日がんばってください」
これだから霧子くんの方が有能とか言われるんだろうな…。
コーチプランを立てながらジムへ向かう途中ぼんやり考える。 リングで戦う彼女たちも、霧子くんの言う通り年頃の女の子、なんだな、と。
それぞれいろいろな理由でリングに立っているけども、そこを忘れないでいよう、と改めて思ったのだった。
(終)
無邪気に微笑みながら結城がご飯を食べている。
「ああ。 ふだんあんま気にしたことねぇけど、白いご飯が食いたくなるんだよなー」
「別にパンでもいいじゃない」
「そうだね。 ブレッドにミルクティー。 落ち着いていいじゃないか」
ジューシーペアの二人の会話にロイヤルが紅茶を飲みながら優雅に応える。
「ぶれっど、ってなんです? ロイヤルさん」
「上戸…。 あなたその程度の英語学校で習ったでしょう? パンのことよ」
「パンならパンでいいじゃねぇか…」
そんな様子を少し離れた席でぼんやり私は眺めていた。 ここは選手食堂、朝は私も利用することがある。
「おはよーございまーす」
金森が眠そうな顔で入ってくる。 その後から千春と富沢も入ってくる。
「社長、なんでそんなすみっこで食べてるの?」
朝食のトレーを持ちながら富沢が声をかけてきた。
「いあ…。 いちおうここは女子寮だから、すみっこで利用させてもらおうと…」
「何言ってんの、所長。 そんなこと気にするなら最初から利用しなければいいじゃないのー」
「近くに喫茶店でもあればそっちに行くんだが…」
朝食を扱うような飲食店は近場にはなかった。 夜は結構遅くまで開いている店はあるのだが…。
「あれー? 社長、誰か作ってくれる子とかいないわけー?」
「いたらここにはいないな」
「何なにー? 社長の相手って誰ー?」
興味津々といった感じで金森がトレーを持ってやってくる。 それはまあいいが、何気に内容が変わってるのはいかがなものか。
「誰も何も、いやしないよ、そんな相手」
「おやそうかい? 何かと『社長からですが~』とか言うあの女はいいのかい?」
ニヤニヤと笑いながら千春がトレーを持って後ろに立っていた。
「そら霧子くんは秘書だからそう言うのは当然だろう」
「そうですかー? でもお似合いかもしれませんよ?」
いつの間にか結城やジューシーペアの二人にロイヤルまで来ている。
というか、見事に囲まれてる。 正直逃げたい。
「まあ、一見社長の方が立場強そうで、実際は霧子さんの尻にしかれてるって感じだよなー、社長は」
いろんな意味でこのまま続けると自分の身が危うい気がしてきた。
コーヒーを飲み干す。
「さて、と。 あまり女子寮に男がいるのも望ましくないからそろそろ…」
「まあまあ社長」
立とうとした肩をロイヤルが押さえる。
「たまには選手との親睦を図るのも上司の仕事ってやつですよ」
逃げることもままならない。
「社長と霧子さんね…。 想像できるようなできないような…」
「うーん、そうだねー…」
みんなが黙り込む。 それはいったいどういう意味なのでしょうか?
「ほらお前たちも練習時間も近いんだから準備とか…」
「社長は霧子さんのことどう思ってるの?」
話を変えることもできない。
「どう、って…。 すごい有能な社員、ですよ?」
「まあ社長より有能な気もするけどな」
薄笑いで嫌味をさらりと言う千春。 ああ、そうだろうよ。 実際否定できないものもあるよっ!
「だよねー。 なんで霧子さんが社長じゃないの?」
「…富沢、それは年棒カットの要求か?」
「あ、あははは。 じょ、冗談じゃない、社長ー」
「何、じゃあ社長は霧子さんには興味ないの?」
「興味ない、って言うか…。 仕事中にそんなこと気にしてられないぞ? 仕事にならないじゃないか」
「霧子さんはどうなのかなあ?」
「気にしてないんじゃないんですかー? いつも定時でお帰りのようですしー」
微笑ながら結城が言う。 確かにそうなのだが、人に言われるとなぜか傷つくような気分になるものですね…。 いや構わないのだが。
時計を見ると結構な時間になってきてる。
「おい、お前たちそろそろ練習時間じゃないのか?」
「んー? そうだな、飯も食ったし社長からかうのもここらにするか」
なんですって?
「そうね。 じゃあそろそろ」
「ああ、社長私のコーチなんだからお互いさまだよ? むしろ選手より先じゃないの?」
「かったるいなー、まあ適当にやっか…」
好き放題言ってみんな去っていく。
「…。 なんだったんだ…」
「まあ彼女たちも年頃ですからその手の話はいい肴、ということですね」
「うわあっ! 霧子くんいつからっ!」
「金森さんの『社長は霧子さんのことどう思ってるの?』あたりからでしょうか」
なんか納得。 どうりでみんな霧子くんへは何も言わないわけだ…。
「まあこれでみんな今日も一日がんばってくれることでしょう」
「…私は?」
「『社長』ですから何があろうと毎日がんばってください」
これだから霧子くんの方が有能とか言われるんだろうな…。
コーチプランを立てながらジムへ向かう途中ぼんやり考える。 リングで戦う彼女たちも、霧子くんの言う通り年頃の女の子、なんだな、と。
それぞれいろいろな理由でリングに立っているけども、そこを忘れないでいよう、と改めて思ったのだった。
(終)
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