数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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ジューシーペア主導によるWCWWの業界での旋風により、破竹の勢いで各地域での人気が高まる中、彼女らのように一人海外で力をつけている選手がいた。
結城千種。 ぼんやりとした少女なのだが、ひたむきさがある。 そして投げ技に入る巧みさに目を奪われた。
「これは…大化けするかもしれないな…」
さすがにジューシーペアのふたりには敵わないかもしれないが、その対抗選手として期待できる。 そう踏んだのだが…
「ただいま戻りましたー」
いつも通りのぼんやりとした言葉と微笑みでいつも通りで帰ってきた。
「よく戻った。 どうだ? 手ごたえは感じたか?」
「ご飯のありがたさがわかりましたー」
「…」
相変わらずではあるが…。
「では、私が相手してあげましょう。 結城、リングに来なさい」
前回のジューシーペアの例もあるからか、ロイヤルがスパーリングパートナーをかってでる。 最近ではジューシーペアのおかげでポジションが微妙ゆえのあせりもあるのかもしれない。
「いやロイヤル、いくらなんでもお前が相手しなくともいいだろう」
「社長は黙っててください。 さあ結城」
「はーい」
戻ったばかりだと言うのに、更衣室へと向かっていく。 そして…
「これは…」
ロイヤルが呆然とする。 いや私もだ。 彼女の力はすでにロイヤルを超えていた。 まさかここまで腕を上げているとは…。
元々得意であったバックドロップ。 しかし背後を取り投げるまでの流れは速く、威力もロイヤルを見る限り相当のものだろう。
投げだけでなく他の技も巧みにこなす技術もいつの間にか身につけ、正直脅威とすら言えよう。 現時点でこそスターダムに乗り勢いのあるジューシーペアの二人に勝てないとしても、遠くない未来に越えていく。 そう思えるほどの輝きを彼女に感じていた。
さて、ジューシーペアの二人についても考えていたのだがここに結城まで加わって、社長として考えなければいけない、と思う。 実際波に乗っているとは言え、資本金としてはさしてないからだ。 というのも、先日のジューシーペアの売り出しにかなりの投資をさいたせいで、各地の人気が上がり集客はよくなったのが資本金回収にはまだしばらくかかる。
「…他所から客を奪う、その程度の心構えは私の義務かもしれないな……」
「どうかなさりましたか? 社長」
「去年の大々的勝負は成功したわけだが」
「ええ、そうですね。 作戦成功、というわけですね」
笑顔でこたえる霧子くんに私は言う。
「少々強引だが今年も続けて勝負しようと思う」
言うと霧子くんの笑顔が引きつる。
「…。 え、でも…まだ昨年の投資で資本金確保はできていませんが…」
「そう。 確保ができてない、であってないわけではないな?」
「しかし…」
「チャンスでもあるのだよ、霧子くん。 他団体及びそのファンたちの目も今うちに向いている。 当然マスコミもだ。 だからこそ畳み掛ける必要がある」
「どう…ですか?」
「クリス・モーガンを呼ぶ」
「!? あ、IWWFのっ!? しかしあそこは現在新女と契約している団体ですし…」
「そう、だから契約金を大幅に出すつもりだ」
フロントの抗争と言えよう。
「しかしっ…これから新年の契約更改も迎えるというのに…」
「ああ、そうだな。 でも霧子くん、忘れてないか? その前に何がある?」
「その前…ですか?」
「EXとプロレス大賞だよ。 正直賭けになってしまうが、今年のジューシーペアならいけると思うんだ。 およそ優勝と大賞を奪ってくると信じてる。 だからこそ、なんだよ。 結城も加わりモーガンもとなれば、完全に新女を抜くことができる」
「その…。 失礼ですが結城さんはそんなに?」
「ジューシーたちの持っているGWAを返還してもよいくらいに、だな」
「それはつまり…?」
「もっと高いレベルのうちを見せよう、ということさっ」
海外の団体と言えばここかWWCAというくらいの大団体IWWF。 そしてそこの絶対王者として君臨するクリス・モーガン。 あのパンサー理沙子すら子供扱いする彼女を迎えて、うちは新たなステージを目指す。
ジューシーペアの目の色も変わる。
「社長っ、マジか? あのモーガンと戦えるってのはっ!?」
「クリス・モーガン…。 あのクリス・モーガンと…」
「ああ、それだけじゃないぞ。 誰よりファンが待ってたものも用意した」
怪訝な顔を浮かべる二人。
「WCWW認定ヘビー級王座。 マスコミにも連絡した」
「!?」
「これにあわせて海外団体3団体を含めたリーグ戦を行う。 うちからは6選手。 2リーグ制で決勝のカードで最初のタイトル戦を行う。 抽選会の日程は近いうちに連絡する、と。 まあこんな感じだ」
「お、おいおい、社長。 楽しいことになってきたじゃねぇか…」
緊張も伺えるが相変わらずの強気なマッキー。
「タイトル戦は年明け…ってことですね?」
冷静に分析で返すマッキー。 お互い相変わらずでなんだかおかしい。
「その通り。 これは当然お前たちがEXのトロフィーを持ち帰ること前提の大プロジェクトだ。 12月『興行としては』新女に華を持たせるが、主役はうち、そして年明けからそのまま話題独占、というフロントの勝負というわけさ」
「完璧な計画、というわけですね…」
ニヤリと笑うロイヤルに力強く頷く。
「またその前段階として、ラッキーには申し訳ないがGWAヘビーのベルトを返還する」
「! …それは…なんででしょうか?」
「まあ不満に思うのはわかるが、アジア王者でもあるお前が巻くベルトではない、と思ってな」
「けど…」
「まあ待て。 お前にはむしろIWWFを見てくれ、ということだ。 もちろんラッキーだけでなくみんな、だが」
「なるほど…そういうことなら、まあ仕方ないですね…。 確かにそちらの方が魅力ではありますし」
「で、だ。 そのGWAタイトルを来月、凱旋興行として結城にローズとやってもらう」
「え、え? わ、私ですか?」
「社長、それって私とタイトル戦すればいいだけなんじゃないのですか?」
「悪いな、ラッキー。 会社としてはそんなおもしろいカードは今はまだ組むわけにはいかないんだ」
「…。 わかりました。 でもこれは会社への貸しにしておきますから」
不承不承ラッキーが折れる。 申し訳ないけども万一この時点でラッキーが負けようものなら後の流れに影響する。 およそラッキーは負けるわけないと思ってるからこそ、だろうが私としてはそうはいかない。 可能性だけならありうる。
「そういうわけで、君らには更なるハイレベルな試合、フロントとしては更なる集客というはっきりとした大きなステージが用意されることになる。 みんな気を引き締めてがんばって欲しい」
「はいっ!」
かくして一大プロジェクトはスタートし、選手たちのがんばりのおかげではあるが、おもしろいほど予定通りに事は運んだ。
リーグ戦は見事に抽選で別れたジューシーペアが決勝戦を行い、優勝したのはマッキー。 実力が均衡しているだけあって結果は予想も難しいほどだ。 とは言え王者は以前ラッキーのままなのだが。
GWA挑戦の結城はこれもまた見事にタイトルを獲得。 およそ会場のファンも驚いたろうが対戦したローズはもっと驚いていた。 圧倒的な結城のその強さに。
そしてEX。 こちらも圧倒的な強さでもってジューシーペアが優勝。 新女勢はそろそろ引退を視野に入れた選手たち。 対してジューシーペアは今が旬。 勝負になりようがないのは言うまでもなかった。
最後に新年早々の年明け興行最終日。 日本武闘館満員札止めの中、ラッキー内田が初代WCWW認定ヘビー級王者となった。
どうも彼女はここぞ、と言う時に強い。 あの冷静さがタイトル戦で生きている、と言うのだろうか? そんな風に思いながら試合を見ていた。
わずか4年。 WCWWは再び女子プロレスをリードする位置に戻っていた…
(終)
結城千種。 ぼんやりとした少女なのだが、ひたむきさがある。 そして投げ技に入る巧みさに目を奪われた。
「これは…大化けするかもしれないな…」
さすがにジューシーペアのふたりには敵わないかもしれないが、その対抗選手として期待できる。 そう踏んだのだが…
「ただいま戻りましたー」
いつも通りのぼんやりとした言葉と微笑みでいつも通りで帰ってきた。
「よく戻った。 どうだ? 手ごたえは感じたか?」
「ご飯のありがたさがわかりましたー」
「…」
相変わらずではあるが…。
「では、私が相手してあげましょう。 結城、リングに来なさい」
前回のジューシーペアの例もあるからか、ロイヤルがスパーリングパートナーをかってでる。 最近ではジューシーペアのおかげでポジションが微妙ゆえのあせりもあるのかもしれない。
「いやロイヤル、いくらなんでもお前が相手しなくともいいだろう」
「社長は黙っててください。 さあ結城」
「はーい」
戻ったばかりだと言うのに、更衣室へと向かっていく。 そして…
「これは…」
ロイヤルが呆然とする。 いや私もだ。 彼女の力はすでにロイヤルを超えていた。 まさかここまで腕を上げているとは…。
元々得意であったバックドロップ。 しかし背後を取り投げるまでの流れは速く、威力もロイヤルを見る限り相当のものだろう。
投げだけでなく他の技も巧みにこなす技術もいつの間にか身につけ、正直脅威とすら言えよう。 現時点でこそスターダムに乗り勢いのあるジューシーペアの二人に勝てないとしても、遠くない未来に越えていく。 そう思えるほどの輝きを彼女に感じていた。
さて、ジューシーペアの二人についても考えていたのだがここに結城まで加わって、社長として考えなければいけない、と思う。 実際波に乗っているとは言え、資本金としてはさしてないからだ。 というのも、先日のジューシーペアの売り出しにかなりの投資をさいたせいで、各地の人気が上がり集客はよくなったのが資本金回収にはまだしばらくかかる。
「…他所から客を奪う、その程度の心構えは私の義務かもしれないな……」
「どうかなさりましたか? 社長」
「去年の大々的勝負は成功したわけだが」
「ええ、そうですね。 作戦成功、というわけですね」
笑顔でこたえる霧子くんに私は言う。
「少々強引だが今年も続けて勝負しようと思う」
言うと霧子くんの笑顔が引きつる。
「…。 え、でも…まだ昨年の投資で資本金確保はできていませんが…」
「そう。 確保ができてない、であってないわけではないな?」
「しかし…」
「チャンスでもあるのだよ、霧子くん。 他団体及びそのファンたちの目も今うちに向いている。 当然マスコミもだ。 だからこそ畳み掛ける必要がある」
「どう…ですか?」
「クリス・モーガンを呼ぶ」
「!? あ、IWWFのっ!? しかしあそこは現在新女と契約している団体ですし…」
「そう、だから契約金を大幅に出すつもりだ」
フロントの抗争と言えよう。
「しかしっ…これから新年の契約更改も迎えるというのに…」
「ああ、そうだな。 でも霧子くん、忘れてないか? その前に何がある?」
「その前…ですか?」
「EXとプロレス大賞だよ。 正直賭けになってしまうが、今年のジューシーペアならいけると思うんだ。 およそ優勝と大賞を奪ってくると信じてる。 だからこそ、なんだよ。 結城も加わりモーガンもとなれば、完全に新女を抜くことができる」
「その…。 失礼ですが結城さんはそんなに?」
「ジューシーたちの持っているGWAを返還してもよいくらいに、だな」
「それはつまり…?」
「もっと高いレベルのうちを見せよう、ということさっ」
海外の団体と言えばここかWWCAというくらいの大団体IWWF。 そしてそこの絶対王者として君臨するクリス・モーガン。 あのパンサー理沙子すら子供扱いする彼女を迎えて、うちは新たなステージを目指す。
ジューシーペアの目の色も変わる。
「社長っ、マジか? あのモーガンと戦えるってのはっ!?」
「クリス・モーガン…。 あのクリス・モーガンと…」
「ああ、それだけじゃないぞ。 誰よりファンが待ってたものも用意した」
怪訝な顔を浮かべる二人。
「WCWW認定ヘビー級王座。 マスコミにも連絡した」
「!?」
「これにあわせて海外団体3団体を含めたリーグ戦を行う。 うちからは6選手。 2リーグ制で決勝のカードで最初のタイトル戦を行う。 抽選会の日程は近いうちに連絡する、と。 まあこんな感じだ」
「お、おいおい、社長。 楽しいことになってきたじゃねぇか…」
緊張も伺えるが相変わらずの強気なマッキー。
「タイトル戦は年明け…ってことですね?」
冷静に分析で返すマッキー。 お互い相変わらずでなんだかおかしい。
「その通り。 これは当然お前たちがEXのトロフィーを持ち帰ること前提の大プロジェクトだ。 12月『興行としては』新女に華を持たせるが、主役はうち、そして年明けからそのまま話題独占、というフロントの勝負というわけさ」
「完璧な計画、というわけですね…」
ニヤリと笑うロイヤルに力強く頷く。
「またその前段階として、ラッキーには申し訳ないがGWAヘビーのベルトを返還する」
「! …それは…なんででしょうか?」
「まあ不満に思うのはわかるが、アジア王者でもあるお前が巻くベルトではない、と思ってな」
「けど…」
「まあ待て。 お前にはむしろIWWFを見てくれ、ということだ。 もちろんラッキーだけでなくみんな、だが」
「なるほど…そういうことなら、まあ仕方ないですね…。 確かにそちらの方が魅力ではありますし」
「で、だ。 そのGWAタイトルを来月、凱旋興行として結城にローズとやってもらう」
「え、え? わ、私ですか?」
「社長、それって私とタイトル戦すればいいだけなんじゃないのですか?」
「悪いな、ラッキー。 会社としてはそんなおもしろいカードは今はまだ組むわけにはいかないんだ」
「…。 わかりました。 でもこれは会社への貸しにしておきますから」
不承不承ラッキーが折れる。 申し訳ないけども万一この時点でラッキーが負けようものなら後の流れに影響する。 およそラッキーは負けるわけないと思ってるからこそ、だろうが私としてはそうはいかない。 可能性だけならありうる。
「そういうわけで、君らには更なるハイレベルな試合、フロントとしては更なる集客というはっきりとした大きなステージが用意されることになる。 みんな気を引き締めてがんばって欲しい」
「はいっ!」
かくして一大プロジェクトはスタートし、選手たちのがんばりのおかげではあるが、おもしろいほど予定通りに事は運んだ。
リーグ戦は見事に抽選で別れたジューシーペアが決勝戦を行い、優勝したのはマッキー。 実力が均衡しているだけあって結果は予想も難しいほどだ。 とは言え王者は以前ラッキーのままなのだが。
GWA挑戦の結城はこれもまた見事にタイトルを獲得。 およそ会場のファンも驚いたろうが対戦したローズはもっと驚いていた。 圧倒的な結城のその強さに。
そしてEX。 こちらも圧倒的な強さでもってジューシーペアが優勝。 新女勢はそろそろ引退を視野に入れた選手たち。 対してジューシーペアは今が旬。 勝負になりようがないのは言うまでもなかった。
最後に新年早々の年明け興行最終日。 日本武闘館満員札止めの中、ラッキー内田が初代WCWW認定ヘビー級王者となった。
どうも彼女はここぞ、と言う時に強い。 あの冷静さがタイトル戦で生きている、と言うのだろうか? そんな風に思いながら試合を見ていた。
わずか4年。 WCWWは再び女子プロレスをリードする位置に戻っていた…
(終)
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