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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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 (桂と烏月)

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「じーっ」
「うん? どうかしたかい、桂さん?」
 お守りに力を入れに来てくれた烏月さんに、お茶を出して二人で飲んでいたのだが、ついついじっと見つめてしまっていた。
「えっと…その、楽にして欲しいなー、って」
「え? ああ、これのことかい?」
 そう言って、烏月さんは自分の脚を見る。 きちんとした正座。
「脚つらくない?」
「いや、いつもこうだから。 この方が楽なんだよ」
「前に陽子ちゃんとお茶飲みに行った時も思ったんだけど、烏月さんって、いつも背筋がピンとしてて凄いな。 …だけど、疲れない?」
「…全く、というわけではないけど、慣れているからね」
 やわらかい微笑みで烏月さんが答える。
「でも少しは疲れるんだ」
「ああ、そうだね」

 ならば! 守られてばかりの羽藤桂、今こそ役に立つ時!
「じゃあ烏月さん、わたしが肩をお揉みしましょう♪」
「えっ?」
「さあさあ♪」
 烏月さんの背中にまわり、肩を揉む。
「け、桂さん」
「うまくないと思うけど、その時は遠慮なく言ってね」
「いやでも…」
「嫌かな…?」
「…いや、ありがたくお受けするよ」
「うん♪」
 やっぱり迷惑かけている気もするけれど、できることはしたい。
 だって、大好きだから。

 …だけど。

「う、ううー…」
 華奢な体つきでも烏月さんは日々戦いの中に身を置く人、しっかりと筋肉があって、だらだら過ごしているわたしとは違う。
 何が言いたいかというと、揉むわたしの手の方があっさり疲労負けのもよう。
「大丈夫かい? 桂さん」
 後ろを振り返り心配そうな顔でわたしを見上げる烏月さん。
「ごめんなさい…烏月さん。 わたしって本当役立たずなんだね…」
 自分の不甲斐なさに肩を落として烏月さんを見る。 なんだか泣きたくなってきた。
 だけど、烏月さんは優しくて。
「そんなことないよ、桂さん。 充分なくらい楽になったよ」
 やわらかく微笑んで、わたしの手に手を重ねてくれる。
「本当だよ」
「烏月さん…」
 わたしはしゃがんで烏月さんの肩に頭を寄せる。

 夕暮れ迫る午後、二人の影が重なっていた。



(終)
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