数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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「特に桂おねーさんは、よろしくしてやってくださいね!」
そう言って、小さなクラスメートができたのだが…。
「桂おねーさん、お昼一緒に食べましょうっ」
「あ、うん。 陽子ちゃんとお凛さんも一緒だけどいい? あ、陽子ちゃんって言うのは奈良陽子ちゃんで、お凛さんって言うのは東郷凛さんのことね」
「東郷?」
「どうかした?」
「いえいえ。 …まあ、いいですよ」
「まあ、ってのは何だ。 まあ、って」
近付いてきた陽子が葛に向かって言う。
「別に」
「失礼します」
と凛が近くの席に座り、桂の席とくっつける。
「そう言えば葛ちゃん、お弁当は?」
「…来る時にパンを買ってきました」
「あ、そ、そっか…。 …ごめんね、葛ちゃん」
葛の境遇を思い出し、謝る桂。
「いえ、構いませんよ。 自分だけが不幸だとか思っていませんし。 ただ、お弁当を作ってくれる親がいないのは寂しいですけどねー」
表情こそ明るいものの、声の方は暗い。
「…そうだ! わたし葛ちゃんの分も作ってきてあげようか?」
「え? いいんですか? 桂おねーさん」
「うん、いいよ。 大した物は作れないけど…」
「いえいえ構いませんよ。 嬉しいです♪」
満面の笑みで葛が応える。
「…」
そのやり取りを凛は黙って見つめていた。
「両親いない、って…。 じゃ、子供一人で暮らしてるの?」
「そう言えば葛ちゃん今どこに住んでるの?」
「えーっと、それは…」
と、何か思いついたのか、葛の眼が一瞬妖しく光る。
「…えー、少し離れた場所で家族も無く暮らしてるんです。 何かと心細いのですが…」
「ええっ、そうなのっ!?」
驚く桂。
「たいへんだねー」
おざなりの返事な陽子。
「…」
黙って聞いている凛。
三者三様の中、一番素直な反応をした桂が提案を挙げた。
「そうかー…。 じゃあ葛ちゃん、わたしと住む? 今わたしも一人暮しだし」
「本当ですかっ」
先程以上の笑顔で葛が応える。
「はとちゃん! いきなり同棲なんて、何考えてんの。 こんな小さい子をたぶらかすなんて…」
「たぶらかしてなんかないよっ。 変なこと言わないでよ、陽子ちゃんっ!」
「…」
黙ったまま葛の方を見る凛。
「葛ちゃんはね、その…いろいろとたいへんなんだよ」
「おっ? はとちゃん、何それ? この子の何を知ってるの?」
「それは…」
桂と陽子がやいやいと言い合いを始める。
「…何か? 東郷さん」
凛の視線を感じ、ここまで一度も見せたことの無い冷たく厳しい目と口調で、葛が凛に話しかける。
「嘘はよくないか、と」
「嘘?」
「食事を作ってくれる人がいないとか」
「わたしは作ってくれる『親』がいない、と言いましたよ?」
薄く笑い葛が答える。
「一人で暮らしているかのように言ってましたし」
「そう聞こえたかもしれませんが、そうは言ってないですね」
余裕の表情で返す。 凛にしては珍しく焦りの表情が浮かぶ。
「計算づく、というわけですか?」
「何のことでしょう?」
視線がぶつかる。
「葛ちゃん?」
「っ!? はい? なんですか? 桂おねーさん」
一瞬で表情を変え、桂の方を向く。
「お凛さんと何話してたの? 仲良くなれた?」
「ええ。 ねえ東郷さん」
笑顔で凛に話しかける。
「…羽藤さん」
「東郷さん。 東郷さんの家はたいそう大きいそうで、いろんな所とぶつかりあいなんかもあるんでしょうねえ」
「!?」
鋭い目で葛を見る。 葛は笑顔のままだ。 だが、どこかうすら怖い。
「お凛はねー、お嬢だからねー」
「あ、でも葛ちゃんも…」
「それはさておき。 そうなると敵も多いでしょうねえー…。 送り迎えの時に『誰か』に襲われたりとかするんでしょうかねえー」
「…どういう意味でしょう?」
「いいええー、別にぃー。 ただ、『親』が力を持ってると子供はたいへんだろうなー、と。 子供には力は無いのにねえ…」
余裕の表情の葛と少し苛立った表情の凛。 そしてなんだかよくわからない桂と陽子。
「二人ともどうかしたの?」
「いえいえ、別に何も。 それより早くお昼食べてしまわないと、休み時間終わっちゃいますよ?」
「えっ? もうそんな時間なの?」
「そうだねー。 とっとと食べますかー」
「…」
戦いはまだ始まったばかり、波乱の高校生活の始まりである。
(終)
そう言って、小さなクラスメートができたのだが…。
「桂おねーさん、お昼一緒に食べましょうっ」
「あ、うん。 陽子ちゃんとお凛さんも一緒だけどいい? あ、陽子ちゃんって言うのは奈良陽子ちゃんで、お凛さんって言うのは東郷凛さんのことね」
「東郷?」
「どうかした?」
「いえいえ。 …まあ、いいですよ」
「まあ、ってのは何だ。 まあ、って」
近付いてきた陽子が葛に向かって言う。
「別に」
「失礼します」
と凛が近くの席に座り、桂の席とくっつける。
「そう言えば葛ちゃん、お弁当は?」
「…来る時にパンを買ってきました」
「あ、そ、そっか…。 …ごめんね、葛ちゃん」
葛の境遇を思い出し、謝る桂。
「いえ、構いませんよ。 自分だけが不幸だとか思っていませんし。 ただ、お弁当を作ってくれる親がいないのは寂しいですけどねー」
表情こそ明るいものの、声の方は暗い。
「…そうだ! わたし葛ちゃんの分も作ってきてあげようか?」
「え? いいんですか? 桂おねーさん」
「うん、いいよ。 大した物は作れないけど…」
「いえいえ構いませんよ。 嬉しいです♪」
満面の笑みで葛が応える。
「…」
そのやり取りを凛は黙って見つめていた。
「両親いない、って…。 じゃ、子供一人で暮らしてるの?」
「そう言えば葛ちゃん今どこに住んでるの?」
「えーっと、それは…」
と、何か思いついたのか、葛の眼が一瞬妖しく光る。
「…えー、少し離れた場所で家族も無く暮らしてるんです。 何かと心細いのですが…」
「ええっ、そうなのっ!?」
驚く桂。
「たいへんだねー」
おざなりの返事な陽子。
「…」
黙って聞いている凛。
三者三様の中、一番素直な反応をした桂が提案を挙げた。
「そうかー…。 じゃあ葛ちゃん、わたしと住む? 今わたしも一人暮しだし」
「本当ですかっ」
先程以上の笑顔で葛が応える。
「はとちゃん! いきなり同棲なんて、何考えてんの。 こんな小さい子をたぶらかすなんて…」
「たぶらかしてなんかないよっ。 変なこと言わないでよ、陽子ちゃんっ!」
「…」
黙ったまま葛の方を見る凛。
「葛ちゃんはね、その…いろいろとたいへんなんだよ」
「おっ? はとちゃん、何それ? この子の何を知ってるの?」
「それは…」
桂と陽子がやいやいと言い合いを始める。
「…何か? 東郷さん」
凛の視線を感じ、ここまで一度も見せたことの無い冷たく厳しい目と口調で、葛が凛に話しかける。
「嘘はよくないか、と」
「嘘?」
「食事を作ってくれる人がいないとか」
「わたしは作ってくれる『親』がいない、と言いましたよ?」
薄く笑い葛が答える。
「一人で暮らしているかのように言ってましたし」
「そう聞こえたかもしれませんが、そうは言ってないですね」
余裕の表情で返す。 凛にしては珍しく焦りの表情が浮かぶ。
「計算づく、というわけですか?」
「何のことでしょう?」
視線がぶつかる。
「葛ちゃん?」
「っ!? はい? なんですか? 桂おねーさん」
一瞬で表情を変え、桂の方を向く。
「お凛さんと何話してたの? 仲良くなれた?」
「ええ。 ねえ東郷さん」
笑顔で凛に話しかける。
「…羽藤さん」
「東郷さん。 東郷さんの家はたいそう大きいそうで、いろんな所とぶつかりあいなんかもあるんでしょうねえ」
「!?」
鋭い目で葛を見る。 葛は笑顔のままだ。 だが、どこかうすら怖い。
「お凛はねー、お嬢だからねー」
「あ、でも葛ちゃんも…」
「それはさておき。 そうなると敵も多いでしょうねえー…。 送り迎えの時に『誰か』に襲われたりとかするんでしょうかねえー」
「…どういう意味でしょう?」
「いいええー、別にぃー。 ただ、『親』が力を持ってると子供はたいへんだろうなー、と。 子供には力は無いのにねえ…」
余裕の表情の葛と少し苛立った表情の凛。 そしてなんだかよくわからない桂と陽子。
「二人ともどうかしたの?」
「いえいえ、別に何も。 それより早くお昼食べてしまわないと、休み時間終わっちゃいますよ?」
「えっ? もうそんな時間なの?」
「そうだねー。 とっとと食べますかー」
「…」
戦いはまだ始まったばかり、波乱の高校生活の始まりである。
(終)
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