数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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こうして今旅をしているのは不思議な気分。 一緒に歩いているパーティの顔を見ながら思う。
「どうしたの、エレンディア? どこか痛いのぉ?」
すぐ横を歩く私の大切な妹であるルルアンタが心配そうに私を見上げている。
「ううん、大丈夫。 どこも痛くないわよ」
「でもなんか今ぼーっとしてたよぉ?」
「うん…。 お父さんが亡くなってもうすぐ一年になるかな、ってね」
「フリントさん…」
ルルアンタが悲しそうに俯く。
「あ、でもそれで落ち込んでたってわけじゃないのよ? もちろん悲しいけど、今こうしているのが不思議だなあって思ってたの」
「不思議?」
「ええ。 私ずっとお父さんやルルアンタと旅をする人生なんだろうな、って思ってたけど、こんな風になることは考えもしなかったから」
「ふーん?」
自分自身でもよくわからない言い方だったため、ルルアンタは返事に困っている。
「よくわからないけどぉ、ルルアンタはエレンディアとずっと一緒にいるよっ」
そう言ってルルアンタは笑顔を見せる。
「うん。 ずっと一緒ね」
私も笑顔で返した。
「どうでもいいけど今どこに向かってるわけ?」
後ろから声がかかる。 わがままエルフのフェティだ。
「今はとりあえず仕事でエンシャントだけど…。 そのままウルカーンに行こうかと思ってるわ」
「はあ? なんであんな辺境に行かなきゃいけないのよっ。 アタクシはあんな暑苦しい場所はイヤよっ」
「フレアちゃんに会いに行くのぉ? エレンディア」
「うん…。 いろんな巫女さんに会ったけど…イークレムンさんやエアとか。 なんかフレアは見ててつらそうなんだよね」
「フレアちゃん、悲しそうな顔してたね」
「ちょっとあんた達アタクシの話を聞いてるのっ?」
「だからね、友達になりたいなって思ってね」
「うんっ。 ルルアンタも友達になるっ」
「このアタクシを無視するんじゃないわよっ!」
「…だってどうせフェティはどこ行くにも文句ばかりじゃない」
フェティの方を向いて私は言う。
「だ・か・らっ、こんな世界はつまらないって言ってんでしょっ。 あなたが『世界は驚きに満ちている』って言ったんだから、責任取りなさいっ」
「エンシャントに着いたらエステルちゃんも帰ってくるかなぁ?」
「どうかなー。 ま、彼女は彼女で忙しいみたいだから。 カルラはいるかな?」
「エレンディア、カルラちゃんと会ったのぉ?」
「うん。 何回か会ってるわよ」
「だから無視するんじゃないわよっ! あんな小娘どもなんかどうでもいいわよっ!」
「小娘って…」
ほとんど同じ位の年齢にしか見えないエステルやカルラをそう呼ぶフェティに呆れたが、
「フェティちゃんはとっても長生きだからねー」
ルルアンタが私を見上げ言う。
「そうなの?」
「千年以上なのぉ」
「そんなに!?」
「…どうしてリルビー風情がアタクシの年齢を知ってるのっ」
「この前猫屋敷に行った時にオルファウスさんが教えてくれたのぉ」
「なんであいつがそんなこと知ってんのよっ!」
「それは聞いてないのぉ」
ルルアンタと言い合いをしているフェティを見ながら、空に思いを馳せる。 けれどわずか数十年の命の身としては想像も及ばない。
「千年以上、か…。 フェティもたいへんなんだな…」
と、遠くにエンシャントの町並みが見えてきた。
「二人とも、エンシャントが見えてきたわよっ」
「わーい、ルルアンタ、カルラちゃんに会うのー」
そう言ってルルアンタは私に寄ってきて手を握る。
「だからなんだと言うのよ。 くだらない」
いつものように不満顔でフェティは切り捨てる。
「フフフ」
「何がおかしいの」
「ウフフフフ」
「どうしたのぉ? エレンディア」
「冒険は楽しいわね、ってね」
「うんっ」
「何が楽しいって言うのよ、バカじゃないの?」
「ウフフフフ」
みんないろいろな悲しみや苦しみを背負っている。 ルルアンタ、フェティ、今はいないエステル、出会った人達、これから出会う人達、そして私。
だけど、悲しみや苦しみだけではないし、だけにはしたくない。 笑顔でいられる時間を必ず手に入れる。
今は不満そうなフェティにだって、これから会いに行くフレアにだって、笑顔になって欲しい。 生きている今を楽しんで欲しい。
風を体に浴びて、大地を踏みしめ、清流のせせらぎを聞き、情熱の炎を心に灯す。 無限に広がる世界を生きる、それこそが冒険。
時に悲しみ合い、時に笑い合う、仲間はいつも側にいる。
「エレンディアどうしたのー? ルルアンタ先に行っちゃうよぉー」
「何ぼんやりしてるのよ、早くしなさいよっ」
お父さん、私は元気にがんばっていますっ。
「待ちなさいよ、二人ともーっ」
(終)
「どうしたの、エレンディア? どこか痛いのぉ?」
すぐ横を歩く私の大切な妹であるルルアンタが心配そうに私を見上げている。
「ううん、大丈夫。 どこも痛くないわよ」
「でもなんか今ぼーっとしてたよぉ?」
「うん…。 お父さんが亡くなってもうすぐ一年になるかな、ってね」
「フリントさん…」
ルルアンタが悲しそうに俯く。
「あ、でもそれで落ち込んでたってわけじゃないのよ? もちろん悲しいけど、今こうしているのが不思議だなあって思ってたの」
「不思議?」
「ええ。 私ずっとお父さんやルルアンタと旅をする人生なんだろうな、って思ってたけど、こんな風になることは考えもしなかったから」
「ふーん?」
自分自身でもよくわからない言い方だったため、ルルアンタは返事に困っている。
「よくわからないけどぉ、ルルアンタはエレンディアとずっと一緒にいるよっ」
そう言ってルルアンタは笑顔を見せる。
「うん。 ずっと一緒ね」
私も笑顔で返した。
「どうでもいいけど今どこに向かってるわけ?」
後ろから声がかかる。 わがままエルフのフェティだ。
「今はとりあえず仕事でエンシャントだけど…。 そのままウルカーンに行こうかと思ってるわ」
「はあ? なんであんな辺境に行かなきゃいけないのよっ。 アタクシはあんな暑苦しい場所はイヤよっ」
「フレアちゃんに会いに行くのぉ? エレンディア」
「うん…。 いろんな巫女さんに会ったけど…イークレムンさんやエアとか。 なんかフレアは見ててつらそうなんだよね」
「フレアちゃん、悲しそうな顔してたね」
「ちょっとあんた達アタクシの話を聞いてるのっ?」
「だからね、友達になりたいなって思ってね」
「うんっ。 ルルアンタも友達になるっ」
「このアタクシを無視するんじゃないわよっ!」
「…だってどうせフェティはどこ行くにも文句ばかりじゃない」
フェティの方を向いて私は言う。
「だ・か・らっ、こんな世界はつまらないって言ってんでしょっ。 あなたが『世界は驚きに満ちている』って言ったんだから、責任取りなさいっ」
「エンシャントに着いたらエステルちゃんも帰ってくるかなぁ?」
「どうかなー。 ま、彼女は彼女で忙しいみたいだから。 カルラはいるかな?」
「エレンディア、カルラちゃんと会ったのぉ?」
「うん。 何回か会ってるわよ」
「だから無視するんじゃないわよっ! あんな小娘どもなんかどうでもいいわよっ!」
「小娘って…」
ほとんど同じ位の年齢にしか見えないエステルやカルラをそう呼ぶフェティに呆れたが、
「フェティちゃんはとっても長生きだからねー」
ルルアンタが私を見上げ言う。
「そうなの?」
「千年以上なのぉ」
「そんなに!?」
「…どうしてリルビー風情がアタクシの年齢を知ってるのっ」
「この前猫屋敷に行った時にオルファウスさんが教えてくれたのぉ」
「なんであいつがそんなこと知ってんのよっ!」
「それは聞いてないのぉ」
ルルアンタと言い合いをしているフェティを見ながら、空に思いを馳せる。 けれどわずか数十年の命の身としては想像も及ばない。
「千年以上、か…。 フェティもたいへんなんだな…」
と、遠くにエンシャントの町並みが見えてきた。
「二人とも、エンシャントが見えてきたわよっ」
「わーい、ルルアンタ、カルラちゃんに会うのー」
そう言ってルルアンタは私に寄ってきて手を握る。
「だからなんだと言うのよ。 くだらない」
いつものように不満顔でフェティは切り捨てる。
「フフフ」
「何がおかしいの」
「ウフフフフ」
「どうしたのぉ? エレンディア」
「冒険は楽しいわね、ってね」
「うんっ」
「何が楽しいって言うのよ、バカじゃないの?」
「ウフフフフ」
みんないろいろな悲しみや苦しみを背負っている。 ルルアンタ、フェティ、今はいないエステル、出会った人達、これから出会う人達、そして私。
だけど、悲しみや苦しみだけではないし、だけにはしたくない。 笑顔でいられる時間を必ず手に入れる。
今は不満そうなフェティにだって、これから会いに行くフレアにだって、笑顔になって欲しい。 生きている今を楽しんで欲しい。
風を体に浴びて、大地を踏みしめ、清流のせせらぎを聞き、情熱の炎を心に灯す。 無限に広がる世界を生きる、それこそが冒険。
時に悲しみ合い、時に笑い合う、仲間はいつも側にいる。
「エレンディアどうしたのー? ルルアンタ先に行っちゃうよぉー」
「何ぼんやりしてるのよ、早くしなさいよっ」
お父さん、私は元気にがんばっていますっ。
「待ちなさいよ、二人ともーっ」
(終)
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