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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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 (微妙に「アカイイト落語」・「アカイイト落語2」と繋がってます)

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 さてさて、落語好きの桂おねーさんのために、みんなで落語話をできるだけやってみましょうー。

「できるだけ、なんだ…」
 まあ、何かと引っ掻き回す人もいることですし。
「こら、何他人のせいにしてんだい。 いつも引っ掻き回してるのは葛、あんただろ」
「同感ですね」
「今回はちゃんとやろうね」
 さて、今回のお題なんですが…。
「何無視してんだい。 それともまた引っ掻き回すつもりかい? 葛」
 一応候補は3つ程あったのですが、どれも苦しくて…。
「…どうやらそのつもりのようですね」
 でたらめな落語であってもそれはそれで作り手には苦労があるわけで…。
「葛ちゃん何言ってるの?」
「最近お忙しいご様子でしたから…」

 と言うわけで、桂おねーさんは狐役で。
「あ、うん。 がんばるね?」
 サクヤさんはメインの町人役で。
「あたしかい? 桂じゃないのかい?」
 ええ。 たまにはいいかと。 烏月さんは子狐役と料亭のおかみ役で。
「わかりました」
 その他及び進行役はこの若杉葛でお送りしまーす。

「で、葛ちゃん。 もしかして今回のお題は…」
 はいです、桂おねーさん。 王子の狐で。
「狐だったらあんたの方がお似合いじゃないかい?」
「どちらも犬科ですが」
「何と並べてんだい? 烏月」
「別に」
「ちょっと2人とも、まだ始めてもいないのに喧嘩しちゃダメだよ」
「わかったよ、桂」
「すまない、桂さん」
「それじゃあみんな、がんばろうねっ」
「へいへいっと」
「わかりました」

ーーー

 王子の稲荷にお参りに来た男。 ふと物陰から聞こえた音に興味を持って、覗きこんでみると狐が女に化ける所であった。
「おや狐がえらいかわいい女に化けたよ。 狐は稲荷の使い姫っていうけど本当だよ。 あれじゃあ化かされるってもんさね。 けど見ちまったからになんてこたない、いっそこっちが化かしてやるかね」
 いやらしい笑みを浮かべ男は狐の化けた女へと近寄った

「ちょいお待ち」
「どうしたの? サクヤさん」
「今悪意のある解説があったよ」
 考えすぎですよ。 ええ、原典通りですよ。
「…」

「桂、桂」
 あたかも誘拐犯のような猫なで声で男が声をかける。

「だからお待ちっ」
 なんですか一体?
「ほう…今のあからさまな悪意にシラを切るかい。 葛」
「ま、まあまあサクヤさん。 と、年上なんだしっ」
 ま、いくつになっても心の成熟が見られない者も世の中にはいますが。
「困ったものですね」
「あんたらねぇ…」
「ね、ちょっとみんな仲良くやろうよ」

ーーー

「あ、サ、兄ィさん」
「いや、後ろ姿がよく似てたから声かけたんだけどさ。 こんな所で桂に会うとは思わなかったよ。 どうしてこんな所に?」
「ええ、稲荷にお参りに来てね。 天気がいいからそのままぶらぶら歩いてたの」
「そうかい。 あたしも稲荷にお参りに来たんだけどさ。 これも何かの縁だ。 桂、飯でも奢ろうじゃないか」

 いよいよ人さらいの様相を呈してきましたね。
「…あんた、たまに真面目にやるとこの扱いかい。 なんか言いたい事があるならはっきり言ったらどうだい」
 いいええー、別にー。
「葛ちゃんっ」
 おねーさん、すいません。 少々疲れ気味で、つい。
「大丈夫? もううちで休む?」
 うぅ…わたしのような招かれざる者にそんな暖かいお言葉を…。
「…白々しい…。 この企画やめた方がいいんじゃないかい?」
「最初から真面目にやる気は無かった気もしますしね」

 閑話休題

「え? でもいいの? わたしとじゃ迷惑になるんじゃないかな…」
「そんなことないよ、桂。 あたしはあんたのためなら何でもするさ。 羽藤の血はあたしが守るからね」
「って、え? あの、サクヤさん?」
 ちょっとちょっとサクヤさん。 おねーさん連れてどこに行くんですか? 真面目にやるんじゃないんですか?
「人の事は言えない気がしますが」
 …何か言いました? 烏月さん。
「…いえ」
 ちゃんとやりましょう、みなさん。

ーーー

「ああ、構わないさ。 じゃ、話は決まりだ。 すぐそこに茜屋って小料理店がある。 そこで一杯やりながら話そうじゃないか」
「うん、じゃあよろしくね」
「さ、じゃ行こうか…えぇ、ごめんよっ」
 いらっしゃいませー。 どうぞお二人様、お二階へご案内ー。
「桂、二階だってさ。 …ああ、こりゃいい眺めだ。 春霞がかかって、鶯が鳴き…桂、どうぞ上座にお座りよ」
「え、えっと…」
「姐さん、まずはすぐに一本つけてもらえるかい? 早幕で申し訳ないけど、今日は盛大に行くからそれで勘弁さ。 酒はどんどん出してくんな」
 一応言っておきますけど本物は出しませんから。
「なんだい、締まらないねえ。 いいじゃないのさ」
「サクヤさん、お酒は20を過ぎてからだよ」
「その人に言っても無駄かもしれませんが」
「何か言ったかい、烏月?」
「いや別に」

ーーー

「肴は刺身といきましょう。 桂はどうする? 油揚げ? はぁ、なるほど。 だけどこんな店で油揚げもいただけない、他にはどうだい? 天麩羅? なるほど揚げが好きでいらっしゃる、かな?」
「兄ィさん、お酌しましょう」
「いやあたしが誘ったんだ、まずは一杯。 ああ、しかし桂きれいになったねえ。 久しく見ないうちにいい毛並み…きれいな髪になって。 さてもう一杯」
「わたし、そんな飲めないよ」
「いやいや大丈夫大丈夫。 いざとなったら介抱するさ。 ほら天麩羅もきた、冷めない内におあがりなさい。 どれ、もう一杯…」
 差し向かいで飲みつ飲まれつ、いつしか狐はほろ酔いだして…
「兄ィさん、わたしもう眠くて…」
「そうかい? じゃあ少し休むといい。 あたしは一人でやってるからさ」
 狐が寝たのを見届けて、男はそっと部屋を抜け出す。
 あら、お帰りですか?
「ああ、上で連れが眠ってるけど起こさないでやってくれ。 疲れてるみたいなんでね。 あたしは先にあがるけど、お代は連れからもらっておくれ。 大丈夫、紙入れは渡してあるからさ」
 はあ、かしこまりました。
「ついでになんか包んでくれるかい? 近くの知り合いに土産にするからさ」
 はい、ただいま。

「二階のお客はそろそろ起こした方がいいのではないですか?」
 そうですね。 ではさっそく。

 お客さま、お客さま。 あら本当によく寝てらっしゃる…でもこれ以上お休みでは体に障ります。 では失礼して…。
「…お待ち。何で耳と尻尾が出てんだい?」
 ちゅっ♪
「~っ!? つ、葛ちゃんっ!?」
「こらっ!! 葛ぁっ!!」
「葛様っ、何をっ!!」
 こうして姫は王子のくちづけで目を覚ましたのでしたー。 これぞ正に王子の狐。

 と言う訳で、みんなで落語話をやってみようー、第3段、王子の狐でしたー。 お後がよろしいようで…。

「待ちなっ! 今日と言う今日は許さないよっ!!」
「葛様っ、今日はいろいろと納得がいかないのですがっ!」
「よろしくないーっ! 葛ちゃんーっ! これは落語じゃなくて童話でしょーっ!!」



(終)
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