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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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 (桂とサクヤ)

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「ねえサクヤさん」
「なんだい桂?」
 食事も終わりお茶を飲みながらくつろいでいた所で、ずっと聞きたかった事を聞いてみる。
「お父さんのこと教えて欲しいな」
「…ああ」
 ほんの少し迷った顔を浮かべた後、優しい笑顔になって話してくれた。
「笑子さんに似てきれいな顔しててね。 子供の頃は女の子のようだったよ」
「かっこよかったんだ」
「いやかっこいい、ってのとは違ったかなー」
「そうなの?」
「ああ。 きれいな顔してた」
 遠い目をして笑みを浮かべる。
「…もしかしてサクヤさん、お父さん好きだった?」
「生憎とあいつが寝小便してる頃から知ってるんで、そんな気にはなれなかったね。 さしずめ年の離れた弟だったね」
「ふーん」
「まあ顔だけでなく、よく笑子さんに似ててね。 暢気な子だったさ」
「そうなんだー」
「ま、暢気なのは羽藤の血筋なんだね」
「へー」

「…」
「…」
「…」
「…」
「わたしも?」
「そういう所が、だよ」
 そう言うと、サクヤさんは笑いながらわたしの頭をぐりぐりと撫でまわした。



「どうしてサクヤさんはお母さんとお父さんを…その…」
「ああ、それはね…」
 懐かしげな表情でサクヤさんは語った。

「前にも話したと思うが、真弓とは敵として出会った。 あたしは鬼で真弓は鬼切り、当然さね。 ただ…ま、その内意気投合してね」
「どうして? お母さんとサクヤさんって、全然性格違うのに?」
「桂にもその内わかるさ。 自分に無い物を持ってる者には惹かれるもんだよ」
「それで…」
「ああ、紹介したわけだったね。 真弓はね、若い頃から責任やら義務やら期待やらでがんじがらめでね。 烏月見りゃわかるだろ?」
「烏月さん、たいへんそうだもんね」
「事実たいへんなのさ。 だけど、真弓は人には笑顔を見せて、つらいことは一人抱え込むタイプでね」
 今はわかる。 お母さんはつらい顔を人に見せない人なんだと。
「だから、あいつとひき会わせたのさ」
「?」
「代々羽藤の者は、よくわかりもしないくせに相手の背負ってる物ごと相手を抱きとめる癖があってね…。 それで真弓もコロッと落ちちまった、ってわけさ」

「…よくわからない…」
「フフッ、あたしは経験者だからね。 親友を助けてやっただけさ」

「わたしもなのかな?」
 そう問うと、サクヤさんは答えず、優しい笑顔でわたしを抱きしめた。


(終)
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