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数分で読める小話を置いてます。 暇潰しにはなるかもしれません。
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 (桂とノゾミ)

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「うーん、どの本がいいかなー」
 お料理の本を手にとっては戻す。
「どうせどれでも変わらないのだから、早く決めてしまいなさいな」
「そんなことないよ。 ノゾミちゃん、いじわるだよ…」
「あの不出来な子も言ってたじゃないの。 『桂の包丁は見てるだけで怖い』って。 どうせ今日も来るんでしょうから、作ってもらいなさいな」
「ううー…って、ノゾミちゃんっ、携帯!」
「ああ、そういえば忘れていたわ。 まあ桂も忘れていたんだし、構わないじゃない」
 辺りを見回す。 …幸い、近くには誰もおらず、ほっと胸を撫で下ろす。
「もー、いつも言ってるでしょっ」
「だけど桂、わたしずっと見ていたけれど、そのケータイを使って書を見てる者なんか、一人もいないわ。 桂の言う通りにしたら、その方が目立つのではなくて?」
「そうかな?」

 あれこれとノゾミちゃんと言い合いをしながら、なんとか一冊に絞り込み会計を済ます。

「まずは煮物からかなー」
「わたし鬼になっていてよかったわ」
「どうして?」
「口にしないでいいからよ」
「…平気だもん、ちゃんと美味しいのつくるよ」
「どうかしら」

 家までの帰り道、ずっとノゾミちゃんにからかわれ続けた。



 そして翌朝。
「おっはよーっ、はとちゃんっ」
「あ、陽子ちゃん、おはよー」
「ねね、昨日の見た? あれ見た?」
「へ?」
 いつも通りとも言えるが、やたらとテンションの高い陽子ちゃん。
「心霊特番やってたじゃないっ、見なかったのー?」
「あはは、昨日はちょっとそれどころじゃなくて…」
「どうして?」
「お料理の練習をしてたら、もう大変で…」
「片付けの方が時間かかっていたけれど」
 肩越しにノゾミちゃんが何か言ってるのは無視。
「あれ? でもママさんの親友さんが来てくれるんじゃないの?」
「そうだけど…。 サクヤさんも仕事あるし、自分でやれるようにならなくちゃ、って思ってね」
「…偉いっ! はとちゃん、何でも言ってね。 あたしも協力するから!」
「うんっ。 ありがとう、陽子ちゃん。 わたし、がんばるよっ」
「とりあえず、甘いのが砂糖で、しょっぱいのが塩だからね♪」
「…陽子ちゃん、それ誰でもわかる…」
「でも昨日は間違えたわよね」
 またノゾミちゃんが茶々を入れてくる。 ええ、そうです。 間違えましたとも。
「って、はとちゃん。 何ヘコんでんの?」
「うう…」
「だーい丈夫、ちゃーんと教えてあげるから。 …お凛が」
「…陽子ちゃんじゃないんだ」
「あたしが教えられるわけないじゃないー。 無理無理ー」

 話をしながら昇降口へと向かう。
「ちゃんと食べれる物を作れるようになるのはいつかしらね?」
 ううぅ。ノゾミちゃんだって、どうせ作れないくせに…。



(終)


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